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商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

日本復興の中で 日本に残った外国人たちに感謝

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復興日本の中で 日本に残った外国人たちに感謝

 私は家族一緒に海外に約20年生活した。

 かなりきつい国々に滞在した。アフリカ、中近東、東南アジア、南西アジアの駐在では、クーデターやら、暴動の発生やら、王室内の虐殺事件やら、何度も大きな事件があった時、すぐに考えたのは、その国を脱出するかどうかだった。

 少なくとも、家族は先に帰国させようと考えたこともある。駐在していた国の事務所の駐在員家族が集まって、緊急の場合には、まず家族が出国できるように切符と現金を揃えておくようにと、事務所長が指示を出した時もあった。

 それでも私たちの場合は、何とか、その国に踏みとどまった。その時に、感じていた。あの時に、家族や私たち日本人駐在員がおっとり刀で、出国していたら、事務所に残った現地の人の幹部や所員、そして取引先の友人たちは、私たちをどのように見ていただろうかと思いだす。

 今回の大震災でも、多くの外国人が出国した。今、どんどん帰国してきている。もちろんそれらの外国人をとやかく絶対に言ってはならないと思う。それ以上に、多くの外国人たちが東京にも、多分、被災を受けた地域にも、震災後、余震を感じながら、今日まで滞在したはずだ。

 これらの外国人たちは、きっと出国しようかどうかと、悩んで考えたかもしれない。もちろん仕事もあったろうが、出国しようと思えばできた人も多かったはずだ。毎日のたくさんの余震を思い出してほしい。

 私のような日本人でも、大震災後、10件以上、海外の友人たちが、「健夫、日本は大丈夫か?いつでも、こちらに来ても良いよ」「早くこっちに家族で、来ないか。心配して待っているよ」というメールを受け取った。ヨメサンも受け取った。

 その都度、「大丈夫。みんな元気だよ。問題ないよ。心配してくれてありがとう」と、メールの返事を入れていた。

 多分、日本に住む外国人たちは、私達日本人よりも入ってくる情報が少なく、毎日、余震を感じて、恐怖に震えていたと思う。私達よりももっと、もっと心配したはずだ。それは当然だ。それでも多くの外国人たちが、日本に踏みとどまっていた。一人一人が、私たちの10倍も、20倍もの心配の問い合わせを、故国から受け取っていたはずだ。

「何をしているのだ。すぐに帰国しなさい」という心配している両親や家族の強い要請もあっただろう。これら残った外国人たちは、
「大丈夫だ。日本は問題はない」と、何度も、何度も言い続けてくれたはずだ。これらの外国人たちは、日本の無事と復興を信じて、私たちと一緒に滞在してくれたのだ。日本の無事を伝える貴重で、極めて有効なスポークスマンだったと言える。

 今後も、常に海外に向けて、日本の政府高官はもちろん、私たち日本人みんなが「日本は安全です。どうぞ、日本に観光に、会議に来てください」と言っても、信じてもらえないかもしれないが、この大変な時期を日本に過ごした外国人たちの「大丈夫」は、強烈な影響力と説得力を持っている。頼りにできるのは、彼ら外国人の意見の口コミであり、すごく大切だと思う。彼らの日本を支え、世界に訴えるパワーとバリューは、非常に大きい。

 西日本に滞在していた外国人も、日本の大丈夫を伝えてくれていたはずだ。海外から見れば、いかに日本が小さな国で、隣の町が壊滅的になっているように見えるものだ。

 このような大災害の状態を、ジョークネタにしたり、ふざけている外国のメディアと較べると、日本に残った外国人たちは、涙が出るほど大切な存在だった。

 この4月、まだ私たちの気分が非常に暗かった時に、通りをジョギングしている外国人たちを見ると、すごく元気をもらった。いつも通りに生活している外国人を見ていて、勇気をもらった。うれしかった。私は外国人たち全員に感謝の気持ちを持って良いと思う。

 まだ早いが、福島の問題をコントロールできるようになった時点で、政府がこの辛い時期を日本に滞在した外国人たちに、感謝の意を表することもあってよいのではないだろうか。

 まだ、早い。まだまだ早いが、しかるべき時に、日本の一番きつい時期を、私達と一緒に、精神的に支えてくれた外国人たちに、感謝の手紙でも、記念のバッジでも、渡してもよいのでは。成田で出国の時に、政府からの感謝を示す小さな手紙はどうだろうか。

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