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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

IT屋は手許に箱を置きたがる

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 EMCがVMwareを買収したのは、2003年の12月のこと。あれから約2年が経過したが、自分のなかではどうもエンタープライズ・ストレージベンダーのEMCと仮想化技術のVMwareのソリューションが結びつかなかった。EMCがそのほかに買収している製品や企業は、ストレージに直接的に関連し、EMCのソリューションを補完するものがほとんどだ。それに対して、技術的にどうのということではなく、EMCにとってVMwareと一緒になることのメリットがこれまで理解できなかったのだ。

 実際のところ、買収後もVMwareとの目立ったコラボレーション活動は見られなかった。VMwareのパートナーは相変わらずCPUやサーバー本体の企業イメージが強い。そんななか、今日開催されたEMC Forum 2005の基調講演のなかで、両者が組んだことでの新たなソリューションが紹介された。VMware自体は、先の四半期で1億ドルの売上げがあったということで、年間4億ドル以上のビジネスの可能性がある。EMCコーポレーションのマーケティング&テクノロジー担当主席副社長のハワード D.エリアス氏によると「VMwareはいまもっとも熱い会社」とのことだ。

 エンタープライズ系のストレージハードウェアを提供してきたEMCは、2003年以降「ストレージと情報管理」に注力してきた。そういえば、ここ最近はストレージ群を管理したりコンテンツ・マネージメント製品の買収や関連する新たなサービスの展開を相次いで発表している。最近のEMCのキーワードは「ILM -情報ライフサイクル管理-」だ。このように新しいEMCの姿のなかにも、VMwareの影はまだ薄い。VMwareはむしろ、EMCとは直接関連せず独自に業績を向上させてきたように感じる。

 今回のキーノートセッションで、2006年以降のキーワードとしてとり上げられていたのが仮想化。EMCは、今後ネットワークストレージの仮想化、ファイルの仮想化、そして仮想インフラストラクチャの3つを提供していくという。VMwareが重要な役割を担うのが、この仮想化されたインフラストラクチャだ。メインフレームでは、すでに何十年も前から実現されていた技術だと言われるかもしれない。世の中のWindowsなどのミッドレンジ以下のサーバーの稼働率平均は、せいぜい10~15%程度。そうであっても、新たなサーバー要求があれば新しいマシンを購入してきたのがこれまでの状況だ。それに対して、VMwareならプロセスを1つ追加するだけでいいという。これに、仮想化したストレージのソリューションを組み合わせることができれば、たしかにオンデマンドな仮想化インフラストラクチャが低コストで構築できる。

 これまで、開発環境などでおもに利用されてきたVMwareは、ここにきて信頼性も向上し運用環境としての評価も上がっているようだ。たんに仮想環境を提供するだけでなく、この2年間あまりはEMCの要求するエンタープライズで運用できる仮想環境を提供することに費やされてきた、と考えることもできる。

 基調講演に登場した、ファイザー株式会社の取締役IT担当の矢坂 徹氏によると、150台のサーバーをVMwareの技術を利用して12台に集約するという。この話を聞くと「IT屋はどうしても箱を手許に置きたがる。今回のEMCとの協力でパラダイムシフトを起こす」というちょっと大げさな表現にも真実味がでる。仮想化は、EMCだけでなくあらゆるベンダーが今後のキワードの1つに挙げている。来年以降、企業の所有する「箱」の様相は仮想化で大きく変化してくるかもしれない。

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