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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

[メモ] 関空・伊丹統合法成立の背景がよくわかる国交省の資料

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空港もインフラ投資やインフラ整備の1分野であり、世界を見渡せば様々な動きがあります。先日はトルコの最大手空港オペレーション会社のTAV Airportsが中東の空港案件への参画を活発化させているという報道がありました。銀行からの融資900億ドル分を確保しているそうです。

Gulfnews.com: Turkish airport operator eyes investments in Middle East

トルコでは航空需要が急速に伸びており、空港新設の案件も複数あるようで、同国最大手空港オペレーターTAVとしては波に乗っているというところでしょう。

昨日成立した関空・伊丹統合法は、関空と伊丹を一体化した上で、近い将来においてコンセッション方式のPFIのスキームを使い(コンセッション方式のPFIについては先日のこちらの投稿を参照)、両空港の保有権は国(新しく設立される新関西国際空港株式会社の株主である国)が保持したまま、運営権を民間企業に譲渡することを目的としています。これにより、1兆3,000億円以上に上る有利子負債を、その譲渡の見返りに得られる金額によって返済し、身軽になった上で、両空港の活性化を民間企業の手に委ねます(法案に関する国交省の説明資料はこちら)。

こうした国を代表するインフラ施設である空港が官民連携手法によって民間の手に委ねられる事例は日本ではあまり例がありませんが(例外として羽田空港はターミナルビルなど一部でPPPが成立)、海外ではよく見られます。

そうした海外における空港の官民連携について、わかりやすく報じている資料があります。国交省が2006年に開催した「今後の国際拠点空港のあり方に関する懇談会」の第1回会合で使用された「我が国の国際拠点空港の現状について」という資料です。

この資料は成田空港や関西空港の位置づけ、財務状況などを知るのにもよい内容で、今回なぜ伊丹との統合が必要になったのか、歴史的な背景も理解することができます。2006年のものですが、内容は今でも有用です。

最後の方では、海外の空港の主な民営化事例について説明しています。個人的にはこれがありがたいです。おそらく作成した国交省の担当者は、関空がいずれは官民連携などによって民間企業の手を借りないとうまい状況にならないのではないかと考え、末尾に海外民営化事例を盛り込んだのだと思います。主たる動きがよくわかる内容になっています。

世界の空港ビジネスの状況は、特に新興国の航空需要が爆発的に伸びているなかで、官民連携手法を活用した空港の新設、拡充が続いており、そこにおけるメインプレイヤーとして空港オペレーターの存在感が非常に大きくなっています。関空・伊丹のコンセッション方式のPFIは、おそらく海外プレイヤーにもオープンな競争入札で運営者を決めるのだと思いますが(もし、そうでないのだとすれば、日本の空港市場は世界からつまはじきにされてしまいます)、入札には海外の大手空港オペレーターがそろい踏みすると思われます。おそらくは、各コンソーシアムには日本の商社も1社ずつ入るでしょう。過去の類似案件を見ると、だいたいそのようになると予想できます。もちろん、そうしたコンソーシアムには、日本の成田国際空港株式会社や中部国際空港株式会社もオペレーターとして加わり、競争入札に臨むべきです。

そのようにして大型のインフラ案件において、海外プレイヤーも交えた競争入札が行われることにより、日本にとっても貴重な知見が得られると思います。

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