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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

インドネシアのインフラ整備動向、現時点のまとめ

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インドネシアのインフラ整備に関する記事が今日付の日経新聞朝刊に出ていました(「インドネシア インフラ整備、急ピッチ。4年で15兆円、民間資金7割」)。以下の記述があります。

 第1弾として、国営電力会社PLNは中部ジャワ州の石炭火力発電所の事業主の入札を実施。出力200万キロワットの発電所を総額32億ドルで建設する。
 事業主が建設してPLNに売電し、25年後にインドネシア側に施設を渡すBOT(建設・運営・譲渡)方式だ。Jパワー・伊藤忠連合、丸紅、中国2社の4者から、6月にも落札者を選ぶ。

この石炭火力発電所の案件に関して、PLN側がプロジェクトの全体像を説明している資料(PDF)が以下にありました。入札の流れがよくわかる資料ですね。

Public Private Partnership In PLN
CENTRAL JAVA COAL FIRED POWER PLANT 2 X 1000 MW PROJECT

インドネシアは国内のインフラ整備需要を満たすため、ここ1〜2年、PPP案件の成立に注力していますが、現在までのところ発電所を別にすれば実績がありません。そのため、PPPにまつわる不透明さを廃し、いわば国際標準に則ったPPPの進め方をすべく努力しているようです。そうした努力の姿勢が上の資料に垣間見えます。この資料に見るように案件情報がしっかりと公開され、入札プロセスも透明であり、さらには資金調達計画も事前にある程度メドがついている(JBICの融資の予定も記してある)ということであれば、日本を含む国外プレイヤーも参画しやすいのではないかと思われます。

インドネシアのインフラ整備では、日本の働きかけによってできた総合インフラ開発計画とも言うべき「インドネシア経済回廊」があります。計画の概要は、経産省貿易経済協力局資金協力課・寺村英信課長による「日本貿易会月報」3月号掲載「インドネシアにおける経済開発とインフラ輸出」に述べられています。

 インドネシア経済回廊構想においては、インドネシア国土を大きく6 つの回廊に分け、1)東スマトラ・北西ジャワ、2)北ジャワ、3)カリマンタン、4)西スラウェシ、5)東ジャワ・バリ・東ヌサトゥンガラ、6)パプア、それぞれの回廊につき、今後発達させるべき重点産業分野を特定し、産業発展のために必要なインフラを整備するものである(図参照)。現在、1)東スマトラ・北西ジャワ、2)北ジャワについてはマスタープランが完成しており、「実行」の段階に入っている。また、2010年度中に、残りの4つの回廊についてもマスタープランが完成予定である。

Idec

補足までに、インドネシアでは人口2億3,750万人の半分以上がジャワ島に集中しており、特にジャカルタの人口密度は東京の2.6倍に上るそうで、それだけ経済活動が集中しています。一方で、電力や交通などのインフラ不足があるため、いったんインフラが整備されればその効果が大きなものになることが予想されます。

[関連投稿]
日本政府が推進するインドネシアのインフラ整備プロジェクト、予定通りの進捗を現地紙が好感(2011/3/16)
インドネシアのインフラ投資に米国も欧州も熱い視線(2011/4/6)

なお、6つの経済回廊におけるインフラ整備に関して、インドネシア政府は、現地側のインターフェースとなるものとして、26の国営企業を指定しました。以下の記事がそれについて報じています。また、26社のリストもあります。

Jakarta Post: 26 state enterprises to handle six economic corridors

インドネシア経済回廊の2)北ジャワに属するジャカルタ周辺に設定された「首都圏投資促進特別地域」(Metropolitan Priority Area)では、投資総額2兆円に上る17プロジェクトが動き始めています。その様子が先頃のSankeiBizで報道されていました。

SankeiBiz: インドネシアで2兆円インフラ整備 官民連携で商社・重電受注競争

 交通渋滞の緩和に貢献する都市高速交通システム計画は総額6100億円規模で、丸紅や住友商事などが鉄道車両メーカーと組み受注を目指す。ジャカルタ東方の工業団地では、電力の高効率運用を実現するスマートグリッド(次世代送電網)に住商・三菱電機などが名乗りをあげるが、欧州や中国、韓国勢との競合もありそうだ。

今年2月下旬に行われた、パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合第8回会合で使われた資料に、首都圏投資促進特別地域の簡単な全体像が載っています。(MPAは、Metropolitan Priority Areaの略)

Mpa

経済回廊にしても首都圏投資促進特別地域にしても、個別のプロジェクトにどういうものがあるかわかりにくいですが、以下のJakarta Globeの2月17日付の記事に6つの主要プロジェクトが載っています。うち1つは上記のジャワ州の石炭火力発電所です。

Jakarta Globe: Six Indonesian Infrastructure Projects ‘Ready'

6つのプロジェクトは以下の通り。(末尾は総事業費)

  • 2,000 megawatt Central Java electricity plant: $2.9 billion
  • Rail network in Central Kalimantan: $1.2 billion
  • Cengkareng-Manggarai airport rail project in Jakarta:$800 million
  • Water-supply project in East Java: $200 million
  • Tanah Ampo cruise terminal:$30 million
  • Waste-management project in Bandung: $20-$30 million

記事によれば、すでに落札者選定に入っているジャワ州石炭火力以外にも、Cengkareng-Manggarai空港鉄道プロジェクトでは3社の応札があり、他の案件は事前資格審査段階(Pre-qualification)にあります。
また、それ以外にもPPPとして進められる可能性のある案件が80プロジェクトあるとのこと。インドネシアのインフラPPPはまだまだ発展途上とは言え、これから一気に活発化しそうな気配です。

なお、関連する動きとして、中国政府がインドネシアのインフラ整備に190億ドルの資金を割り当てるという報道がありました。

China to give $19 bln loans, export credits for Indonesia

うち90億ドルが融資用資金、100億ドルが貿易保険となっています。日本のやり方を真似たのでしょうか?

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内容構成はこちらにある通り

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