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ライフサイクル曲線 -プロダクトマーケティングの基本ー

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 先週、「うちのマーケは駄目だ」で考える「プロダクトマーケティングを基本に忠実に実践しろ」で、華やかで奇抜なマーケティングプランを考える前に、まずは基本に忠実になるべきだと書いた。 今回は、プロダクトマーケティングの基本「製品ライフサイクル戦略」のライフサイクル曲線について簡単に紹介する。

 この曲線の上に、各製品を置き、それぞれのポジションで行うべき基本マーケティングActivity(次回紹介)をガイドラインとして実際の戦略を検討するのである。

Lifcycle_curve  左の図がプロダクトライフサイクルの曲線だ。縦軸は製品の売上で、横軸は時間経過となっている。 この縦軸に関しては、マーケットポテンシャル(市場の大きさ)と関連付ては”ならない”。 とにかく、現在までの製品の売上推移のみを見る。

<導入期>

 製品は、新しく出荷されると、たまたまその製品の情報を目にした顧客のうち「他人が買っているかどうかは別として、とにかく、いいものを買う」「新しいものでも挑戦する」というマインドが強い企業(アーリーアダプター、イノベーターなどと呼ぶ)が購入し始める。

 利益を上回るマーケティング投資が必要な時期であるため、この期間を短縮して、早く成長期にもって行くための戦略がマーケティング・マネージャーには求められる。

 この導入期から成長曲線に移るタイミングを「キャズム」とか「幸島の猿」と言う。

幸島の猿:ある一匹の猿が海に落としたイモを拾って、海の水を落とすために擦ってから食べたら癖になり、毎回、イモを海で洗って食べるようになった。それを見ていた他の猿たちは「馬鹿なことをやっている」という目で見ていた。 まもなく、

新しいことをすることが好きな他の2匹目の猿がそれを真似るようになり、それから、しばらくして3匹目の猿がイモを洗うようになる。 数%の猿が同じようにイモを洗うようになったときに、一気にほぼ全ての猿がイモを洗うようになった。 さらに、島から遠く離れた高崎山の猿までがイモを洗い始めた。という、臨界点を越えると一気に広まる現象

<成長期>

 あるタイミングから、製品の売上が急速に拡大する。  成長の曲線を継続的に維持、拡大させ、少しでも長くこの時期を謳歌できるようなマーケティング施策をとる。(どんな施策をとるかは来週、このブログで紹介する)

 この時期、チャネル(Web、販売店、開発会社)拡大による成長維持に注力するとともに、多くの競合会社(コンペ)が参入してくるため、差別化戦略や囲い込み戦略も重要となってくる。

 典型的なマーケティング効果が最も期待できるのがこの時期であり、マーケティング投資(Expense)金額は大きいが利益も大きいため思い切った施策を打てる。 ここで戦略を誤ると、成長曲線がなだらかになってしまったり、大きく成長しないうちに成熟期に入ってしまったりする。

<成熟期>

 ビジネスは徐々に新規購入からメンテナンス(維持サポート、買い替え、アップグレード)に移っていく。 売上の伸びは鈍化し低成長となるが、逆の見方をすると堅調に売上を伸ばし、利益を確保しながら、製品を新しい成長マーケットにポジショニングしなおすことを検討する。

 この時期に、成長期と同じことをしていては、成熟期に得られるはずの大きな利益を失うことになる。 非常にバランスが要求され、マーケティング職の中でもMMが重要な役割を果たす。

 新規顧客開拓に力を入れると無駄が多いため、既存顧客のニーズ、課題、問題などに耳を傾けて製品開発、サポート、マーケティングを実施する。

 一度、成熟期に入ってしまったら、マーケティング・マネージャーは、顧客の維持、満足度向上、関連製品の販売によるインナーシェア向上などを行い、堅調な成長曲線を少しでも長く維持することに腐心する。 急激に売上を伸ばす曲線にのせることは、リポジショングしないかぎり難しく、無理にその年の売上を拡大させても、実は、翌年売れるはずだったものを先食いしているだけであり、翌年には売上が大きく落ちることになる。

<衰退期>

 ブランドマネージャーや多くの営業部長は信じたくないだろうが、どんな商品も衰退期はやってくる。 マーケティングマネージャーの手腕一つで、衰退期が100年しても来ない場合もあるし、数ヶ月でやってくる場合もある。

 衰退期に入ったら、投資を縮小、合理化、チャネルの絞込みを行い、製品のリポジショニング(新しいマーケット、価値の商品として市場に出しなおす)を図る。そして、もう一度、導入期に戻して、再度成長曲線にのせるのだ。

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 注意しなくてはならないのは、マーケットの大きさや、営業的な思い(これから成長期にはいるはずだ、、、など)をいれずに、実際の売上の近似曲線を使って、それぞれの製品がどこにいるのかを見極めることが重要だ。

 これを守らないと、衰退期に入った製品はなく、みな、成長期の少し手前にポジションしてしまう。 そうなってしまうと、無駄な(効果の薄い)マーケティング戦略を作ることになってしまう。

 以前、IBM社内のある営業部長たち向けに、この曲線を使った戦略立案のワークショップを開いたが、ある営業部長から「衰退期だなんて、縁起が悪いから、やめるべきだ」との意見が出た。 しかし、これは精神論ではなく効果的なマーケティング&営業戦略には重要なことである。

 皆様も、まずは、この曲線のどこに自分がマーケティング、営業する担当製品を置いて欲しい。

 次回は、それぞれのポジションの製品に対して、どのような戦略を打つべきなのか、その基本を紹介する。 ライフサイクル別戦略<導入期> -プロダクトマーケティングの基本2ー

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