イノベーションを起こすためには~SYMPOSIUM ITxpo 2008から
月曜日から今日までここ3日間ほどガートナージャパン主催のシンポジウムに参加している。毎年というか半年に一回の行事で自分的には恒例化しているイベントだが、せっかくなので気づきをいくつかポストしてみる。
まず今年のイベントでもっともわかりやすかったのはIT業界へも不景気の波が押し寄せているということだ。このシンポジウムもこれまで3日間開催だったものが2日半に短縮され昼食も1食減った。講演者や講演内容についても数年前に比べるとずいぶんとパートナーというか協賛企業のものが増えてガートナーのアナリストによるものは減ってきている。
月曜日の基調講演でも景気の減速がIT投資に反映されるのは、大体2四半期ほど遅れてるという遅効性が紹介されていたが、同じIT業界でもガートナーのような調査系は投資抑制時には最初のターゲットになりそうな分野でこうしたコスト削減の動きにつながっているのだろう。
日本でもシンポジウム開催にあわせて「2009年のTOP10戦略的テクノロジ」がプレス発表されたらしいが、これについてのプレゼンテーションがマーク・ラスキーノ氏から行われた。前に書いたように10個のテクノロジーに目新しいものはあまりない。唯一着目していた「特化型システム」についても具体的な内容としてアプライアンス製品を挙げられたので肩透かしを食った印象。
さらにがっかりしたのは、このプレゼンテーションの最後の質疑応答の「エンタプライズ・マッシュアップの具体的な例はなにかありますか?」というやりとり。氏の回答は「地図。場所などをマップで表示すると判りやすくなる」というもの。プレゼン資料もそうだったがマッシュアップというとGoogoleMapsしか頭に出てこないようだ!正直がっかりだよ!
彼らの言うエンタプライズ・マッシュアップというのはその程度なのか。私がエンタプライズ・マッシュアップという時には、基幹業務システムの持つ顧客データや取引履歴データをWeb-API対応させて情報系のSFAやCRMから呼び出して使うとか、設計系システムの製品データや部品表データと需給管理系のシステムのデータを並べて表示するとかそういうSOA的なものをイメージする。他にもインターネットで着実に普及するOpenIDをイントラネットで適用してシングルサインオンやID統合するというのも広い意味ではエンタプライズ・マッシュアップだと思っている。
そもそも地図系のアプリケーションなんて自社内に独自に持っている企業なんて小数派だろうに。社内の顧客名簿や業者一覧の住所をGoogleMapsにリンクさせて地図を表示させる連携機能なんて外部リンクの付与だけであってそれをマッシュアップと呼ぶのはおこがましいと思う。
ぷんぷんな1日目だったが2日目の最後にあった小西一有氏の「イノベーション・パラドックス(矛盾点)を克服する」というセッションはとっても興味深い分析とプレゼンだった。イノベーションを起こす(管理)する際のポイントとしては、以下の4つの矛盾点があるそうだ。
- パワー・パラドックス(アイデア<->実行力):良いアイデアを生み出すような人はたいていその実現能力が最も低い人である
- プロセス・パラドックス(非公式で影響力が低い<->公式で品質が低い):公式に卓越したプロセスを定義しても良いアイデアが得られるとは限らない
- プレッシャー・パラドックス(時間不足<->緊迫感の欠如):従業員に時間を提供しすぎると緊迫感がなくなって遊んでしまうが時間が足りなくても画期的なイノベーションはおきない
- プロパティ・パラドックス(オープンでリスク大<->プロプライエタリで偏狭):オープンに意見を集めたり動くを漏洩や推察のリスクも上がるが閉じてやると偏狭的になってしまう
そしてイノベーションを起こすためにはこれらの矛盾点を都度上手にバランスを取りながらコントロールしていくしかないという提言は、私にはすとんと腹に落ちた。
そして3日目の今朝はケネス・チン氏の「Googleだけではない: 一般向けエンタプライズ・サーチの未来」というセッションに出てきた。正直これもあまり目新しいものはない。ガートナーの言う「フェデレーションサーチ」という検索の未来形が私にはまだよく理解できいし、対話型サーチというのであれば日本発の人力検索が一歩進んでいると思うのだがこれらに関しての言及もなし。ただ以下の予測だけは気になったのでメモしておいた。
2013年までに、1日に仕事で目にする「文書」の25%以上は、写真、映像、または音声が主体になる。
ガートナーでは会社の中の情報も急速にリッチメディア化すると睨んでいるようである。さてどうだろう個人的には5年後に4分の一というのはちょっと言いすぎな気もするが・・