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会社の看板を取り払ったとき自分には何が残るのか?

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私は、新卒で、日本IBMに入社し、営業としてそれなりの成果をあげてきました。いま思えば、ブラック企業と言うにふさわしい働きぶりで、平日は終電前に帰ることなく、土日もどちらかは出社するという状況でした。

やらされていたわけではありません。結果もついてきましたし、難しい案件にチャレンジする醍醐味も味わっていたので、まさに「のめり込む」というような感覚でしょうか。いまの若い人の感覚で言えば、オンラインゲームに没入するように、営業という仕事(?)に没入していたわけです。

元々、サラリーマンなんて性に合わないし、さっさと辞めるつもりで、日本IBMに入社したのですが、やり甲斐も感じ楽しくもあり、辞めることができませんでした。何度か辞めようとも思いましたが、「いま辞めたら負け」、「忙しさから逃げるようなことはしたくない」というようなことを、自分に言い訳をして、結果として、13年を過ごしました。

いろいろとあって、36歳の時に日本IBMを退職したわけですが、私は、希望に満ちていました。営業として、それなりの成績を残し、自分の実力に自信がありましたから、独立してもやっていけると思っていたからです。しかし、この希望はあっさりと打ち砕かれました。

独立して最初にした仕事は、アウトドアショップです。退職金を資本に、趣味として楽しんでいたアウトドアを仕事にしたわけです。当然、ツテもなく、小売商売の勘もなく、趣味の延長線上に品揃えして、お店に並べるだけでした。

最初はそれも楽しかったのですが、そんなことで商売がなり立つわけはありません。来客はまばらでしたし、物珍しさで立ち寄る人はあっても、買いたいものはなく、売上も上がりませんでした。

あるとき店の看板を作ってもらうために近所の看板屋さんに仕事を頼みました。看板屋のオヤジさんが、軽トラックに塗料やら看板の材料を積み込んでやって来て、ペンキまみれの作業服で、汗を流しながら手際よく仕事をしてくれました。素晴らしい看板が仕上がり、こんな安くていいのかと思うくらいで、こちらとしては大満足でした。

しばらくして、高級グレードのメルセデスに乗って、オシャレな中年の男性が、店にやって来ました。「斎藤さん、調子はどうですか?」なんて気楽に声を掛けてきました。最初は分からなかったのですが、あのペンキまみれの看板屋のオヤジさんでした。

アウトドアショップの仕事の傍ら、これだけではなかなか収入も得られないので、アウトドア雑誌の原稿を書いていました。その編集部に出入りしていたのですが、みんな楽しそうに活き活きと仕事をしていました。あるとき、いつもの編集部員がいませんでした。「〇〇さんは?」と聞くと、「奥さんとカナダにカヌー、2ヶ月ほどは帰ってこないと思うよ」とのこと。そんなことで、生活できるのだろうかと、余計な心配をしてしまいました。

私は、大企業(日本IBM)のサラリーマンだったわけで、会社の仕事を日々、人並み以上にこなしていることが誇りでした。結果も出していたから自信もあって、これは自分の実力だと思っていました。自分でこのようなことは言いませんでしたが、世間で言う「エリート・サラリーマン」だと、内心思っていたわけです。そんな実力ある自分が始めた仕事だからうまくいかないわけはないと思っていました。しかし、思惑通りにはいかなかったわけです。

一方で、看板屋のオヤジさんにしろ、編集部員にしろ、私の常識からすれば、「非常識」あるは、「正しくない」生き方をしているのに、大いに人生を楽しんでいます。自分の中に刻み込まれていた「常識的価値観」がぶち壊されました。

また、「元IBM」も通用しませんでした。それはそうでしょう、まったく業界も違うわけですから。そんな経験を重ね、自分の実力だと疑わなかったことが、実は会社の看板で結果をあげていたわけで、自分の実力なんてなかったことも思い知らされました。

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仏教の言葉に「虚仮(こけ)」があります。「真実に反しいつわりであること」あるいは「からっぽで実体が無いこと」です。「こけにする=バカにする」などは、ここから来ているわけです。「バカこけ」とか、「こけおどし(虚仮威し)」などという言葉もここから来ています。

自分の成し遂げた実績、会社の看板、部長や課長といった肩書きなどは、いずれも「こけ」なわけで、私たちはそんな「こけ」をまとって生きているし、それを生きるよりどころとしているわけです。しかし、その「こけ」を全て落としたときに一体自分には何が残るのでしょうか。もっと極端なことを考えれば、家も家族も親戚も仲間も全て無くしたとき、そこに残る自分は、一体何者なのでしょうか。

転職や独立を考える人もいらっしゃるでしょう。その足を引っ張るつもりはありません。ただ、勢いでだけではなく、冷静に自分のことを振り返り、「こけ」を落とした自分を見つめてみてもいいかもしれませんね。

【募集開始】次期・ITソリューション塾・第44

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次期・ITソリューション塾・第442023104日[水]開講)の募集を始めました。

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ITに関わる仕事をしているならば、このような変化の本質を正しく理解し、自分たちのビジネスに、あるいは、お客様の事業活動に、どのように使っていけばいいのかを語れなくてはなりません。

ITソリューション塾は、そんなITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えすることに留まらず、その背景や本質、ビジネスとの関係をわかりやすく解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー

日々の暮らしは?買物、病院、学校は?気になることを八ヶ岳暮らしの人に聞いてみよう!

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ヤツクル/TMR主催

  • 日時:2023年10月7日(土) 10:00〜12:00(Q&Aを含む)
  • 会場:8MATO&オンライン
  • 内容:「失敗しない八ヶ岳移住。まずはここから始めよう」
    • なんて素敵な八ヶ岳暮らし!でも注意すべき点も
    • 後悔する失敗移住の「あるある」
    • 後悔しない八ヶ岳暮らしのために
    • 八ヶ岳移住者対談「ここがツラいよ!八ヶ岳暮らし」
      • モデレーター:合同会社TMR代表 玉利裕重(たまさん)
      • 対談登壇者:八ヶ岳移住者(調整中)

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神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

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