オルタナティブ・ブログ > ナレッジ!?情報共有・・・永遠の課題への挑戦 >

エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

ニコニコ動画は仮想世界における原宿ホコ天なのだろう

»

 相変わらずニコニコ動画が面白くて毎日それなりの時間を閲覧に費やしてしまう。今のところ夜寝る前にとりあえずちょっと見るって感じ(*1)なので私はまだ中毒とまでにはなっていないと思うが、ちょっとやばいかもしれない。w
 なぜニコニコ動画にこんなに凄いエネルギーを感じるのか、ニコニコ動画とは何なのか、ちょっと私自身の過去の経験や知識を総動員して考えてみた。

 今のニコニコ動画の作品とその作者には、収集した画像を面白く紹介する人達、自分で画像(なかにはアニメ)を作ってみる人以外に、やってみた系(歌ってみた、踊ってみた、演奏してみたなど)、MAD動画チーム、キッチン族、ゲームリプレイ班、組曲やRemixの編集組、などいろいろな流派があって多彩だ。それぞれの人達がニコニコ動画という場の中で、自分の得意な事ややりたい事を自由に表現しているのは見ていてとても楽しい。
 
 こういった流れをしてオープンソース現象なんて表する人もいるが、元の素材や題材の利用が合法化&フリーになったわけではないのでオープンソースという呼び方はちょっと誤解を招く恐れもあってふさわしくないと思う(*2)私は今のニコニコ動画は、そこに参加する人達(*3)にとって自分の可能性を試すことができる場になっているのだと思う。たとえて言うなら1980から1990年代にあった原宿ホコ天のバーチャル版というのが一番近い。
 
 原宿ホコ天とは東京の代々木公園近辺の道路の週末歩行者天国のことで、その昔はここでいろいろな路上パフォーマンスが行われていた。週末になるとどこからともなくアマチュアバンドやダンスなどのいろんな集団がこの歩行者天国に押しかけて、おのおのの得意とする特技(芸)を道行く人々に対して披露していた。そしてそこへ参加する目的に大きな共通点があるわけではなく、ある集団は道行く人へのアピール、ある者は自己満足、別の人は仲間とのコミュニケーション、そして一部はそこをきっかけにしたプロデビューと、全然違う目的を持っているのだが、そこへいけば皆がパフォーマンスをし、そしてそこに来る人はそれらのパフォーマンスをこれまた来た人それぞれの思いで楽しむという、まさにパフォーマーとそれを楽しむ観衆の相互コミュニケーションが行える場であった。

 今のニコニコ動画は路上パフォーマンスとして良く行われるバンド系やダンス系とは若干ジャンルが違うが、同じように何かを表現したい人達への場として機能している。さらにホコ天のような現実の場に対してニコニコ動画はバーチャルであるメリットを生かして、時間と空間の制約を外してより自由になっている。週末の昼間という限られた時間に縛られることなくパフォーマーが自分の都合の良い深夜などに自分のパフォーマンスを画像にして登録できるし、見る側としてもウィークディの昼間からいつでもパフォーマンスを見たい時にアクセスが可能だ。場所なんて北海道から九州、はては台湾を始め海外からでも参加が出来る。あとバーチャルなのでスペースの制限が緩く、その結果例えば路上などでは相手にされにくいマイナーな楽器(*4)の演奏なども、ニコニコ動画では別にわざわざ排除する必要がないので遠慮無く参加が許される。
 
 しばらく前にホームページやブログが登場して広く一般化したときに、テキストを使って文章で手軽&気軽に自己表現をする場が生まれ、何人かそれをきっかけにしてジャンプアップを成し遂げた人もでた。今度は動画という媒体になったことで文章を書くだけでなく描くとか演奏するとか編集するといったパフォーマンスする手段が一挙に広がった。ニコニコ動画とその前にあったYouTtubeは、まさにこの場を作りだしたのだ。
 さてしかしよくよく考えてもみるとニコニコ動画以前でもホームページ上で動画を公開することは出来たはずだ。が、ネット上に無数にあるホームページのあちこちでばらばらにパフォーマンスを披露してもそれでは人目につきにくく認知度があがらない。今のニコニコ動画はパフォーマーおよびその観衆に対してランドマークとしての役割も果たしている。あそこにいけばいろんなパフォーマンスが見られるという目印だ。そしてYouTubeとの違いは、動画へのテキストインポーズで観衆にも参加の機会を与えて観衆を集め、さらにそれをパフォーマー側に見せることでニコニコ動画に登録すればいろんな人に見てもらえるということをわかりやすく示したことにある。
 
 今後さらにニコニコ動画のパフォーマーの集う場としての認知度や成熟度が増すと、野球における甲子園、オタクにとってのコミケのようなポジションになると予想する。「今度ニコニコに進出します」だとか「ニコニコデビューを目指します」なんて言葉が聞かれ始めたらそうなった証拠だろう。そしてこれも原宿ホコ天に例えた理由の一つなのだが、当時のあそこの観衆にはスカウトなどの業界関係者もいて実際にそこからメジャーデビューしたバンドがいくつかあったように、将来はここからメジャーになる人も出てくるはずだ。

 現実世界の場でイザコザが起きたようにニコニコ動画でもそれぞれの縄張り争いがあったり境界線ではお互いを非難・攻撃するある意味抗争のようなことも若干起きているようだ。そういった過程の中で参加者同士で最低限のやってはいけないことや暗黙の了解等に関する一定の運営のルールも形成していくような自治的な動き(*5)も起きつつある。仮想世界とはいえ自分たちの心地よい場をなんとか今後も維持しようという意思がそういう力の源泉になっているのは、現実世界でこうした場が成長していく時にもしばしば見られる。人々のこうした反応は仮想/現実を問わず良い場には自然と起きるもののようだ。

 さて原宿ホコ天は、近所からの騒音迷惑の苦情やあまりにも素人化した為に初期のコアなメンバーから愛想を尽かされたりもして、結局1998年には閉鎖されてしまった。ある特定の人にとって住み心地の良い場も他の人から見たらそうではなかったり、時間の経過と共に参加者の意識や思いも変質していく。しかしその後もこうしたエネルギーや財産は、今の各所の駅前や代々木公園などでのストリートパフォーマンスに引き継がれている。
 
 ニコニコ動画もいつかは閉鎖されたり廃れるかもしれない。でも一度こういう場の存在とその価値を知ってしまったからにはたぶんどこかに次の受け皿が出来るだろう。もはやこの流れを止めることは困難だろう。

(*1)つい世が明けそうな時間まで見てしまい、最近寝不足であるw
(*2)ニコニコ動画で行われているオープンソース現象 組曲『ニコニコ動画』」参照 但しニコニコのコミュニティには一種のオープンソース的な雰囲気があるのは私も認める
(*3)特に若くてエネルギーの有り余った世代の人が多い
(*4)よく見るのはリコーダー、管弦楽のソロ演奏、最近だと篠笛や箏などの和楽器も仲間にして良いと思われ
(*5)丸上げ、高画質、高音質に対する非難など

===2007/9/4 PM追記

 本文に書いたようなメジャーデビューではないが、若干似た動きを見つけたので追記

Comment(4)