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Salesforce Chatterに死角はあるのか

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 先日、「Oracle Exadataに死角はないのか」というエントリーを書いた。エンタープライズデータベースというある種成熟した市場において、圧倒的なシェアを持っているOracleが提供するExadataには、なかなか死角は見つけられなかった。

 さて、先日、Salesforce.comが東京で大きなイベントを開催した。その場で国内で初めて披露されたのが、Salesforce Chatterだ。このSalesforce Chatter、簡単に言ってしまえばTwitterやfacebookのようにリアルタイムなコミュニケーションを、企業内で行うための機能だ。

 それではこの新しいSalesforce.comのソリューションには、死角はあるだろうか。結論から言ってしまえば、「死角はけっこうありそうだ」となる。この場合の死角というのは、サービスそのもの完成度とライバルの付け入る余地ということ。まずはサービスの完成度だが、これはSalesforce.com自身が認めているところでもあるが、このSalesforce Chatterは現時点ではまだ成長途中の段階にあるサービスだということ。コンセプトはかなり面白く先進的なものが多数明らかにされているが、そのすべてがいま実現しているわけではないのだ。

 企業内での利用を考えた場合には、Twitterのように情報がどんどん流れていけばいいことにはならない。むしろ、あとから必要な情報を確実に取り出せる仕組みが必要となる。いまの段階では比較的単純な検索機能はあるが、たとえば重要なものは自動的かつ確実に取り出せるであるとか、高度なで複雑な検索を行えると言った機能は、まだ実装されていない。また、大量な情報が流通するようになった際に、必要な情報が埋もれてしまわないようにするための賢いフィルタリング機能なども、まだ完璧ではない。

 もう1つのライバルが付け入る余地があるかというところも、余地があると言わざる得ないだろう。なにせ、この市場はまだまだこれから拡大する市場なのだから。MicrosoftやGoogleなどが、同様な機能を出してくることは予測の範囲であり、それぞれ独自の工夫をしたサービスを近々に提供してくることは必然であろう。

 とはいえ、死角はあるからといって現状のChatterが採用するに値しないサービスということではない。少なくとも、現状ではビジネス領域での先進的なリアルタイムなコミュニケーションツールとしてしは、先行している優位性は大きい。Salesforce.comのCRM機能と連携できることで、現段階でもすぐに企業内で活用出来るサービスになっていると言える。

 さらに、完成度がまだ十分ではないことは、実はSalesforce.comのサービスではある種いつものことだ。彼らのサービスは、どんどん新しいものをいちはやく提供し、それを利用したユーザーのフィードバックを素早く取り入れて完成度を高めるというものなのだ。なので、ある程度の完成度まで達成していれば、それをまずはユーザーに使ってもらう。これは、Twitterやfacebookなどのパブリックなサービスでもある種同様であり、ユーザーが使っていくことでさらに成長するものだとも言える。このスピード感とユーザーとの距離感が、実は新たなクラウド世界での標準的なサービス提供方法なのかもしれないと思う。このあたりは、OracleやMicrosoftなどのSalesforce.comの言うところのOld Typeベンダーには、なかなか難しいサービス提供方法かもしれない。

 ということで、死角はあるけれどSlaesforce Chatterは新しくてなかなか興味深いサービスであることは間違いないだろう。個人的にも、早く試してみたいサービスではある。

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