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IT業界を四半世紀見てきたジャーナリストのこだわりコラム

IT産業は他産業の裾野の広がりを研究すべし

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 「IT産業はまだまだ遅れている。発展途上の産業だと思います」。明日29日発売の『アイティセレクト11月号』編集長インタビューに登場いただいたセールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長はこう語って、しきりにIT産業の今を憂慮しておられます。オンデマンドCRMサービスを展開する同社は、ソフトウェアをサービスとして提供する「SaaS(Software as a Service)」ビジネスの先駆者としていま注目の的。だが一方で、IT業界ではオンデマンドサービスやSaaSの今後の可能性について疑問視する向きも少なくないようです。

 そんな見方に対して、宇陀さんはこう答えています。
 「せっかくの新しい取り組みをIT産業の枠の中だけで捉えて疑問視するのは、あまりにも視野が狭いと思います。むしろ、こうした取り組みによって産業全体の裾野をどう広げていくかを考えるべきです。その際にはぜひとも歴史のある他の産業をよく研究してみてはどうでしょう。例えば建築業界をみると、モノをつくることは同じにしても、そのサービス領域には賃貸やホテルなどさまざまな形態があります。自動車産業から派生したビジネスなども大いに研究の価値があります」

 確かに建設や自動車など、歴史のある一大産業には他産業も巻き込んだ形で大きな裾野の広がりがあります。例えば自動車産業は、自動車そのものが用途に応じてさまざまな種類に分かれるだけでなく、その部品や売り方も多彩です。さらに自動車は道路や駐車場、ガソリンスタンド、保険といった分野にも大きな影響を及ぼしています。そう考えると、「IT産業はまだまだ発展途上」と言う宇陀さんの見方もお分かりいただけるでしょう。逆に言えば、IT産業は“発想の転換”次第でまだまだ成長するはずです。私たちもそうしたアイデアのタネをピックアップして、皆さんにいち早くお伝えできるようがんばりたいと思います。

 さて、皆さんにお知らせがあります。
 私、9月末をもって弊誌編集長を退任し、10月より非常勤の編集委員として活動していくことになりました。それに伴い、10月から本ブログのタイトルを「アイティセレクト編集長日記」から「アイティセレクト取材ノート」に変更させていただきます。
 これを機に、今後はもう少し軽いタッチの話題も含めて、気軽に書いていきたいと思います。引き続き、よろしくお願いいたします。

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