『からだの文化』ついに刊行!
えらくお待たせしましたが、やっと出ました。
が、じつはまだ仕事場に行けてないので、見てません。
というわけで、執筆者の一人、師(もろ)茂樹さんの報告を、とりあえず見てください。
http://moroshigeki.hateblo.jp/entry/2012/07/05/191005
追申
内容は以下の通り。
『からだの文化 -修行と身体像-』五曜書房 2000円+税
佐伯隆幸「発刊に寄せて ―さらなる試みの継続を―」
夏目房之介「まえがき 「からだの文化」って何だろう?」
ゝ 「マンガにおける修行イメージの伝承」
師茂樹「修行マニュアルを読む―『天台小止観』を中心に」
李保華・野村英登「馬貴派八卦掌と易筋経」
大地宏子「日本近代のピアノ教育における身体イメージ」
野村英登「丹田で歩く―身体イメージがつなげる哲学、信仰、養生、芸能」
山田せつ子「からだを見つける―ダンスが見つかる」
夏目房之介「あとがき」 執筆者略歴
2010年7月17~18日、学習院大学大学院身体表象文化学専攻の主催で行われたシンポジウム&ワークショップをもとに、各担当の先生方が書かれたもので、内容的には発表と異なる部分もあります(僕の原稿もそうです)。李老師、山田先生の部分がワークショップの文章化になります。また、李老師のワークショップは中国語で行われ、当日通訳をやっていただいた野村先生が日本語文章化されています。たいへん興味深く面白い本になったと思います。
当時の様子を報告した当ブログ記事
7月17日 http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2010/07/post-99f5.html
7月18日 http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2010/07/post-6a19.html
僕の発表のレジュメ http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2010/07/post-f6d7.html
amazonや楽天ブックスなどWeb書店でご注文可能です。
★さらに追申
李老師の講義の部分読みました。驚いた!
実際のワークショップのときのレクチャーそのままではなくて、おそらく本邦はじめて馬貴八卦と易筋について原理をまとめて起こされた文章だと思います。内容的に、僕らは講習会で部分ごとに聞いていますが、ここまで全体を通してレクチャーされたことはない。日頃、李老師は「原理の理解が重要なんだ」といわれますが、これは大変に助かる文章でした。野村さんの翻訳も日本語としてこなれていて、興味のある人は注目・必読の章になっています。
☆☆も一発、追伸
発表もおもしろかったが、大地宏子さんの「日本近代のピアノ教育における身体イメージ」はやっぱり面白かった! TVドラマ『仔犬のワルト』の、重しをつけた指輪で上からそれぞれの指を吊り上げられた状態でピアノ・レッスンをするというスポ根場面に始まり、その発想がじつは19世紀欧州の、ピアノ自体の変化で鍵が重くなった結果、似たような装置が流行した時代にさかのぼる。さらに、その頃はやった指を垂直に立てて弾く奏法が、やがて指に負担がかかる上、音が硬いため19世紀末には否定された。にもかかわらず日本ではそれがつい最近まで生き延び、大きな影響力をもった不思議に言及する。とにかく根性で指を鍛え、大きな音を出すことが最大の目的にされ、血のにじむような鍛錬努力にこそに価値があるという、音楽性と逆立ちするような「軍隊教練」的価値観に支配されたらしい。ドイツの軍隊行進との連想もあった奏法だというから、遅れてきた近代国家の価値観だったのかもしれない。僕もたまに、やたら正確だけどクソ面白くもなく、音楽がないと感じる日本人のピアノを聴くことがあったが、あれだったか、と納得。