もしも洞察力があったなら……。

一歩前に出る日本人

»

そういえばと、先日の痛ましい新幹線の事件で思い出したことがあります。

ちょっと前に、乗っていた特急電車が線路の不具合により途中で3時間ほど停まってしまいました。車掌さんが日本語で事の次第をアナウンスしていました。が、列車の中には日本語を解さないスペインやアメリカ、オランダ、台湾からの外国人が20人ほど乗っていたのです。

その外国の彼らは何が起きているのかなんの説明を受けることなく、静かにたたずんでいました。まるでそれが日本に来た自分たちの、日本の文化をリスペクトする当然の振る舞いのように。車掌さんが通路を通るたびに熱い視線を送りながら。

少し不安そうにも見えたその様子を見るに見かねて通訳を買って出てみました。外国人の乗客に一人ひとり「Do you know what's going on?」(何が起きているか把握してる?気分は少しだけマーヴィン・ゲイ)と声をかけ、首を横に振る彼らに私が車内アナウンスから得た情報を一人ひとりに伝え歩き始めたのです。

「Do you want me to call the hotel you're staying tonight?」(今夜泊まるホテルに連絡してあげようか?)と添えて。外国人旅行者の多くは携帯電話は持っていますが、ローミングをオフにしているのか、日本で使えるようにしてきていませんでした。また、電話をかけたところで出た相手が英語を話せる可能性は高くありません。(実際には1軒、大丈夫なところがありました)宿泊先の名前、電話番号、予約名を聞き出してメモを取り、その場で電話をして回りました。もちろんここで得た個人情報は目的外の利用はしません。

私はみんなの宿の夕食がなくなってしまうことがとても心配でした。全員の分、電話をかけたのです。

「列車が遅延してます。到着が遅れるけどxxさんは必ず行くからキャンセルしないで。それからご飯とっといてー!」って。せっかくの旅先ですてきなご飯が食べられないなんて切なすぎるという思いに駆られて。

交渉も代行しました。「もしそちらに8時までに間に合わなくて、xxさんが夕食を食べられなかったらその分ご返金はいただけるのでしょうか?」「はい、それができるように支配人と話しておきます。とにかくご無事にとxxさんにお伝えください。」

また、遅くなると板さんが帰っちゃうので、夕食は出せないと一点張りの方もいました。これには「できるだけ待ってください。9時までは大丈夫ですか?そうだ と助かります。」と伝えたうえで、外人某には「もしあまりにも遅くなったら夕食にありつけないかもしれない。覚悟しておいてくれますか。」「もちろんだよ。こんな状況だし、問題ないよ。コンビニで何か買うことにするよ。」と、とても控えめな人たちも。

それから、刻一刻と状況が変わる中、車掌の言うことを書き取って翻訳していました。脱線、って英語でなんていうんだっけ?あ、そうそうderailね、とか、線路が熱で膨張って、、、thermal expansionだなとか、一部の専門用語に戸惑いましたけど。「バスが迎えに来るからそれに乗りかえる」などという情報もきたりして、車掌はてんやわんや。コバンザメのように追従する私も汗交じりに情報を聞き逃すまいと歩き回ります。2時間もすると自分の声も枯れてきたのでアップデートをiPadにメモをして見せてまわりました。アップルさまさま。タブレットPCはとっても役に立ちました。

iPad_Daikatsuyaku.png

3時間後、バスに乗り換えることなく、安全確認ができたということでゆっくりと電車は運行を再開しました。

外国人はもちろん、周りの日本人、車掌たちからとても感謝されました。

勇気を出して、一歩前に出て、少しだけ皆さんのお役に立てた日本人として誇らしい1日でした。

すごいくたびれましたけど。

JRや公共交通機関の国際コミュニケーションスキルの底上げを切に願います。2020に向けての課題だと思っております。

*乗り合わせた高校生と思しき若者が「あの人スゲェ!」(私は微塵も思っておりません。念のため)って言っていたのを聞いて、私こと中年小太りは若者に(お腹ではなく)背中を見せている気にちょっとなりました。

SenakawoMiseruHiSchool.png

*アメリカ人のひとりが流暢な英語で、「君がしてくれたことを忘れない。僕も本国で困っている日本人がいたら積極的に助けるようにするよ。ありがとう。」と言ってくれました。

*外国人=金髪&青い目と思い込んでいた私は、途中からとっても熱い視線をくれる黒髪&黒目の男女に気がつきました。もしかしてだけど、もしかしてだけど、と近づいて話しかけたら、台湾の方なんじゃないのー。人は見た目だけで判断をしてはいけません。

*実は、車掌さんに最初は、「緊急事態でしょうから、車内アナウンスを使わせてもらえればお手伝いしますよ。」と申し出たところ、車掌はオーケー(猫の手も借りたいので)だったけど、運転士が規則でだめだと使わせてはくれませんでした。そりゃそうだなと思いながらも、もっと混んでいる、大型車両編成の時にはどうするんだろうなとか頭をよぎったり。なので車両を何往復もして外国人乗客にもれなく状況をお伝えしてまいりました。もちろんこれは車掌の許可を取って。いい経験になりました。

*電車が動き出して、程なく僕は先に降りたのですが、皆さん、別れ際に手を振ってくれました。正直私の旅程もメチャメチャだったのですが、この経験はpriceless(無限の価値)だったかもと思い直してます。

*居合わせた外国人で英語圏の方は少数派。スペインの方が最も多かったです。欧州の人たちはもちろん英語は母国語ではないのですが、日本語よりはうんとできるので、私はゼスチャーまじりに頑張った感じでした。写真で両手を横に伸ばしているのは「線路がね、熱でこうやって膨張して歪んじゃったんだよ」ってとこをなんとかわかるように説明してるとこ ろです。

Brief1.jpgBrief2.jpgBrief3.jpg

ご参考:

高山本線 下麻生駅~上麻生駅間におけるレール歪みについて(PDFです)

Comment(1)

コメント

素晴らしいですね。私もこういう場に遭遇したら玉川さんを見習ってやることにします。ところで、社内アナウンスで英語がなかった件は、今回の新幹線の事件でもそうだったようで、インバウンド増加中の今、2020を待たず喫緊の課題だと思います。車掌さん全員に英語を喋ってもらうのも現実的でないので、まずは規則を改定して緊急時には乗客の協力を得られるようにしてはどうかと思います。

コメントを投稿する