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面白いものが、広まるとは限らない

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 先日、Willviiという口コミマーケティングを得意とするPR会社のイベントに参加した。テーマはDLNAソリューションプラットフォームのTwonkyについてである。

 今さらDLNAかよ!という声が聞こえてきそうだ。その気持ちはわかる。なぜなら、今までにDLNAという言葉に、何度も裏切られてきた人も多いと思うからだ。僕自身も例外ではない。しかし、DLNAを巡る環境は変わりつつある。特にTwonkという製品は、DLNAの非互換性の元凶となる要素を排除する機能が多数盛り込まれている上、インターネットサービスとDLNA対応機器の間をうまくエンゲージメントする機能さえ備えている。

 と、その前にモノフェローズについても書いておこう。これは、いろいろな製品に関して感想を書いているブロガー向けに、様々な商品を貸し出すというサービスだ。レビューを書いても報酬はない。しかし、様々な製品に触れ、モノを見るための目を養ったり、新しいもの好きにとっては最新製品に触れることができるという利点もある。

 “モノフェローズ”というユニークな試みについて知ったのは、この仕組みを運営しているWillviiの創業者である塚崎氏から、新規事業を始めたという連絡を頂いたのがきっかけだった。塚崎氏との出会いや関係を深めた経緯は、とてもユニークで興味深いものだが、ここでは本題ではないため、別の機会に話すことにしたい。
 しかし、ここで塚崎氏がやろうとしている事(モノフェローズ)の本質は、自分の考え方ととても近いものだと感じられたことが、今回、イベントに参加した大きなモチベーションになっている。

 その考え方とは、何か買い物をする際に、自分たち自身で自身を持って製品を選ぶ、あるいは友人や同僚から相談された時にハッキリとこれが良いと断言できる。そんな情報を与えることができれば、良い製品は自発的にたくさん売れ、悪い製品は駆逐されてより良い製品への改良を求められるという当然のサイクルを生むことができる、というものだ。
 インターネットには多くの噂が満ちている。しかし、ライバル製品を含め、複数の製品を実際に利用できる環境で評価し、比較を行うには、比較対象となる多くの“リファレンス”が必要だ。しかし、仕事で評価を担当しない限り、質の高い情報を出せるほど多くの製品を使い込むことは難しい。
 モノフェローズの仕組みは、新しい製品やサービスに興味を持っている方々に、現実に即した情報を提供しようというものだろう。そうすることで、色々な人が、それぞれの視点で製品やサービスに対するフェアな意見を引き出せる。筆者も、記事の中で製品やサービスの良し悪しを決めつけるのではなく、消費者が自分自身で製品やサービスを選ぶことができるよう情報を提供する事を重視してきた。
 ユーザーひとりひとりが異なる状況の中でものを選ぶのだから、それぞれの立場において自分で判断するのが、もっとも良い答えになると思うからだ。

 やや理屈っぽくなったが、パケットビデオのTwonkyのイベントに協力した目的は、Twonkyという製品そのもののプロモーションではなく、Twonkyが目指している商品・サービスの方向性、考え方をモノフェローズに登録している皆さんにも知って欲しいと思ったからだ。

 Twonkyは“古くて新しい”技術だ。みんなが知っているけれど、みんながよく知らない。そのコンセプトは優れているが、製品への統合度、実装のレベルは高くない。これはパケットビデオの責任というよりも、業界全体の空気感の問題でもある。Twonkyが目指しているものが、自分たちのデジタルメディア生活を改善してくれるのであれば、みんなで同じ方向を向いてより良いデジタルメディア生活のために歩もうよ、と声をかけたくなったのだ。

 モノフェローズの方々が既にブログを書いているように、TwonkyはDLNA規格に沿ったサーバ、メディア管理ツール、メディアコントローラ、レンダラー、プレーヤーなどのソフトウェアシステムで構成されている。パソコン用のソフトウェアから、NASやプレーヤなどへの組み込み用ソフトウェア、それに携帯電話への組み込み用ソフトウェアまで揃っている。先日もNTTドコモが発表したFOMAの最新シリーズには、Twonkyが組み込まれているし、スマートフォンに関してはAndroidマーケットからのダウンロードも可能である。

 多数の機器に組み込めるサーバ、レンダラー、コントローラ、プレーヤが全て揃っており、どういった機器の組み合わせでも互いにメディアをやり取りし、再生できるのも利点だが、Twonkyの最大の長所は、異なる機器間の“調整役”となれることだ。
 DLNAを用いれば、各種製品が問題なくデジタルメディアをやりとりできるはずだが、実際にはつながらない事が多い。理由はコンテンツのタイプを示すMIMEの情報に互換性がなかったり、互換性を有する能力あるのに、ちょっとしたコーデックのプロファイルが合っていないだけだったりと、マイナーなトラブルが多い。Twonkyは、流通している多くのサーバ、プレーヤ、レンダラーなどの情報をデータベースとして持っており、MIMEタイプを読み替えたり、あるいはコーデックのプロファイルを差し換える(プラグインを用いればトランスコードも可能)機能があるのだ。

 この読み替え機能はひじょうに強力で、たとえばXBOX360に対してはWindows Media ConnectとDLNAの完全な相互運用を可能にしているし、PSPに対してはRSSリーダに対してDLNAのコンテンツを配信するといった機能まで持っているという。
 このように、異なる機器間の調整役に徹することで、DLNAが本当に異機種間の橋渡しとなるよう機能させるのが、Twonkyの最大の長所なのだ。

 調整役としての機能は、上記だけに留まらない。

 たとえばYouTubeなど動画サイト、PicasaWeb、Frickerといった写真共有サイト、IceCastなどインターネットラジオの手順とDLNA機器の間を取り持つ機能も持っている。DLNA対応機器は、Twonkyのサーバにアクセスすることで、これらのサービスを利用できてしまうのである。Twonky側のプラグインで対応サービスを拡張することも可能なので、その可能性は非常に大きい。
 さらにWebブラウザなどで発見した動画、写真、音楽などを、ネットワークで接続された別のDLNA機器から再生することも可能だ。これはTwonkyBeamという機能だが、発見したメディアをその場でもっとも相応しい機器から再生させるのである。
 実際の仕組みは、TwonkyBeamを動かす機器内部でメディアストリームを中継し、自らがサーバとなってDLNA機器に配信するというもので、特別に複雑な事をしているわけではない。とはいえ、それらが携帯電話やスマートフォンの中でも動くのだから画期的だ。携帯電話で見つけた、あるいはパソコンで見つけた動画を、目の前のテレビで簡単に再生できてしまうのだ。

 もちろん、その携帯電話自身で撮影した写真や動画も、身近な機器で再生できる。パケットビデオでは、他にもデジタルカメラ向けのTwonkyといったものもメーカーに技術提供しているという。

 さて、どうだろうか。TwonkyのようにDLNA機器間、あるいはDLNA機器間とDLNA非対応サービス間などを調整する役割を持つ製品やサービスが進歩すれば、もっと自由にメディアをやり取りできるようになると思わないだろうか?

 デジタルメディアをネットワークで使いこなす事は、まだまだ難しく、一般に誰でも勧められる状況にはない。トラブルがあった場合に、その原因に行き着く手段も限られている。しかし多くの人が、そこに可能性を求めて集まってくれば、状況は改善していくものだ。

 ハードウェアやソフトウェア、サービスの開発元から情報を直接得ている僕らだけでなく、一般ユーザーの視点からどのようにこれらが見えているのか。僕が感じていることと、ブロガーが感じていることの違いは何なのだろうか。ひとつ言える事は、Twonkyのような仕組みが広まれば、デジタルメディアライフはもっと豊かに、楽しいものになるだろう、ということである。

 面白いものが必ず広まるとは限らない。しかし、あ、コレは面白いな。便利だなという気付きを広める努力はできる。そうみんながしていくことで、自分もまたより良い製品やサービスを利用できるようになるのだ。

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