もしも洞察力があったなら……。

IBM Watsonは人工知能ではない。じゃあ、なんなのか。

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現在、世の中に実用化された、人間やそれに準ずる高等生物に匹敵するような知能を持ったコンピュータ・システムは存在しません。現在のコンピュータ・システムは、特定の分野の処理能力に長けていて、それが人類や社会の発展に寄与してきただけです。だから、道具です。

さて、知能とは何でしょうか。

情報を集め、処理し、分析し、考え、判断して、行動する。この一連のプロセスを総合して我々は知能と呼んでいるはずです。

現存する人工知能とは、こうした高度なプロセスを目指して研究開発をしているものがほとんどです。だからこそ、要素技術を組み合わせて出てきた「特定の領域に強い新しい情報処理」のことを人工知能と呼んでいるのでしょう。そもそもの開発思想がそのようなわけですから、それをさして人工知能というのは結構なことだと思います。

ただし、IBM Watsonはそのような開発思想は持っていません。非構造化データを中核に、膨れ上がる情報をリサーチ、学習し、人の判断の材料となる解の提案をするのがIBM Watsonです。

IBM Watsonは考えません。考えるのは、人間です。人間の思考を拡張するために生まれたのです。

今日はそんな話をたくさん聞いてきました。

IBM WatsonのCTO、ロブ・ハイがIT Pro Expoの基調講演に立ちました。いわゆるIT事業会社の人が基調講演に立つのはまれなことだそうで、大変光栄なことです。

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彼の講演のメモを少しだけ取りましたので、記したいと思います。

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指数関数的に増えるデータのうち80%は人々の会話や写真、動画などの非構造化データである。あと数年で人類が生成するデータの量はゼタバイト(1ギガバイトの1024^4倍)にまで到達する。そして、それが留まることはありません。

"No one imagined the extent to which ... the symbolic logic that had been the preserve of the mathematicians would unleash the powers of coded sequences upon the world."
George Dyson - Turing's Cathedral: The Origins of the Digital Universe


ノイマン型で始まったコンピュータの歴史はもともと数学者が作った数学者のためのものでした。その応用への進化が今日の環境を作ってきました。が、これらは数値情報を扱うのは得意でも、人々の言葉や画像といった分野のコンピュータでの利活用は十分できる状況にはありませんでした。IBMが直面してきたチャレンジはこうした背景によるものなのです。

コグニティブ(認知型)・コンピューティングの力は、人々の行動や状況を認知し、お手伝いをするものです。

コグニティブ・コンピューティングとはなんでしょうか。次の三つの特長で表すことができます。

  • 人々(human being)の行動(behavior)を学習するシステム
  • 人々の自然なInteraction(対話などのコミュニケーションや行動)、コンディションのあり方を支援するもの(今のITはラジオボタンやチェックボックス、フレックスフィールドへの入力でI/Oが行われます。もし同じことをあなたの奥さんにやったらどうなるでしょう。奥さんのボタンを押しますか?きっと彼女はあなたにこう言うでしょう。シンプルに「話してよ!」と。それが自然なインタラクションの形なのです。)
  • 推論戦略(Reasoning Strategy)を用いて新たな情報やシナリオや反応に出会ったときに、それらを学び、進化していくもの

人は間違いをおかします。多くの人が尊敬する職業、専門家である医師だって完璧ではない。患者を前に、その病名、治療法、治療薬などを診断するときに、その論拠が何かを示すことができたほうが、よりよい治療へとつながるはずです。このように、専門家を支える仕組みが必要なのです。不確実性の高い、専門分野での判断を人が行うためには、もはや網羅的な学習が不可欠となりました。

Cognitive Systems Amplify Human Cognition.

コグニティブ・システムはヒトの認知能力を拡大するためのものです。

また、基調講演後、別会場で行われた公開取材の席上にて記者からこのような質問がありました。

IBM Watsonのずばり、ゴールは何ですか?

ロブはこう答えました。

「To Help People.」(人々を支援することです。)


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