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■ アタッチメントを削って、保険治療の総入れ歯を作った症例

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「あの入れ歯は、もうなくなりました」
とおっしゃるのは80代女性のRさん。

Rさんは前から上の総入れ歯が合わないのを気にしていました。
しかし、入れ歯が歯グキと接する面を全面貼りかえるとか新しく入れ歯を作り直すとか、根本的な治療になかなか踏み切れずにいました。

なぜなら、アタッチメント義歯という高額な自費治療の特殊な構造を持つ入れ歯だったからです。

アタッチメント義歯は、一般的な部分入れ歯とは構造が違います。
通常の部分入れ歯では「クラスプ」と呼ばれるバネのような金具を残っている歯にかけて入れ歯を支えます。
アタッチメント義歯はそのクラスプの代わりに、歯と入れ歯の双方に特殊な連結装置を組み込み、これによって入れ歯を維持していきます。

特殊な構造なだけに、私が大がかりな治療をするとアタッチメントが合わなくなる可能性があります。
我慢すれば何とか使えていた入れ歯が、歯科医が余計なことをしたせいで口の中に入れておくことすら出来なくなってしまった ......。
最悪の場合そんなことも起こります。

通常の入れ歯を新しく作ろうにも口の中に3本残っている歯の根に埋め込まれた金属製アタッチメントの構造物が邪魔で、型とりもまともにできません。

高額な自費治療とは、何でも叶う夢の治療法なんかじゃありません。
後々のことを考えると本当に患者さん泣かせ、歯科医泣かせの迷惑な入れ歯が多いのが現実です。

強い違和感を抱えていたRさんは外出時だけ着けていました。
これまで当院に来ても微調整だけで凌いできたのですが結局は使えるようにならず、はずしたままの状態が続いています。

ところが日常でまったく使わなくなったら、いつのまにか紛失してしまいました。

そうなると今回の治療方針は明確です。
入れ歯を新しく作る以外に手がありません。

そうと決まったら口の中のアタッチメントなど不要です。
思い切り削って、入れ歯作製の邪魔にならないようにしました。

邪魔なアタッチメントさえなければ、保険治療の通常の手順で苦もなく作れる総入れ歯です。

新しい入れ歯を装着してもらうと「あっ、これなら違和感なく使えます!」Rさんは笑顔で答えてくださいました。

西荻窪 いとう歯科医院 ホームページhttps://www.ireba-ito.com

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