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ウォークスルー型無人店舗が日本で新たな買い物体験の変革を起こすかもしれない

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スーパーやコンビニエンスストアなど置かれたセルフレジも珍しくなくなった。セルフレジを使えば商品のバーコードを自分で読ませて精算でき、店員の介在無しに買い物ができる。これ、便利なようだが店舗ごとに手順が異なり、慣れていないと結構手間取ることも。友人のレジを選ぶ人もまだまだ多い。

またここ最近は、無人型店舗も見かけるようになった。何らかのIDカードやスマートフォンによる本人認証を行えば入場でき、センサーやカメラによる防犯機能、商品に取りつけたICタグ、キャッシュレス決済など、さまざまなデジタル技術を組み合わせて店頭に人を設置しなくても運用できる店舗となっている。とはいえこれも店舗ごとに仕組みが異なり、利用するハードルは少し高いものがある。

インバウンド顧客の困り事を解決する関西初のウォークスルー型無人店舗

海外プロモーション、訪日誘客、越境EC支援などを行うインタセクト・コミュニケーションズ株式会社は、無人、省人店舗のソフトウェア、ハードウェアなどの開発、店舗設置や運営などのサポート、分析などのサービスを提供するCloudpick Japan株式会社と共同して、大阪、関西エリアで初となる「レジを通らないウォークスルー型無人店舗」を2024年3月7日に関西国際空港近くの「住一HOTEL」に設置した。これはレジが全くない無人店舗で、決済方法を登録するだけで容易に利用できる。

この無人店舗を開設するきっかけは、インバウンドに関わるビジネスに携わるインタセクト・コミュニケーションズ株式会社の代表取締役社長 譚 玉峰氏が、地方のホテルなどに行った際に夜遅くなるとホテルの売店が閉まり、周りにはコンビニエンスストアもなく、買い物難民になる状況を経験したからだ。インバウンド顧客へのサービス向上を考えると、このような状態は好ましくない。観光客を呼び込みたい地方にとっても、顧客満足度のためになんとか解消したい状況だ。

そこで今回のウォークスルー型無人店舗を企画し、1年余りの短期間で1号店のオープンにこぎ着けた。この店舗は無人なだけでなく、インバウンド顧客に対応するためにマルチランゲージ機能も有している。

利用するにはまず、サイトにアクセスし決済方法を登録する。利用するスマートフォンの言語が日本語なら日本語サイト、中国語や韓国語ならば、それぞれの言語のサイトが表示され登録ができる。登録が終われば入場用のQRコードコードを発行し、それをゲートにかざし店舗に入場する。入場時には「いらっしゃいませ」の音声が流れるが、これもマルチランゲージ対応だ。

入場したならば、あとは棚から欲しい商品を取り、そのまま持って退出ゲートから出るだけだ。決済は間もなく自動で行われる。入場後はスexit.jpgマートフォンはポケットなどに仕舞っても問題ない。家族連れなどの場合、1つのQRコードコードで複数の人が入場することも可能だ。QRコードに紐付いた複数の人が商品を手にしても、それらは合算され決済が行われる。出場前に買った商品を確認するような作業は一切必要ない。棚から商品を取ったら、とにかくそのままゲートから出るだけだ。

camera.jpgどの商品をいくつ取ったかは、天井に取り付けられたカメラと棚の重量センサーで認識する。カメラは人を認識するための細長の形のものと、商品を認識するためのドーム型の2種類がある。それぞれのカメラと棚のセンサーの情報を組み合わせ、正確に誰がどの商品をいくつ取ったかを判別する。仮に間違った商品を手にした場合は、同じ棚に商品を戻せば問題ない。

手にした商品を間違った棚に戻した場合は、管理者側のコンソールにアラートが出る。商品を正確な棚に戻す作業は、残念ながら人手でやるしかない。とはいえ、隣り合わせの棚の商品が同じ値段であることも多く、同じ価格の棚に戻された場合には商品をすぐに戻さなくてもオペレーション上は大きな問題とならない。recipt.jpg

棚には商品の値札を示す電子値札が置かれ、これはリモートから値段管理などが可能だ。この値札も日本語、中国語、英語と複数言語の表示がなされている。電子値札はリモートから値段変更ができ、商品のタイムセールなども実現できる。

今回の無人店舗の仕組みには、店舗を無人で運用するためのセンサーやカメラ、出入り口ゲートなどのハードウェアはもちろん、商品管理や値段の設定、在庫管理のためのダッシュボードなど、バックヤード側の運用管理の仕組みも含まれており、無人店舗に必要な機能が網羅されている。price.jpg

ウォークスルー型無人店舗の便利さが買い物体験を変革する

個人を識別するためのカメラ映像のデータは、店舗にローカルで設置されている複数のサーバーで処理され、データがクラウドなどに渡され保存されることはない。今回開設した店舗は、45平米ほどの広さで400種類ほどの商品を置いている。天井に設置されたカメラは20台ほどが設置されている。

カメラは設置する高さにより撮影範囲が変わるため、カバーするのに必要な数が変わる。設置位置が高くなれば広範囲の撮影はできるが、認識精度は落ちることとなる。適切な高さに設置するのが、店舗構築の重要なノウハウとなっている。この規模の店舗で開設に2000万円程のコストがかかる。店舗規模や設置するゲート数などの違いで、この費用は変わる。もちろん、店舗運用のためのランニングコストは別途かかる。

初期費用はそれなりにかかるが、人件費を大幅に削減した上で24時間365日稼働できる利点は大きそうだ。現状の人手不足状況の中では、深夜のアルバイト要員などを確保するのもままならない。このような利用者の敷居が低い無人型店舗の需要は、かなり高いものがありそうだ。当面はインバウンド需要への対応をターゲットとするため、海外からの観光客が多く訪れる地方のホテルなどに展開する予定だと譚氏は言う。とはいえ、都会のビルや駅ナカ、さらには学校や病院などでも、無人店舗の潜在需要はかなりありそうだ。

実際にこの店舗の仕組みを目の当たりにしての素直な感想は「これは凄く便利だ」と言うもの。とはいえ、棚から商品を取ってそのまま出てこられるのには、最初は少し抵抗感が出るかもしれない。日本に最初にスーパーマーケットができたのは1950年代だ。商品を棚から自ら取りかごに入れ後から生産する形は、当時の日本人にとって大きな買い物体験の変革だったことだろう。このウォークスルー型無人店舗も、70年以上前の買い物体験の変革と同様なものを、日本の消費者にもたらすかもしれない。

今回の店舗では、決済方法はクレジットカードとなっている。今後は各種QRコード決済などにも対応する予定だ。さらにVisaタッチのようなクレジットカードのタッチ決済も視野に入っている。それが可能となれば、事前の決済方法登録なども必要なく、財布から出したクレジットカードをいきなりゲートにタッチするだけで入場でき、ウォークスルーで買い物ができることとなる。

これが実現されれば、利便性はさらに大きく増すだろう。今後の決済方法の本命は、クレジットカードのタッチ決済なのではとも思わされた。あと数年もすれば、街中にクレジットのタッチ決済で利用できる無人型ウォークスルー店舗が、珍しくない時代がやって来るのかもしれない。

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