社内で実施するメディアトレーニングの資料の中に、こんな記述があります。
「カジュアルな物言いと、不用意な発言はまったく異なります」
カジュアルな物言いとは、なんでしょうか。
俗っぽく表現すると、「ため口」はカジュアルな物言いですね。また、ですます調ではなく、~だ、~よ、などの語尾もカジュアルといえるでしょう。それらは、友人仲間との会話間でよく耳にする、礼節の優先順位をやや下げたやりとり。信頼関係がある程度できてしまえば、こうしたカジュアルな物言いは世間一般に浸透しています。親しさの表現方法のひとつとして活用されている方も多いことでしょう。
一方の、不用意な発言とは、何でしょうか。人々の琴線(きんせん)にふれる言葉、区別を助長するような言葉、味方に不利になるような言葉など、発信者の不利益に、直接または間接的になってしまう、意図せず発せられる言葉のことだと理解しています。
メディアトレーニングの演習のなかでは、この二つの似て非なるコミュニケーション、すなわち、カジュアルな物言いが許され、不用意な発言が許されない状況でのロールプレイを行います。それは、
「貴方の親しい友人の中にマスコミ関係者(記者)がいたとします。ある日、一緒に食事をすることになったのですが、その友人記者が、貴方の事業が抱えている課題の核心に迫る問いかけをしてきました。その友人は、聞いた話自体は公にしないと約束してくれたとします。そのとき貴方はどうしますか?」
というものです。
もちろん、一切の漏洩をすることなく乗り切ることが企業人に求められるわけですが、メディアへの対応スキルを先天的、後天的を問わず、身につけていない方には相応にタフな状況です。親しい友人だからこそ、相手との関係を壊したくないし、一方で、こうした秘密を共有して、益々の連帯感を生むことへの欲求もあるでしょう。
*この題材は、消費者の不利益となる情報や事柄を扱うものではなく、企業一般に偏在する守秘義務、あるいは事業戦略上外部への漏洩を避けたい情報を扱っている場合を想定しています。
しかしここはビジネスマンとして、嘘をついたり、はぐらかしたりすることなく、乗り越えることに挑戦です。
どうやって?
回答として、次の3つの選択肢を考えます。
1)「ノーコメント」
2)「その質問に答える立場にない」
3)「そのことについて興味を持つのは記者として必然だと思う。だけど、私はお互いの関係をとても大事に思っている。死ぬまで身をささげるかどうかわからない不確実なミッションのために、永遠に培えるかもしれない関係をフイにするなんて、私にはできない。貴方はどう思う?」
実際に試してみると、過去にメディアトレーニングを受けたことのない方の回答の多くは1)です。しかし、これはベストな回答ではありません。なぜならば、投げかけられた質問を受止めることなく、盾を使うがごとく、ブロック(防御)をしているからです。この防御によって、食事会の佳境となるステーキとワインの味は半減してしまうことでしょう。
ところで、もしも貴方または相手が外国の方なら、2)が正解となりうるでしょう。この答え方は、職務分掌の明確な欧米型組織に身をおく立場なら、至極当然の回答といえるからです。しかし、もしも貴方と相手が日本の方ならこの方法は避けたほうがいいかもしれません。そんな風に言う貴方に温かみを感じ、共感を醸成することはかなり困難だからです。(失礼!)
3)はいかがでしょう。言い回しは劇場型ですが、この回答例は、友人記者の問いかけに自らが応じることで、お互いのこの楽しい時間、あるいはお互いの関係に水をさすことを予防しているのです。つまり、対立関係、緊張関係をお互いに望んでいないことを確認しながら、WinxWinの反対となる、LosexLoseを回避する自然な選択をしているのです。共感の醸成に貢献していますね。余談ですが、この問いかけにどう応じるか自体が会話の種になりますので、ますます食事が楽しくなる可能性があります。
このほかの適切な回答方法はあるでしょうか。きっと、沢山あるでしょう。重要なのは複雑性と競合がコミュニケーションに生じたとき、どのように乗り切るか。共感の醸成というコミュニケーションのフレームワークを理解し、それらを練習し、実践する、ということなのです。一級のメディアトレーニングでは、体系づけられた座学と演習で構成されています。これを体験することは、コミュニケーションを掌握するためにとても役立ちます。
人類誕生からすでにコミュニケーションは存在していたとか。この摩訶不思議な力を、明日の開拓に取り込むことができたとしたら、私たちの未来はもっとパワフルになるかもしれません。
Special
- PR -| test | 2009/02/27 15:15 |
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④核心に迫る事柄を、ウィットに富み皆がついつい聞き込んでしまうような且つどうとでも解釈できる話に作り変えて話す。 食事中に守秘義務のこともわきまえないで無粋な質問をしてくるような、一生涯付き合える無二の親友がいるのであればきっとそんな技術を身につけているはず。 というか、最初に記者である友人がそんな話をしてきた時点でもうステーキもワインもまずくなってると思いますけどね。 | |
| NewTama | 2009/02/27 15:33 |
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test様、 さて、ステーキとワインが最終的においしいかどうかは、ご回答案の成否にも関わってくるところといえるでしょう。 そして、現実的かどうかについてですが、これについては、トレーニー(受講者)各自の交友関係を確認の上で実施しています。ですから、非現実的ということではないと考えています。 今後ともよろしくお願いします。 | |
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