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商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

現実的知恵 エアコンのピークカットと「ニゴキル運動」の提案

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現実的知恵 エアコンのピークカットと  「ニゴキル運動」の提案
 私は人生で20年近く海外で家族と一緒に生活した。
アフリカ・ナイジェリアのラゴス3年半、
中近東・サウジアラビアのリヤド8年半、
東南アジア・ベトナムのハノイ2年、
南西アジア・ネパールのカトマンドゥ4年半


すべての国で、共通していたのは、水と電気の問題だった。(ただし、サウジアラビアは、滞在4年ほどで、最新鋭の水道と電力供給になり、まったく問題はなくなった)

水道はどこも酷かった。まともに水が飲めるところはなかった。ポタポタと落ちる水を煮沸して、素焼きの釜でろ過して飲んでいたラゴス。

2週間に1度ていどしか水道が出なかった滞在初期のサウジアラビア。
水道のシステムが古くて汚染の進んでいたハノイとカトマンドゥ。カトマンドゥの水道は特にひどかった。臭い水が出ていた。口に含んでもいけないとお客に注意していた。

思い出せば、毎日の生活の中で飲み水の手配やミネラルウォーターの購入などが大切な仕事だった。

電気も、似たり寄ったりで、サウジアラビア滞在の後半を除けば、どこでも停電だらけだった。
ナイジェリアでは、熱帯で超高湿で、寝ていると、体中から汗が噴き出た。

超高温のサウジアラビアでの停電は、乾燥しているとは言え想像できないほど暑かった。気温が体温より熱く、家の壁に手を当てると、暖かかった。
一週間ほど留守にして、自宅に戻ると、居間のテーブルの上のロウソクが溶けて流れていた。
外に停めている車は、車内が日中104度まであがった。実際に生卵を車内においていたら、温泉卵になっていたほどだ。
サウジアラビアでは、停電は、いつも突然だった。昼間は事務所が停電で、夜は家が停電という悲劇的なこともあって、電池、灯油のランプ、ロウソクなどの用意は常識だった。

カトマンドゥでは、水力発電所の電気に頼っていた。土砂がすぐに溜まってしまうので、ダム式の発電所が作れず、川の流れの高低を利用した流水式の発電所しか作れず、冬の乾季に川の流れが細ると、発電ができなくなり、計画停電が続く。
曜日ごとに、地区を区切って時間的停電となる。週に2回ほどは、半日は停電となる。我が家では、その間は、自家発電で過ごしていたが、大部分の家では、電気の戻ってくるのを待つだけだった。

小さな交換機のついている事務所の電話は、車のバッテリーなどでサポートしなければ、使えなくなる。
これは日本でも言える。今の日本の家庭でのコードレス電話では、停電になれば母機の電源が切れるので、電話は使えなくなるはず。

このような状況からみて、現在の東京電力の7月初旬までの配電の努力は、すごい。原発の発電量を含めず、ここまでよく頑張っているとつくづく感心している。巨大な揚水発電所を毎日動かしたり、ガスタービンの発電所もきめ細やかに動かしている。

もちろん、企業や工場の並々ならぬ努力があるのも、家庭での努力もすごい。これだけ市民も協力的なのも、世界に例は少ないのでは。だけど、ピーク時の東電の緊張感は想像を絶するほどだと思う。


しかし、このまま真夏に入って行くと、間違いなく東電の発電の余力を超えることも起こるだろう。それを防ぐために、午後の一番暑い時間帯での、一般家庭でのエアコンを一斉に停止することを提案したい。例えば2時から5時までの3時間のエアコンを停止するだけで、ピークカットできて、供給はより安定化する。これを「ニゴキル運動」と呼ぶ。


電力供給で絶対量不足で、電圧が下がり、突然の大停電になった場合は、精密機器やデスクトップのパソコンなど、様々な分野と機器でトラブルが発生する。もとも子もなくなる。外国人は日本を逃げ出すだろう。観光客も来なくなる。

サウジアラビアでは、強烈に暑い午後は昼寝の時間だった。家にいるなら、昼寝をしよう。できるものなら、事務所でもピーク時に、エアコンを停止して、窓を開けて半時間ほどの昼寝時間を作り、勤務時間を早めたり、遅くすれば、仕事の効率が上がることもある。


今日も暑かった。私はものは試しに、2時から5時まで、自宅のエアコンを切ってみた。好きな熱いお茶を飲んだ時は汗が出たが、他は扇風機で、十分だった。昔を思い出した。肌はべとべとしても、老廃物が出ていくことが良く分かる。そして、5時を過ぎたら、適当にエアコンが入る。これで何が悪い。

私たちは、自宅で、「ニゴキル運動」(2時―5時に自宅のエアコンを切る運動)を起こそう。使いすぎて大停電となると、電気が戻るまでには、相当時間がかかり、冷蔵庫も危うい。すべてのビジネスが止まる。市民のエアコンだけでかなり解決できるなら、簡単な気もする。「ニゴキル運動は」"ニゴ切ろう"という風に活用する。

昔はエアコンが無くて、確かに暑かった。特に京都は暑かった。1964年の受験時代、マジに「エアコンがあったら、東大でもハーバードでも持ってこい」という気分だった。だけど、エアコンがそろった今、大事なのはエアコンだけではないということが分かった。信念の方が、もっと大切だ。エアコンでピークカットできるなら、やるべきだろう。夜寝る前の涼しさがあれば、起きている間は我慢が出来るというのが、私の昔の体験だった。日本の国会ですら、たまには「ニゴキル運動」を実践して体感して欲しい。


その分の電気を、製造業に供給して欲しい。必要な避難所や病院、学校、図書館に供給して欲しい。もちろん、病人、老人、幼児、妊産婦などのいるところ、窓の開けられない事業所など、やむをえない場所は、例外だ。エアコンを使うべし。受験生も温度設定を上げて、エアコンを使ってがんばって欲しい。昔の海外での停電時には、汗を一杯かくと、汗が老廃物を身体から運び出してくれるんだとやせ我慢をはっていた。


サウジアラビアの停電で、信じられないほど暑くて、何回も、私が一晩寝られない横でも、いつも堂々と寝ていたのはうちのヨメサンだ。このど根性、一度も、生活のパターンを変えたことはない。完全に負けた。

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