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日本のケータイに優れたアプリが生まれ難い理由とは

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 tiwitterでnobiさんにコメントしたら、是非、ブログにって話なので、少しだけ膨らまして簡単に書きます。元ネタはこちら「以前からあった機能を「特別」にするiPhoneマジック」。

 ここでnobiさん、もとい林氏曰く

こうした革命が、閉塞感の漂う日本の携帯電話で果たして起きるだろうか。
NTTドコモは、新しい端末で進んだJavaScript対応などを実現してくれたが、
これも所詮、日本独自規格だ。
今、世界の次の世代のモバイルインターネットはiPhoneにしても、Androidにしても、PalmもPreにしても
HTML5とWebKitという世界標準に移行しつつある。

と書き、これに対してwirehead氏は
日本のケータイと世界的な流れになっているスマートフォンの違いはソフトウェアの品質にあるのでは?

と返信している。

 もちろん、両方の意見は、どちらも間違ってはいない。

 ドコモは現在ほどインターネットも発展しておらず、パケットあたりのコストも高い時代にi-modeを始めたため、自社ネットワークで閉じた世界を構築しながら、インターネットとのゲートウェイも用意するという手法を採用した。これは当時の判断としては間違いではないと思うが、発展性に乏しい事は自身でも理解いていたはず。
 しかし、携帯電話という枠の中で使いやすいサービスを提供するには、サービスとハードウェアを一対にしたアプリケーションの開発を行わざるを得なかったのだと思う。何かのきっかけでパラダイムを帰る必要があったが、典型的な後継機症候群に陥ったのではないか。成功しているうちは、先行きがアヤシイと思いつつも、なかなかベクトルは変えられないものだ。

 一方、ソフトの品質が低い。それも確かにその通りだが、こちらは結果論だろう。原因のひとつはwirehead氏の言うように、メーカーのモチベーションにもあると思う。が、本質的にはソフトウェア開発環境の構築アプローチの違いではないか?と考えている。
 たとえて言うならば、"優れた経営者"と"秀でた個人事業主"の違い……と、少し判りにくいかもしれないが、そういう違いが両者にはある。

 優れた経営者は自分が実務をこなすのではなく、それぞれに得意分野を持つ社員に対して、上手に権限を委譲しながら、自発的に会社が発展する環境を整えるのが上手だ。アップルがiPhoneで成功を収めたのは、まさにこの部分ではないだろうか。
 パソコンのソフトウェア開発に慣れている人が、簡単にアプリケーション開発を行う環境を整え、それを流通させるための仕組みを構築し、分け隔てなく誰もがビジネスに参加できる環境を生み出した。これは言うほどに簡単なことじゃない。

 対してドコモを初めとする携帯電話事業者は、部分的に世界標準となる技術トレンドは持ち込んではいたものの、デベロッパーに対するサポートという面では、独自路線を走りすぎた。これは前記のようなハードウェアとサービスインフラをセットにした囲い込み路線から外れ辛い環境にあったことも遠因としてある。独自路線でもビジネスのインフラとして魅力的なら、もちろん発展はしていく。
 しかし市場が成熟して多方面に開発が進み、隙間が狭くなってくると"大きな魚"はいなくなり、何か新しいアプリケーション分野を提供する際には、どうしても携帯電話会社側からのお仕着せを仕立て上げるしかなくなってしまう。
 ビジネス開始時の着想の良さやシェアに頼っていると、あっと言う間に新しい流れについていけなくなる。これは、自身の能力に頼り過ぎて新しいトレンドを見逃し、仕事を失っていきがちな、能力や才能のある個人事業主のイメージに近い(これは人ごとではないのだけど)。

 もっとも、日本の会社は自発的発展を促す環境を整え、そこでビジネスを行うという手法が、本質的に苦手なのかもしれない。そうした環境を整えるには、目先の仕事ではなく、一歩引いて業界全体を俯瞰する視野の広さが必要だ。ところが、日本人はどうしても目先のモノやサービスに行きがちだ。経営者や一部のエンジニアが広い視野を持っていたとしても、会社という組織全体が開発プラットフォーム、コミュニティの育成といった方向に行きづらいのかもしれない。

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