月曜日から今日までここ3日間ほどガートナージャパン主催のシンポジウムに参加している。毎年というか半年に一回の行事で自分的には恒例化しているイベントだが、せっかくなので気づきをいくつかポストしてみる。

 まず今年のイベントでもっともわかりやすかったのはIT業界へも不景気の波が押し寄せているということだ。このシンポジウムもこれまで3日間開催だったものが2日半に短縮され昼食も1食減った。講演者や講演内容についても数年前に比べるとずいぶんとパートナーというか協賛企業のものが増えてガートナーのアナリストによるものは減ってきている。
 月曜日の基調講演でも景気の減速がIT投資に反映されるのは、大体2四半期ほど遅れてるという遅効性が紹介されていたが、同じIT業界でもガートナーのような調査系は投資抑制時には最初のターゲットになりそうな分野でこうしたコスト削減の動きにつながっているのだろう。
 
 日本でもシンポジウム開催にあわせて「2009年のTOP10戦略的テクノロジ」がプレス発表されたらしいが、これについてのプレゼンテーションがマーク・ラスキーノ氏から行われた。前に書いたように10個のテクノロジーに目新しいものはあまりない。唯一着目していた「特化型システム」についても具体的な内容としてアプライアンス製品を挙げられたので肩透かしを食った印象。
 さらにがっかりしたのは、このプレゼンテーションの最後の質疑応答の「エンタプライズ・マッシュアップの具体的な例はなにかありますか?」というやりとり。氏の回答は「地図。場所などをマップで表示すると判りやすくなる」というもの。プレゼン資料もそうだったがマッシュアップというとGoogoleMapsしか頭に出てこないようだ!正直がっかりだよ!
 彼らの言うエンタプライズ・マッシュアップというのはその程度なのか。私がエンタプライズ・マッシュアップという時には、基幹業務システムの持つ顧客データや取引履歴データをWeb-API対応させて情報系のSFAやCRMから呼び出して使うとか、設計系システムの製品データや部品表データと需給管理系のシステムのデータを並べて表示するとかそういうSOA的なものをイメージする。他にもインターネットで着実に普及するOpenIDをイントラネットで適用してシングルサインオンやID統合するというのも広い意味ではエンタプライズ・マッシュアップだと思っている。
 そもそも地図系のアプリケーションなんて自社内に独自に持っている企業なんて小数派だろうに。社内の顧客名簿や業者一覧の住所をGoogleMapsにリンクさせて地図を表示させる連携機能なんて外部リンクの付与だけであってそれをマッシュアップと呼ぶのはおこがましいと思う。

 ぷんぷんな1日目だったが2日目の最後にあった小西一有氏の「イノベーション・パラドックス(矛盾点)を克服する」というセッションはとっても興味深い分析とプレゼンだった。イノベーションを起こす(管理)する際のポイントとしては、以下の4つの矛盾点があるそうだ。

  • パワー・パラドックス(アイデア<->実行力):良いアイデアを生み出すような人はたいていその実現能力が最も低い人である
  • プロセス・パラドックス(非公式で影響力が低い<->公式で品質が低い):公式に卓越したプロセスを定義しても良いアイデアが得られるとは限らない
  • プレッシャー・パラドックス(時間不足<->緊迫感の欠如):従業員に時間を提供しすぎると緊迫感がなくなって遊んでしまうが時間が足りなくても画期的なイノベーションはおきない
  • プロパティ・パラドックス(オープンでリスク大<->プロプライエタリで偏狭):オープンに意見を集めたり動くを漏洩や推察のリスクも上がるが閉じてやると偏狭的になってしまう

 そしてイノベーションを起こすためにはこれらの矛盾点を都度上手にバランスを取りながらコントロールしていくしかないという提言は、私にはすとんと腹に落ちた。

 そして3日目の今朝はケネス・チン氏の「Googleだけではない: 一般向けエンタプライズ・サーチの未来」というセッションに出てきた。正直これもあまり目新しいものはない。ガートナーの言う「フェデレーションサーチ」という検索の未来形が私にはまだよく理解できいし、対話型サーチというのであれば日本発の人力検索が一歩進んでいると思うのだがこれらに関しての言及もなし。ただ以下の予測だけは気になったのでメモしておいた。

2013年までに、1日に仕事で目にする「文書」の25%以上は、写真、映像、または音声が主体になる。

 ガートナーでは会社の中の情報も急速にリッチメディア化すると睨んでいるようである。さてどうだろう個人的には5年後に4分の一というのはちょっと言いすぎな気もするが・・

yoi

Special

- PR -
コメント
13時15分41秒 2008/10/29 17:37

「良いアイデアを生み出すような人はたいていその実現能力が最も低い人である 」からこそ社会的な役割分担が重要であり、考え付く人と実現する人は別でも構わないというか別でないと社会にとって効率が悪いと思います。
しかし今の日本では殆どの場合、実現能力まで備えていることを求められ、多くのイノベーションの芽が潰されたり海外に流出したりしてきました。
というより、既得権を握った側がリスクを取り社会的責任を果たすよりも楽な目先の権益にしがみ付くことを正当化する為の方便として使われてきたのではないでしょうか。
そして一方で彼らは誰の目にもモノになりそうだと見ると一斉に参入して力任せの過当競争に持ち込んでしまいます。
かくして良いアイデアを生み出すような人はリスクの割に報われない、ベンチャーは殆ど成功しない社会になっているのです。
何故既得権者達がそうした行動を取るかと言えば元々リスクを取らずに目先の利益を優先している以上、既存事業の差別化も困難で利益率も低いので、将来過当競争で疲弊する可能性が高くても少しでも利益になりそうなものを見つけると飛びつくことになるのです。
その結果、常に過当競争に晒されて疲弊し転落の恐怖に怯えているのでますますリスクを取る事に臆病になるという悪循環。
結局の所、先進国を追いかけるキャッチアップ型のシステムから先進国であり続ける為のシステムへの転換ができていないということですね。
今の日本は当面衰退しても構わないので気楽なキャッチアップ型のままでい続けたいと本気で考えているかのようです。
別に保守老人のように日本が世界に冠たる大国になって欲しいとか思っている訳ではありませんが、その道を選択した場合、後退と縮小は歪な形で進行することが避けられません。
気が付いた時には取り返しのつかない多くのものが失われることになるでしょう。
人の歴史は先人の積み上げたものに何がしかを付け加えて次代に引き継いできた歴史であり、それこそが人の命の尊さや人権の存在理由の源泉です。
せめて自分の拠って立つところのものを認識し、人として恥ずかしくない方向性を目指せる社会であって欲しいのです。


コメントを投稿する
メールアドレス(必須):
URL:
コメント:
トラックバック

http://app.blogs.itmedia.co.jp/t/trackback/77444/16882978

トラックバック・ポリシー


» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

吉川 日出行

吉川 日出行

みずほ情報総研勤務。情報共有や情報活用を主テーマにコンサルティングや新ビジネスモデルの開発に携わっている。

詳しいプロフィール

カレンダー
2012年5月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif ストレス社会との付き合い方
政府がメンタルヘルス検査の義務化を検討しています。しかしうつになった後だけではなく、なる前の予防も大切なのではないでしょうか。(5/24)

news094.gif 「思いやり経営」のススメ
産学・NPO連携の民間団体が先頃、「思いやり経営」という観点で評価した指標や企業ランキングを発表した。企業のマネジメント力を知る手立てとして注目されそうだ。(5/24)

news094.gif テレワークが労働者のマインドを変える
テレワークが普及すると、労働者の評価は従来の「時間×生産性」から「成果」へと変化する。時間や場所を自分の裁量でコントロールできる変わりに、成果を最大化するために労働をマネジメントする能力とマインドが労働者には必要になる。(5/23)

news094.gif 求む、クックパッド男子
高身長も高学歴も高収入もいらない。私が男性に求めるのは「料理の腕」だけです。(5/18)

news094.gif 37歳の常識――我々は一生学び続ける
学び続けなければ衰退するのみだ。(5/18)

Special

- PR -

サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ