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夏目房之介の「で?」

宇都宮美術館「陽咸二展」

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宇都宮美術館「陽咸二展」少し前に観た。美術館は宇都宮駅からバスで25分という遠さ。山の雑木林の中の閑静な素敵な美術館なんですが、これはクルマがないとなかなか行けない。陽咸二(1898-1935)は、大正~昭和初期の彫刻家、芸術家で、一般的な知名度はない。なぜなら、①31歳で夭折し、②その作風があらゆる傾向を受け入れ、これが陽咸二という形を作らず、抽象、古典、キュビズム、アールデコ、伝統系、仏像、漫画と、とらえどころないほどの作品を作ったから。本人がそう意志していたとはいえ、記憶に残っていかなかった。しかし、展示を観ると、才能も相当あったと感じる。欧米から前衛思想やモダニズムが一気に輸入された時代に生き、それを端から全部試してみたかのようだ。「支那人の皿廻し」(1928)は抽象だが、ユニークな魅力がある。「降誕の釈迦」(1929)は伝統の仏像ではありえない裸身の耶摩夫人と釈迦を造形したものだが、かなり素晴らしいと思う。ところで陽という名から中国人かと思ったが、慶長年間に中国の貿易商が長崎の通訳を任じられ、二代目が帰化してから続く陽家の出身だった。また構造社という、社会に役立つ彫刻を目指した非アカデミア系の集団に属し、僕の祖父・三田平凡寺の主催する収集家の集団「我楽他宗」にも加盟した。こりゃ見ておかねばならない。歴史的にも非常に興味惹かれる人物・作品である。
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「陽 咸二展 混ざりあうカタチ」宇都宮美術館で - 大正〜昭和初期に活躍した彫刻家、初の大回顧展
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「陽 咸二展 混ざりあうカタチ」宇都宮美術館で - 大正〜昭和初期に活躍した彫刻家、初の大回顧展
企画展「陽 咸二展 混ざりあうカタチ」が、栃木の宇都宮美術館にて、2023年2月19日(日)から4月16日(日)まで開催される。陽咸二(よう かんじ)は、大正期から昭和初期にかけて活躍した彫刻家だ。1...
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