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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

やっぱり少ない日本企業のIT投資(IT投資問題-その2)

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引き続き、IT投資の周辺をうろうろしていきます。
立脚点はIT部門側に置きます。そこからユーザー部門とトップマネジメントを見ます。

日本は産業規模がでかいですから、日本全体のIT投資も米国に次ぐ世界第二位の規模があります。世界各国のIT業界団体の連合体であるWorld Information Technology and Service Allianceと調査会社IDCが2000年に作成した「Digital Planet 2000」によると、IT投資は米国が世界全体の40.2%、日本が約13.3%、ドイツが5.7%という順位。
米国が一位、日本が二位という順序は年が変わっても動かないようで、経産省による2004年の「情報化白書」でも、米国3,664億米ドル(世界全体の42.4%)、日本898億米ドル(10.4%)、イギリス568億米ドル(6.6%)となっています。
ただし、GDP比で見た場合は、こちらの投稿でも記したように日本のIT投資は非常に小さいです。米国がGDP比3.5%、世界平均で2.8%をIT投資に使っているところ、日本は2.0%とかなり見劣りします。日本の個々の企業のIT投資の絶対額は、ひょっとするとかなり小さいのかも知れません。IDCかGartnerが、国別で業界ごとの従業員一人当たりIT投資額なんていう指標を発表してくれたら、ベンチマークができていいのですが。

Forresterが2005年8月に出した「Japan Midyear IT Spending Outlook」というレポートでは、日本企業の新規システムに対する投資は全体のわずか15%しかないと報じています。新規投資分が2割という話はよく聞きますが、このレポートでは平均が15%なんですね。67人のIT投資主要意思決定者へのヒアリング結果とのことです。
北米では24%、欧州では28%が新規投資分だそうです。(北米は574名、欧州は337名へのヒアリング) Forresterの別なレポートでは、インドでは34%にまで跳ね上がる!とのこと。

IT投資額の15%しか新規のシステムに振り向けられないとすると、絶対額が少ないので、他部門や経営層にアピールできる「目覚しい成果」というのは、出にくいのではないかと推察します。ちまちまとした使い方しかできなくて、「ウチのIT部門はすごい!目覚しい活躍だ!」という風にはなりにくいでしょう。年間予算の5割を新規部分に振り向けるのは非現実的としても、3割はほしいところ。3割あれば、社内を「おおぉ」と言わせるプロジェクトも可能なのではないでしょうか?
IT部門と言えば、まず真っ先にコスト削減が至上命題として言い渡されるなかにあって、何をどうしていけばいいのか?

日本の外から日本のIT状況を見ると、特殊性がかなり目に付くようです。その特殊性こそが、日本のIT投資の新規分を15%という低い水準に押しやっている元凶だと考えるべきでしょう。そしてその特殊性を盾に、「んなこと言ったって、日本の特殊事情で新規投資に回せる分が少ないんだから、絶対額を増やしてもらわないと先に進めません」というロジックが構築可能だと思います。

その特殊事情を考える上で興味を引いたのが、「日経コンピュータ」2006年1月9日号の特集「甦れ!日本のIT」中の記事「日本ソフトウェア産業の謎」。これはマイケル・クスマノというMITスローンスクールの教授が書いた記事で、原文がここ(The Puzzle of Japanese Software)にあります。

この記事は、だいたい次のようなことを言っています…、と書くと長くなるので、以下次回へ。

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