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ACCS久保田が著作権ほか普段感じていること

Winnyユーザーへの求刑は軽すぎる

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少年漫画誌に掲載された漫画を、Winnyを使い権利者に無断でアップロードし著作権法違反で今年5月に逮捕されました。起訴されていた男性2人に対する判決が7月、京都地裁で相次いで言い渡され、いずれも懲役1年執行猶予3年(求刑懲役1年)の判決でした。このうち20日の判決について、朝日新聞の報道によると、裁判官は「『著作権者が制作にかけた費用や労力をないがしろにし、創作基盤を揺るがしかねないが、利欲性はない』と述べ」たとあります。私は、被害の実態から見て、この判決と特に求刑(判決は求刑をもとに言い渡されるためです)に不満を持っています。

確かにこの被告人は、漫画をアップロードしたことで、経済的な利益を得ておらず、その点を求刑と判決は考慮したようです。しかし、タダで配布されるからこそ、権利者の被害は甚大なのです。事実、この事件では漫画誌の発売日前にWinnyで漫画が「共有」されており、漫画誌の販売に影響が大きかったはずです。このユーザーがWinnyネットワークにアップロードした漫画ファイルのひとつを、逮捕された時点でどれだけ共有されているかをACCSで調べたところ、約1500件にも拡散していることが確認されました。このユーザーは2~3年前から、漫画誌が発売されるたびに、ほぼ毎週このようなアップロードを続けていたことが裁判でも明らかにされていることから、その被害規模は大きいと言わざるを得ません。

懲役1年という求刑は、これまでのWinnyユーザーの著作権侵害事件への求刑と変わりません。同じような犯罪には同じような刑罰が下されるべきでしょうが、以前書いたとおり、著作権法違反の刑事罰は今年7月から、10年以下の懲役刑もしくは1,000万円以下の罰金刑またはこれらの両方が科せられることになりました。本事件は罰則の引き上げが適用される前の事件ですが、それでも懲役刑は最高5年まで求刑することができたはずです。

ことWinnyなどを使った違法アップロード行為の場合、窃盗などの犯罪と異なり、犯罪行為者が経済的な利益を得ず、ネットワークの特性から大規模な損害を発生させてしまうのが特徴です。この場合、通常の事件の感覚で求刑を検討すると、被告人が得た収入の多寡が考慮の要素となってしまい、発生した法益の侵害に比べて軽すぎる求刑に繋がっているのではないでしょうか。検察には、インターネットを通じた著作権侵害の刑事責任について、正しく実態を評価するように希望します。

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