提案書作成にコストがかかることを知っていますか?
このところ何度も提案依頼書(RFP)を作成する際の注意点を書いてきているが、こうした提案依頼をする際に初心者が良く勘違いする事柄に
提案を受けるのは無料=提案書を作る作業は売り手側の営業活動の一環なので相手の持ち出し
という事がある。いやこれ自体は間違いではないし、このご時世に提案の為のコストを提案を受ける側が負担してあげる例なんてほとんど無く、通常のシステム調達活動ではごく一般的な話だ。
しかし提案依頼書への回答となる提案書を作成するのにコストが全くかからないなんてわけはない。営業担当者の訪問時間や打合せ時間はもとより、提案内容を検討し資料を作成するプロジェクトマネージャーやSEはそれなりの時間この案件のために業務時間を割くことを余儀なくされる。これはわかるだろう。
では売り手側の相手企業ではこのコストをどう扱うか。基本的には営業活動分として間接費内で処理するだろうが、中にはこうした営業用費用はアカウント別に負担する仕組みとして、自社の他のプロジェクトから費用配賦するルールを取っている企業がある。受注後にプロジェクト運営費から取り戻す仕組みを見たこともある。酷いケースだと営業用の予算が無いため、プロジェクトマネージャーやSEの人件費はその時に担当している別の顧客の全く関係ないプロジェクトに付け替えるような話も聞く。実際まっとうな間接費にそのまま計上する仕組みだとしても、間接費も結局は原価となる人件費の一部で最後にはどこかで負担しているはずだ。
何を言いたいのかというとその提案依頼からシステム調達の作業の間は良いが、結局はその後にそのコストは何らかの形で自分に跳ね返ってくる可能性が高いということだ。
そうでなくても収益管理を厳しくするようになった時代だ。こうした営業活動用のコストが嵩む取引先というのは相手側でもそれなりにチェックされ何らかの対策を打たれていると思ったほうが良い。調達工程という発注側に有利な時期に無理難題を押しつけられた先が受注後に「できません」「別料金になります」と手のひらを返す話は多いし、問題先については、逃げられなくなった保守の段階で特別な単価を使うようなったという話も聞く。
ちなみにコストにはお金以外の影響もある。調達作業時にころころと要件を変えて、提案書や見積書を何十枚と提出させられた担当者の気分が良いわけはない。こうした担当者が、その後疎遠になったりどうせ後から条件を変えられるなら最初は手を抜こうとするようになる姿もよく見る。
提案依頼をする側は発注者という強い立場にいるからこういう事を忘れがちだが、システム開発やその後の運用まで考えると長いスパンでまっとうな取引をしたいのであれば、提案依頼時に相手にかける負担やコストをよく考えて行動するべきだ。
質の低い提案依頼を出して後から何度も訂正依頼を出したり、自分たちが要件を詰め切れていなくリスクを可視化できていないのに競合先の価格を楯に値引きを迫るなどの行為は感心しない。
ま、昨今の提案依頼書(RFP)発行ブームでは、受注側もできるだけ早い段階で相手がこうしたモンスターカスタマーでないかを見切るのがとても重要なスキルになっていることも間違いないがw
===当ブログ過去の嘆き