オルタナティブ・ブログ > 森崎修司の「どうやってはかるの?」 >

計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

開発者の人材派遣の話とモチベーション

»

ソフトウェア開発に関する調査、研究で広く活動されている方と打合せがあり、その後の昼食時に現状の人材派遣を続けるとノウハウがたまらないだろうという話をした。特に1人だけプログラマを派遣するような場合には、担当者と成果物(もしくはプロジェクトや会社)との間にWin-Winの関係を作るのが難しくなるだろう(成果物重視になって担当者のメリットはあまり考慮されないだろう)、という話だった。

特筆して根本的解決につながるような話はでなかったのだが、よく言われているように仕事はなるべく一括して受けて一まとまりの仕事にすべきであろう(偽装請負ではなく本当にサブシステムを請け負う等)という感じの話になった。前にここでも書いたが、SEやプログラマを少人数で派遣してしまうと、改善や計測のノウハウが誰にもたまらなくなってしまうことが多いことが指摘されていた。個人的な経験からも、あまり分業せずに一通りの仕事を一度やってみることはスキルや知識を積み重ねていく上で重要だと思っている。また、モチベーションの面でも同様なことがいえるのではないかと思う。オルタナティブブログでも大木さんがファシリテーションをテーマの1つとされていたり(ファシリテーションの相互理解や合意形成は結果としてプロジェクトメンバのモチベーションを上げると考えている)、平鍋さんがsustainableなソフトウェア開発について語られているのは、モチベーションが重要であるという認識が背景としてあるからではないだろうか。ブログ以外でも、PFP(プロジェクトファシリテーションプロジェクト)の活動自体や参加メンバの多さや活動の活発さから伺える。

派遣や偽装請負が多くなってしまう原因にはいろいろなものが考えられるが、営業的観点からももっと語られてもよいように思う。多重派遣等違法なものについては当然のことながら排除されるべきであるが、要員派遣はシステム開発と比較して値崩れや値引き要請に対して強いという傾向があると思う。また、システムの見積りと比較して発注側、受注側ともにわかりやすいという面(問題の先送りでしかないかもしれないが)があるのではないかと思う。「こんなソフトウェアを作りたいんだけど..詳細はまだつまっていなくて..」というよりは「とりあえず、Webアプリの経験がある人を7, 8人程度」というほうが簡単であり、見積るほうも楽である。購買/調達部門で一括して発注する場合等、複数の部門が絡むとその傾向が強くなる可能性があるだろう。

米国の実務者に聞いてみると、小さい規模の専用システムの請負開発はペイしないのでやらないという話をよく聞く。それよりは、カスタマイズが比較的容易な準パッケージを作っておいて、小さい規模のものはパッケージにあわせてもらうことが多いということだ。商習慣を変えるというのはなかなか簡単にはいかないだろうが、もしかするとこのあたりに解決への道筋があるのかもしれない。

Comment(3)