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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

思っていた以上に仮想化技術は進んでいる

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 ここ最近さまざまなセミナーやイベントに参加しても、技術的にすごいなぁ、面白そうだな期待できるなという題材には、なかなか行き当たらない。それだけ、コンピュータの技術が成熟してきたのか、はたまた自分自身の好奇心が減退してしまったのだろうか。

 ところが、今日参加したVMware Virtualization Fair 2005 Tokyoは、なかなか興味深い話をきくことができた。今回のような大規模なユーザー、パートナー向けのイベントはアジアにおいては初の試みということ で、VMware日本法人の三木氏によると、会場のキャパが大きすぎるのではないかとか、午後の35のセッション数も多すぎるのではないかと心配していた とのこと。蓋をあけてみれば事前登録者数が900を越え、午前中の基調講演会場もほぼ満席という盛況ぶりだった。

 VMwareというと、かつては先進的なユーザーの趣味の世界や効率的な開発環境としての認識は高かった。個人的には、以前のb-logにも書いたように、EMCの買収により信頼にたるシステムの実行環境として発展してきたと考えていた。この認識自体は間違ったものではないと思うが、実際の「仮想化」の技術はこの認識よりもっと先をいっているようだ。

 基調講演には、米国VMware社の社長であるダイアン・グリーン氏が登壇し「仮想化は、いまデーターセンターの中で起きている、もっとも関心の高いことだ」と述べている。たんなるアプリケーションの仮想実行環境というよりは、データセンターの運用をも大きく進化させるものになってきているというのだ。

 仮想化の考え方自体は、40年以上前のメインフレームの時代からあるもので、新しいものではない。ただこの考え方を安価なインテル・アーキテクチャの上に実装したというのが異なる点だ。さらに、バーチャルマシンの完成度、ハードウェアの能力やディスク装置の機能なども向上したため、新たな利用方法がどんどんでてきている。

 安価なテスト環境に仮想マシンを利用するというのは、理解しやすい。アプリケーション開発においてテスト環境は必ず必要になるものだが、カットオーバーしてしまえば常に利用するものではない。これを仮想マシンで利用できれば、使わないテスト環境用マシンを保存しておく必要はない。また、サーバーコンソリデーションで、増えすぎたWindowsサーバーなどを集約するのも理解しやすい。シオノギ製薬では2台の物理マシンで50台の仮想マシンを動かしているとのこと。サーバー設置スペースや、各地に配置する必要のない技術者の確保を考えても効果は高いとのこと。

 さらに面白いと感じたのが、VMwareをあいだに挟むことでハードウェア依存がなくなるということ。機種の異なるマシンであっても、その上で構築される仮想マシンの環境はどれも同じにできるのだ。これにより、ハードウェア構成のことなる機種間でディザスタリカバリを実現できたり、ヘテロジニアスなクラスター環境をも組むことができる。

 仮想マシンの「モビリティ」というのも、メインフレームにはなかった考え方だろう。VMwareの仮想マシンのファイルをまるごと取得してそれをネットワーク越しにサポートに渡せば、実行環境と同じものをすぐさまベンダーのサポートで再現できるという。場合によってはUSBメモリに仮想マシンを入れて持ち歩くことも可能だ。実際に三木氏の講演のなかでは、iPod nanoに入れた氏のPCデスクトップ環境を、10月に発表されたフリーのVMware Playerを使って会場のノートPCで復元してみせた。VMware Playerは仮想マシンのランタイム環境で、仮想マシンをどこででも実行できる。製品のデモンストレーションなど、今後さまざまな利用が期待できそうだ。

 三木氏は、「仮想化は、たんにシステムをコンソリすることではない。ネイティブで動かすよりもセキュリティ、管理性、信頼性の向上が期待できる」という。ここ最近の注目株としては、ACE(Assure Computing Environment)を使った企業デスクトップのシンクライアント化だ。サーバーでデスクトップを仮想マシンとして実行し、ユーザーの環境はシンクライアント化する。他社のシンクライアント化のソリューションだとサーバーサイドでアプリケーションがきちんと実行できるか検証が必要になるものもあるが、VMwareの仮想マシンの上ではそんなことは必要ないという。

 イベントが面白かったので、ついつい書きすぎてしまった。とにかく、今後かなり期待できそうな技術だと感じている。久々に自分の環境にも、VMwareを導入してみようという気になっている。

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