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商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

海外旅行・出張危険回避講座 (一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その23 汁掛け泥棒

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海外旅行・出張危険回避講座
(一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その23 
汁掛け泥棒

古典的な犯罪手口で、欧州を頻繁に旅する人は、一度や二度は経験している人が多い。


この手口は、知っていると最悪の事態にならずに防ぐことができる。だからこそ、ぜひとも一読しておいて欲しい。

 

イタリア・ローマの中央駅から、近くのホテルに向かって歩いていたら、後ろから私の肩をコンコンと叩く人がいた。
 見ると、一人のおじさんが、私の背中を指さしている。
「あれっ」と思い、背中に左手を回すと、背広の真ん中に、ハンバーガーの汁が付けられていた。
「わー」と思ったが、私はこのインチキを知っていた。肩を叩いた男は、可哀想にという顔をして、横に立っていたが、この男が、スリで詐欺師なんだ。私はあわてて、手を振って、あっちに行けという顔をして、通りの端に行き、周りにだれもいないところで、上着を脱いで、自分のハンカチを取り出して、汁を拭った。
 この犯罪の手口は簡単で、分業となっている。一人が通りで、観光客か、あか抜けしていない私のような外国人を探す。後ろから、紙袋に手を入れて、その中の広口瓶にスプーンを入れて、迫って、スプーン一杯の汁を服の背中の真ん中にぶっかけるか、ぶっ飛ばす。
 そして、どんどん先に行ってしまう。もう一人が、背中に掛けられて印が付いている犠牲者の後ろから近づき、肩をコンコンと叩く。背中の異変を教えるのだ。
 被害者が驚いて、服を脱ごうとすれば、親切にも、その男は自分のハンカチを取り出して貸してくれる。
「これを使いなさい」と、服を脱ぐのを親切にも助けてくれる。さらに被害者が、ハンカチで、汚れをぬぐい取る間、服を支えていてくれるのだ。
 ただし、その間に、服の胸の内側の財布を抜き取っていってくれる。

 これだけだ。この詐欺師は、もうこの家業を何十年も続けていて、観光客を食い物にしているのだろうが、ヨーロッパではあまりに有名な犯行であるが、犯行の現場が自分の背中であることから、犯行を防ぐことも、捕まえることも難しい。

 肩をコンコン叩いた男に食ってかかることも、警察に突き出すこともできない。彼は汁を持っていないのだから。
 この犯行では、捕まる危険が分散されていて、安全に、簡単にスリができるようになっている。うまく考えてある犯行だ。
 これはもう古典的犯罪である。今も続けられているはず。外国人を狙いやすいから、被害に遭った日本人も非常に多い。犯行の手口を知っていれば、どうってことはない。

 ハンバーグの汁、スパゲッティのトマトの汁、クリームのホイップなどが使われることもある。商社マンですら、何人か被害に遭って、財布とパスポートを盗られているから侮れない。

 この犯行は英国でも、フランスでも起こっている。20年ほど前に、日本でも発生した。

 私も汁は、二度掛けられている。
 まったく別の場所で、服を汚される被害に逢った。
 スペイン・バルセロナの町を、家族(大人二人、子供3人)で歩いていた時のことだ。天気も気分も良くて、のどかな観光客をしていた。
 突然、背中に軽い衝動を受けた。
「あれっ」と、背中に手を回すと、クリームが付いていた。ふっと前を見ると、紙袋を持った禿げてやせている男が歩いている。
「あいつがやったに違いない」
その男を追いかけた。男は左手に大きな紙袋を持っている。あの中にクリームが入っているのだろうと思ったが、彼が背中に掛けるところを見たわけではない。私が後ろから迫って歩いていくと、その男はどんどん早足になって、左に曲がってしまった。声を掛けるわけにはいかなかった。
「どうしたの」と、後ろからヨメサンが来て、私の背広の背中を見ながら、「ああ、ひどい。一人でさっさと行くからよ」と、言ったが、そのヨメサンの背中にもクリームが付けられていて、ヨメサンは半泣きになっていた。
 それ以降は、家族で町を歩く時には、私とヨメサンの後ろに、それぞれ子供を歩かせて、
「大丈夫か?」と子供に後ろも見ないで声を掛け、
「大丈夫で~す」と確認させることにした。

 
ポイント 
(1)スペイン、イタリヤ、フランスでは、後ろから接近してくる人にも注意。
(2)特に両手にカバンなどを持っている旅行者が狙われる。カバンを持ったまま追いかけられないからだ。
(3)被害に遭っても、絶対に誰の助けも得てはならない。


アイデアマラソン一口メモ
ノートに、毎日、自分の思考を書き始めたのは1984年1月だった。すでに28年経過している。この間の、仕事も、家族も、自分の生きがいも、出版してきた膨大な数の本もすべて、アイデアマラソンのノートに書いてきている。
 すでに403冊になったA5のファイルノート、何冊書けるだろうか。エジソンは、生涯に5000冊のノートを残しているという。エジソンの発明の秘密が彼のノート術にあることは間違いない。

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最新刊のアイデアマラソンの本
「仕事ができる人のノート術」(東洋経済新報社)
一読すればあなたも、毎日発想を残すことができる。それがあなたの財産だ。

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