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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

プロトタイプ開業の勧め

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ピーポーズ株式会社が2月末頃に公開するサービス[pepoz]は、われわれにとって、プロトタイプ開業という位置づけを持っています。サイトの形でプロトタイプを作り、それでもって開業させていただくということです。

プロトタイプの効用については、IDEOの「発想する会社」のなかですでに語られています。アイディアをまず形にしてみることによって、人が触れるものになり、細部を論じられるものになる。そしてここが重要ですが、クライアントが具体的に評価できるようになります。この場合、クライアントとは、最終顧客の場合もあれば外部のプロジェクト関係者ということもあるだろうし、将来的な出資者の場合もあります。
紙の企画書やプレゼンテーション資料およびプレゼンテーション行為だけだと、それを発案した側はよーくわかっているつもりでも、クライアント側には骨の髄まで伝わっていないことがあります。モノがないことで、どうしても先に進まないということがあります。そこでまずモノが欲しいわけです。

弊ブログで何度かお伝えしている[pepoz]の概要収益モデルは、まだ存在していないものなので(多少近いというのは複数あるけれども)、「この人たちに伝えたい」という方に、すっと入っていかないということが何度かありました。そういう場合、最後的には、資料を使って口で説明することになるわけですが、なかなか理解がクリアーになっていかない。モノがないからなんだ、と気づくまでそんなに長くかかりませんでした。特に、サービスの内容はご理解いただけるのだけれども、それで収益が回るというのがピンとこないという方がよくいらっしゃいました。そこでプロトタイプ開業なわけです。

プロトタイプとしての[pepoz]には、ピーポーズ株式会社にとって次のような意味があります。

 1. われわれのアイディアが具体的なビジネスとして回ることを証明する。

具体的に証明を待っているアイディアには、次のようなものがあります。①空き時間を売り買いするという商取引が成立するということ、②人に値段を付けることによってこれまで有効活用されていなかったもの(人の能力・知識・経験のうち、雇用によってペイされている以外の部分)が流動するようになるということ、③人が自分の能力・知識・経験をある定型フォーマットによって記述することにより、検索によるリーチがしやすくなり、その記述のデータベースが日を追うごとに価値を持ってくるということ。
その他、ゆくゆくは、定年で現役を降りられた方や非常に特殊な経験をされたお年寄りの方などが[pepoz]の世界に入ってきて、その貴重な経験や知識によって相応の対価を得られる時代がくる、なんて仮説もあります。

 2. 本格的な規模を実現していく際に必要になる潜在的な協力者の方々にアピールする。

現在準備を進めているプロトタイプ開業では、収益モデルのところでも説明しましたが、コストを最低限まで絞り込んでいることもあって、毎月2,000名程度のキャスト顧客([pepoz]において時間を公開して「私のサービス」を提供し対価を得る顧客)の新規登録があれば、事業として回るという風に設計しています。開業しょっぱなからその水準というのではなく、1.5年から2年ぐらいかけてゆっくりそこまで持っていく設計です。
人員は私と石井と、これから公募させていただく経営スタッフの方2名程度。あとは、オペレーションで参画していただける方が2-3名といった、すごく小さな陣営です。全員当面は非フルタイムです。週1日~3日程度の投入で運営していきます。
ただ、これはあくまでもプロトタイプの運営の体制であって、[pepoz]本来の規模を追求してくためには、人も足らなければ資金も足りないという側面があります(われわれは「ビジョナリー・カンパニー」に本気で感激して、本気でそれを追及しています)。
小学生からお年寄りまで、中国語圏や英語圏の顧客の方にまで、[pepoz]をほんとうに使っていただけるという状況を追求するには、たくさんの優れた方に集まっていただかなければなりません。また、われわれの事業の性格をよくご理解いただいた上でご出資いただける投資主体の方にご参画いただかなければなりません。
そういう方々に、プロトタイプとしての[pepoz]をお見せすることで、すっと理解していただけるのではないかと思うのです。

 3. [pepoz]の本来的な顧客の方々にリーチする

マーケティングにも色んな考え方がありますが、商品価値の伝達では、現物そのものを見ていただいたり使っていただくことに勝る手法はないのではないかと思います。
[pepoz]は、非常に特殊具体的な課題をお持ちの方で、周囲にはその解決のための能力・知識・経験を持っている人がいないという状況にある方をオーディエンス顧客(キャスト顧客から私のサービスを受けて対価を支払う顧客)として想定しています。具体的には、企業活動のなかで非常に専門的な知見を、ごくごくピンポイントで必要としているような状況、あるいは、既存のマーケティングではうまくカバーされていない特別なニーズをお持ちの方を考えています。
また、キャスト顧客の方としては、「自分がこれまでに培った能力・知識・経験などを真に必要とする人が世の中にたくさんいそうだけれども、契約を結んで提供するというのも大げさだしなぁ」と感じることが多々ある方を想定しています。端的に言えば、5分か10分程度、長くても1時間程度、相手の方に対応すれば「それで済むのに」とお感じの方です。
こうした方々にリーチするには、相応のコストをかけた既存のマーケティング方策ではあまり意味がなく、むしろ、現物を世の中に出して、ごく少数のイノベーター層の方々に使っていただくなかで認知が広まり、より多くの方にご利用していただけるようになる、というのが王道だと考えています。
ネット上で現物を出す→それが自然と伝播するのを待つ。そんな順序になります。それもやはり、プロトタイプでもって開業することで可能になります。

 4. 運営者であるわれわれが現実的な課題を拾って改善につなげる

この種の先例のない事業を運用していくにあたって、事前にどれだけ様々なパターンを想定しても、実際には別種の課題が出現してくるということは、かなりあると思います。
当初から本格的な資金を投入し、本格的な陣営で運営して行っても、事前の想定が少しずれていたがために、資金のかけ方やフォーメーションの組み方でムダが出るということが起こり得ます。
その点、プロトタイプ開業ならば、小規模であるがために軌道修正も容易です。間違った部分を比較的速いペースで修正して、より実際的なサービスにしていくことができると思うのです。

そんなこんなで、プロトタイプ開業の準備を進めております。

[pepoz]に限らず、現在あるモジュール(制度から技術まで)を組み合わせて実現できるまったく新しい事業形態には、すごく使える手法だと思います。これも1つのイノベーションなのです。

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