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こんな働き方改革は嫌だ!「働かせ方改革」なんて言われないために

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 働き方改革については、ややバズワード化した感もあるが、今年ホットな話題であるのは間違いない。私のところにも相談が来ることが増えている。そういった際の備えとして、以前に上げたクロニクルや実際に取り組む際のフレームワーク、先行事例等を整理して纏めている。このところのブームで手元に纏めた手法や事例は既に100を超えたが、実に多彩だ。

 さてそんな働き方改革への取り組みの中で、正直これは辞めたほうがよいというものを幾つか挙げてみることにする。

1.削減した残業代をそのまま利益にして内部留保しているだけ、あるいはそうしたいという姿勢が見え透いているもの

 最近の企業決算で残業費削減によって人件費が減ったので業績が上がった、というのを見かけた。社員が頑張って生産性を上げて効率化したその成果は誰のものなのだろうか。まともな組織であればあるほど既に簡単に辞める事のできる作業なんてほとんど残っていない。そうした中で細かい作業をコツコツと見直して業務を効率化し生産性を上げて、その結果利益が増えたものを経営者が総取りするのであれば、もはや次は誰も生産性を向上させようなどと考えないだろう。
 働き方改革に早くから取り組んだ企業では、取り組みの冒頭で「総人件費は維持する」「減った残業代と同額(またはそれ以上)分をボーナス等で社員に還元する」ことを社長名で宣言していた。最近はこうした宣言を行うケースは減っているようだ。これを見透かされて「働き方改革って言うけど、その目的は残業代を払いたくないってことでしょ」と揶揄する人が増えるのは良くない状況だ。

 働き方改革は誰のためにやるのか。改革して収入が減るのは社員が求めていることなのか。良く考えてから取り組むべきだ。

2.残業者を見せしめにするようなもの

 残業を許可制にして無許可の残業を禁止する会社がある。これは安易な残業、付き合い残業などの無意味な残業を抑制するためには効果がある。最も併せて残業申請を簡略化しておかないと、かえって作業が増えて士気が下がる。
 許可制は仕方ないと思うが、さらにその上に残業している人は他人からひと目見てわかるように目立つ服を着用させたり、机の上に「残業中」という大きな看板を出させたりする会社があるそうだ。こういう会社は社員が自ら好き好んで残業をしていると思っているのだろうか。お客様からの要望や突発事項などいろいろな事情があって仕方なく残業をしている社員に「(本来やるべき)仕事をするな」と受け取れるようなメッセージを発信するのは良くない。もし本当に「仕事をしなくてよい」とか「仕事をするな」と社員に言いたいのならそれは大革命だが、そうで無いならこういう残業従事者を見せしめにする行為は謹んだほうが良い。

 働き方改革というのは、会社が環境や手段を整備して社員に選択肢を多数提供することで、社員が「状況にあわせて」「いろいろな方法を使って」「気持ちよく」仕事をすることだ。少なくとも私はそう定義している。
 夜、ある時間になると課長や部長などの管理者が見回りするという施策もある。これももうちょっと考えて欲しい。サービス残業やヤミ残業を見張るためなら警備員などの第3者が見回るなりシステムの利用状況ログを翌朝チェックすれば十分だ。その見回りのためだけに人件費の高い管理職が遅くまで居残ることに何の意味があるのか。見回って「早く帰れよ」と言うだけなら、最初から手伝ったり他の部下をあてがうなり、あるいは自らが肩代わりしたらどうだろうか。見回りだけなら本質的には意味がない。

3.時間になったら消灯やPCを使えなくするもの

 これも社員から仕事のやり方の選択肢を奪うという面で逆効果のほうが大きいのではないか。夜より朝のほうがパフォーマンスが良いというのは多数派ではあっても全員でない。相手あっての仕事なのだから、時には相手の都合でその時間でしかできないこともあるが、ある時間以降は仕事ができなくなるのであれば時差対応もできない。画一的、強制的に仕事を中断させて生産性が上がるとは思わない。
 但し例外もある。サービス業など顧客への対応が業務上不可欠な業種・職種において所定の労働時間外に取引先から(半ば強制的に)仕事のリクエストを受けるような場合は、終業時間になったら電話やメールが自動的に留守番対応に切り替わって顧客や代理店からの無理難題をシャットダウンする仕掛けは有効だ。これなら顧客に納期や回答の延長を折衝する際にも社員が会社の方針として「営業時間外は対応できない」ことを盾にできる。その他にも、企画職や研究職などのように結果に明確なゴールが引きづらく、やればやるだけ結果の品質が上がるような職種においても、過剰品質を防止する為に時間を過ぎたらPCを使えなくするというのはありだろう。
 もちろんこういう時間制限を行った場合、当然相手からの評判は落ち満足度も下がるが、そうなった際の責任も現場に押し付けるのではなく、会社として顧客に説明すべきである。簡単なことだ。HPなどにそう明記するか、上司が電話で顧客に説明すれば良い。それができないのなら消灯や電源オフは辞めなさい。

 労働基準監督署対策ではなく、社員の時間の使い方や生き方に目を向けた本当の働き方改革に取り組みたいものだ。

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