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ICANNの一歩前進

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前回エントリが実に8月22日。9月は連休などあったにも関わらず、まるまる何も書かなかったことになります。

その間、8月25日から29日はAPNIC28ミーティングで北京に行って、オリンピック以後の北京の変貌に驚いたり、中国人のもてなし精神に恐れ入ったり、

日本インターネットドメイン名協議会が立ち上がったり、

やっとのことで、インターネットが死ぬ日 (ハヤカワ新書juice)を読了したり、していました。

なんか、オルタナのトップページもリニューアルされ、久しぶり感を倍増させます。


さて、最近の大きなニュースはICANNです。ICANNの業務は、JPA(Joint Project Agreement)と呼ばれる、米国商務省(DoC: Department of Commerce)との契約に基づいて行われていました。これが9月30日に満了となる、と。満了を前に、4月にはJPAの遂行状況に関するパブリックコメント募集が出され、JPNICからも意見を寄せました

まさに契約満了日であった9月30日に、ICANN Webページにアナウンスがでました。JPAに代わり、Affirmation of Commitments(AoC)と呼ばれる新しい覚え書きが交わされたのです。

ICANN | The Affirmation of Commitments - What it means?

こちらのページには、CEO Rod Beckstromのインタビュー動画,AoCの全文,理事会決議文,著名人からのコメント、などがセットになっています。

AoC == 公約の確認 というのは風変わりな文書名ですが、JPAとの比較で、以下のような特徴を持ちます。JPNICページから引用します。

変わった点
1. 期限が記載されていません。対するJPAは3年間の期限付きでした。
2. JPAでは、DoCによる中間評価と終了評価を受ける必要がありました。AoCではDoCに代わり、コミュニティのボランティアからなる評価委員会が評価を行うことが規定されました。初回評価は2010年12月31日が期限となります。

評価委員会はGAC*2議長、ICANN理事長もしくは事務総長*3、DoC情報通信担当次官補、ICANNの各諮問委員会(Advisory Committee、AC)および各支持組織(Supporting Organization、SO)*4の代表、および独立した専門家、またはこれらの役職に任命された人からなるとされています。

変わらなかった点
3. ICANNは引き続き米国に本拠地を置く一民間非営利団体として運営されます。

今まで何回か行われたJPAの更新では、多少の文言が変わりながらも、契約年限があり、DoCにレポートすることは変わりませんでした。それでも毎回、変わった文言に注目していろいろな希望的観測がなされました。

しかし今回の更新は、それらとは大きく異なります。米国政府は評価委員会に席を残しはしますが、あくまで一員という位置づけであり、かつ、年限がありません。でもやっぱり、「どうせ何かが変わる訳じゃないんだろ?」という冷めた声も聞こえます。確かに、ICANNの仕事がこれで大きく変わるわけではない、と言う意味では正しいのですが、DoCへの従属性が顕著に落ちた形になりますので、これに着目する人たちに取っては、非常に大きなニュースでしょう。

このニュースには、各社反応してそれぞれ即日で記事になっています。

ITmedia:ICANNが米政府と新たな合意 独立性高まる
Internet Watch: ICANNが米政府の直接監督から離れる、真のグローバル組織へ
マイコミジャーナル:ICANN、米商務省下から独立組織へ
読売新聞:ICANN、米政府から独立で合意
日経新聞:ネット管理「米独占」から転換 ドメイン多言語化に弾み

比べて読んでいると、焦点の当て方がそれぞれ違って、面白いですね。突っ込みたくなるところもたまにあります。

今月末には、ソウルでICANNミーティングが開催されます。このときに、またいろいろと分かるかも知れません。

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