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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

コミュニティも最初が肝心

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 昨日の続きでネットワークコミュニティの話。
 
 最近いろんなところでイントラネット上へのフォーラムの設置や社内SNSを使ったコミュニティの開設といった話を聞く。そしてその多くのは、あまりうまくいっていないようだ。こうした社内コミュニティの活性策について相談を受けることが結構ある。特に多いのが閑散化したコミュニティを立て直して欲しいというやつである。

 これが結構難しい。まず昨日書いたようにコミュニティには寿命がある。寿命がきたものは正直どうしようもない。基本的には寿命が来たコミュニティを何とかするよりも、別に新しいコミュニティを立ち上げてしまったほうが成功確率が高い。新しい仕組みの導入はメンバーの入れ替えを誘発するので昨日書いたように既存メンバー間でのコミュニケーションに飽きたメンバーを呼び起こすきっかけにもなるからだ。

 まだ寿命の来ていない新しいネットワークコミュニティの場合、開設してどれくらい時間が経っているかがポイントである。私の経験だと人はたいてい3回目までのアクセスでそのコミュニティの評価を決めてしまう。駄目な場とか使えないシステムだとか人がいないコミュニティという烙印を押されたものの評価を改めさせるのはかなり難しい。評価が固まってしまった後になると何かやるコストは、いっそ新しい仕組みにして新たに3回のチャンスを得るコストよりも高くなるし実際難易度も高い。

 やはり新しいコミュニティを立ち上げるときに最も注意すべき事はスタートダッシュである。実はコミュニティの成長というか賑わい方には一定の法則があるらしく、コミュニティの極めて初期の段階での発言数やその伸び率というのがそのコミュニティの将来の発言数の規模を決めてしまうと言われているからだ。これについてはちょっと古い研究だが、長谷川伸也氏の「ネット・コミュニティの成長と進化」という資料(※)にYahoo!掲示板を調査した結果がある。掲示板毎の発言数の順位は初期段階である3期目と成熟段階である12期目でほとんど変らないそうである。
 この資料には他にもいくつか示唆に富む仮説が含まれている。例えばネットワークコミュニティでの発言数の増加は、基本的には先に述べた初期段階での発言数に規定されるのだが、例外もあってそのコミュニティで扱うトピックが広範囲であれば成長過程での成長スピードがあがる可能性があるとかコミュニティには一定割合の常連層と半常連層が必要でゲストばかりではコミュニティは盛り上がらないとか、なんとなくいつも感じている事象だ。

 コミュニティも最初が肝心で最初にきちんと設計をして、場合によっては“さくら”などを使ってでも初期の運営を盛り上げる事が成功の秘訣ということだ。
 
※このようなコミュニティの成長や運営といった内容について定量的に分析や調査を行っている資料は案外少ない。以前「90:9:1の法則」というエントリーの中で、「ネットワーキング・コミュニティ」(1997:池田謙一著)にあったコミュニティ(パソコン通信におけるフォーラム)でのRAMとROMの割合が1:7という数字を紹介したが、もし他にもなにかこうした調査結果があれば是非教えていただきたい。

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