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やるべきことは、分かっているはずだ

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「若い連中には話しているのですが、現場は動こうとしてくれません。意識が低いのでしょうか。いくら話をしても危機感を持ってくれません。どうすれば、彼らを変えてゆくことができるでしょうか。」

経営者や幹部の皆さんを相手にした講演や研修で、こんなご質問を頂くことがある。しかし、この質問をされる当人の意識はいかがなものかと考えることがある。私は次のように答えている。

「業績評価の基準を変え、組織を作り替えることではないでしょうか。一律、売上や利益を業績評価の最優先基準にしているとすれば、もはや時代遅れです。業績が伸びている時代の組織体制をそのままに、事業改革を現場の自助努力に委ねてはいないでしょうか。」

経営者や幹部がやるべきことは、自分たちの未来について明確なビジョンを示すことだ。それを実現するために業績評価の基準を変え、組織や体制を作り変えることだろう。まずはカタチからはじめよ!である。

それができるのは経営者しかいない。言葉で危機感を煽るのではなく、カタチを作り、それに従えば自分も評価されるということを体現させることで、現場が自律的に動く仕組みを作ることが経営者の仕事ではないかと思う。そんな自分の役割を棚に上げ、現場の自助努力に頼っているとすれば、経営者や経営幹部は猛省すべきだろう。

だからと言って、そういうことができない経営者や幹部を評論家のように批判し、自分は何も行動しないというのもどうかと思う。自分でできないことは棚上げするしかないが、与えられた自分の職責の中で、知恵や工夫を凝らして業績目標を達成するための努力を怠るべきではない。

テクノロジーの意味やお客様の事業にもたらす価値を理解し、それをわかりやすく伝えることは経営者に頼る必要はない。知恵ある人たちと交流して新しい知恵や気付きを手にすることもできるはずだ。

テクノロジーは多様化し、その適用範囲も広範に及ぶようになった。新しい知識は会社だけで学ぶことはできず独学で学ばなくてはならない。自社だけではできないことは増え、専門スキルを持った企業とのパートナーシップがなければ、お客様のニーズを満たすことはできない。そのための人脈作りに取り組んでいるだろうか。社外のコミュニティや勉強会で新しい知識や気付きを得ること、そして新しい人のつながりを積極的に創り出しているだろうか。本は読んでいるだろうか。このようなことは、経営者に頼る話しではない。

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「企業は人手不足で頭を抱えているのに、社会には失業者があふれている」

"東ロボくん"プロジェクトを主導した国立情報学研究所の新井紀子教授が、自著「AI vs. 教科書が読めない子どもたち(東洋経済新報社・2018)」のなかで、こんな未来を語っている。

「せっかく新しい産業が起こっても、その担い手となる、AIにはできない仕事ができる人材が不足するため、新しい産業は経済成長のエンジンとはならない。一方、AIで仕事を失った人は、誰にでもできる低賃金の仕事に就職するか、失業するかの二者択一を迫られる。」

新井教授は、その先には「AI恐慌」とも呼ぶべき事態が起こると述べている。

「AI恐慌」が起こるかどうかはともかくとしても、人材の選別淘汰が進んでゆくことは間違えない。IT業界であれば、パターンの決まったシステム・テストや運用管理、与えられた機能を実現するプログラミングなどの"知的力仕事"は、早晩人間がやるよりも機械にやらせた方が、コスト・パフォーマンスは高くなるだろう。既にインフラの構築や運用は、AIに頼らなくてもクラウドや自動化ツールに頼った方が、生産性が高い時代となっている。

一方で、ビジネスのデジタル化が進めばシステムの開発テーマは劇的に拡大する。処理すべきデータ量も指数関数的に増えてゆく。この状況に対応するためには、AIや自動化に頼らなくてはならない。

人間は、何をするかのテーマを設定し、どのようにAIや自動化の仕組みを駆使すれば、この状況に対応できるかを考えなくてはならない。また、どのようにデジタル・テクノロジーを駆使すれば、ビジネスの付加価値を高め、競争優位を実現できるかを考える人材もこれまでにも増して求められるようになる。

スマホが世の中に登場して10年、ビジネスの常識は大きく変わった。たぶん来たるべき10年で、テクノロジーはもっと大きな変化を社会に強いるだろう。私たちは、そこから逃れることはできない。ならば、やるべきことは、分かっているはずだ。

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