David Imaizumi, CEO of JC-CJ at Boston, a cryptocurrency issuing company, writes all about next generation cryptocurrency and the like. 仮想貨幣発行会社JC-CJ(本社ボストン)CEOの今泉大輔がJCやその他の仮想貨幣について書きまくります。

[ニュースの背景] 官民インフラ輸出7000億円 政府選定、環境分野の15事業

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5月8日付の日経朝刊一面に載った記事「官民インフラ輸出7000億円 政府選定、環境分野の15事業」。

政府と国内有力企業が組んで環境配慮型のインフラを輸出する計画の内容が7日明らかとなった。政府が15事業を選び、投融資などで全面的に支援する。東芝やパナソニック連合がインドで電力供給体制を整備し、三菱重工業などはシンガポールで電気自動車を活用した交通システムを構築。合計の受注額は7000億円規模に達し、約2万人の国内雇用創出効果を見込む。

なかなか喜ばしいニュースです。選定対象の15事業を見ると、そのほとんどが、都市関連のインフラに関して、何らかのテクノロジーを適用して効率化を図るというものになっています。

選定された事業の一部

インド:
東芝、三井物産、パナソニック
(現地財閥と連携し、エネルギーインフラ)
三菱重工業、三菱商事
(天然ガス活用の高効率火力発電など)
日立製作所、伊藤忠商事、京セラ
(海水淡水化技術を使った工業用水システム)

中国:
東芝、日本設計、伊藤忠商事
(天津でのエネルギー管理など)

UAE:
三菱重工業
(電気自動車管理システム)

一方、政府のパッケージ型インフラ輸出政策では、国際協力銀行や日本貿易保険の金融系支援策が受けられるのは、現地でインフラ事業を運営する特別目的会社(SPC)を設立するタイプのものに限る、というのが私の理解です。それからすると、選定対象になった15事業は、SPCを設立して現地で20年といった年限を運営する「インフラ事業」そのものではなく、そのインフラ事業に採用される「設備」ないし「システム」という位置づけになります。これだけでは金融系支援策の対象にならないのではないか…と思っていましたが、経産省へ直接問い合わせてみたところ、事情が判明しました。

今回日経で報道されたのは、経産省による海外インフラ関連事業のフィージビリティスタディ(FS)公募において選定された案件だということです。この「平成22年度 インフラ・システム輸出促進調査等委託事業(グローバル市場におけるスマートコミュニティ等の事業可能性調査)」に係る委託先の公募について」ですね。すなわち、海外におけるインフラ事業そのものではなく、その実現に必要な前段階の調査に計8億円強の予算が付いています。

現実問題として、どの国でも、インフラ系プロジェクトが具体的に動き出す前には、現地政府による、あるいは民間ステークホルダーによるFSが不可欠です。政府がインフラ輸出政策の対象としている国々では、現地政府においてFSに振り向ける資金も限られることから、それを日本政府が支援することにより、案件形成がスムーズに進みます。

海外において、いわゆるインフラ事業として取り組まれているものには、まだまだテクノロジー主導型のものが少ないようです。従来形の発電、海水淡水化、上水供給、下水処理、ごみ処理などが、20年〜30年のインフラ事業として成立しており、それはそれとして大変に大きな市場になっています。
現地政府側の官僚が発想するインフラPPP案件はどうしても守旧型のものになりがちです。それは彼らが新しいテクノロジーを採り入れたインフラ事業のメリットをよく理解していないからです。関連分野の専門家であるわけではないので、当然でしょう。そういうなかで発想され、競争入札にかけられるインフラ案件は、やはり守旧型のインフラ事業となります。そこでは日本企業の活躍の場はあまりない可能性があり、価格競争で他国企業が有利ということになりがちです。

日本企業の活躍の余地が大きいテクノロジー主導型のインフラ案件を成立させるためには、現地政府のニーズを先取りする形で、上のようなFSを行い、現地政府にそうしたテクノロジーを導入したインフラ事業にすることの具体的なメリットを知らしめることが重要でしょう。

海外インフラPPPにおいては、"Unsolicited Proposal"と言って、競争入札案件になる前の段階で、政府担当者に直接提案を持ち込むパターンがあります(Unsolicited=要請されないのに提案を持ってくる…というニュアンス)。政府側がそうした提案をよしとすれば、それで前に進みますし、「やはり他社も入れて競争入札をやろう」ということになれば、そういう手順が取られます(厳密に言えば、Unsolicited Proposalに関する国際的な取扱ルールがありますが)。このUnsolicited Proposalの手順を使って、現地政府の官僚にテクノロジー主導型インフラ事業のメリットを訴えることができれば、インフラ事業の競争入札の構図も大きく変化するでしょう。今回のFS選定15事業について言えば、「まずはこのテクノロジーを使ったインフラ事業についてFSをやりましょう!」と現地政府にアプローチすれば、現地政府側でも「ぜひやりましょう!」となるわけです。

特に最近では、どの国でも、低炭素化、スマートグリッド、サステイナビリティなどに着目しているため、そうした要素を具体化しながら、かつ、ライフサイクルコストを安くできる枠組みがあれば(最終的にエンドユーザーにコストメリットとして還元できる仕組みがあれば)、インフラ事業として採用される可能性は高いと思います。日本企業の強みが生きるでしょう。

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