社員を信じられないのならソーシャルなんてやっても仕方ない
「社内に “ソーシャル”を持ち込む際の良くある勘違い」の続きになるが、未だにソーシャルメディアの導入時に良く聞かれる質問に
社内にブログやSNSのようなソーシャルメディアを導入したら、そこが2ちゃんねるのようになるのではないか?
というのがある。この質問に対する私の回答はいつも「そんなことは、まず起きません」というものになる。未だに終身雇用という形態が強く残り組織への忠誠心が欧米に比較して高い日本人の場合社内コミュティが非難ばかりになるようなケースは少ないし、教育レベルが高く学生時代からネット上のコミュニティが身近にあることが当然となっている世代にとって、例え社内のコミュニティといってもログ取得や監査が背景にあることは容易に想像できるわけで、そうした面からも無法地帯になることはあり得ない。
実際に私が手がけた事例でも、時たま不適当な発言が投稿されて注意や修正依頼を行うことはあっても炎上にまで至ったケースは無い。
ところがこうした説明をしても納得頂けないケースも多い。「いやうちの社員はレベルが低いから」とか「事件が起きてからでは遅いから」という発言が相次ぐ。導入にあたってはガイドラインを作り教育・啓蒙を行う事や事件の際には証拠となるようにアクセスや書き込みのログは全て取得して保管することを説明してもご納得いただけない。
要は結局は経営側が社員を信じてはいないのだ。
で、そういう時には思わず
そもそも信じていない社員に何を期待しているのですか?信用できない社員にソーシャルメディアで発言を促しても仕方がないですよね。どんな発言を期待しているのですか。
なんて言ってしまう。もちろんこうしたケースでは、ブログやSNSの導入企画はトップダウンではミドル層からの提案であることが多いので、そのミドル層の方に「まずは経営者が社員を信用しうる風土にしないと駄目ですね」と諭すことになる。
卵と鶏の話になるが、私はそもそも経営層が信頼していないからこそ社員が前向きな発言をしなくなると思う。人は案外自分が相手にどう思われているかを敏感にキャッチするものだ。経営層に信用されていないと感じた人が、その反動で外で会社の不満をぶちまけたり自宅に帰って2ちゃんねるに書き込んだりするようになるのではないか。
よしんば不信の最初の原因が社員側にあったとしてもだ、社員の数と経営層の数を比べたら経営層の数のほうが少ないのだから、まずは経営層側の意識を変える方が早く風土を変えることにつながる。
エンタープライズ・ソーシャルを推進するときはむしろ「社内のコ ミュニティが荒れるのは悪い事なの?」くらいの意識を持って欲しいと思う。