週刊東洋経済連載の「次世代DVD狂騒曲の真相」について
今週月曜日発売の週刊東洋経済から5回連続の予定で、次世代光ディスクに関する顛末について書いています。初回は主に東芝が判断を誤った理由について、5年にわたって取材した情報に、新たにいくつかの取材を加えた情報をまとめて書いきました。
初回については、なるべく個人攻撃と捉えられる内容は避けたかったのですが、読み方によっては、そう感じる方も少なくないかもしれません。しかし、ここで主に伝えたかったのは、経営判断を行う上での情報収集の難しさです。情報を収集する上では、どの情報が、どれだけ信頼性のあるものか、その重み付けが大切だと思います。とはいえ、情報を用意しても、情報そのものが多様でなければ、複数を集める意味はなくなる。
東芝という会社は、とても技術者を尊重する会社です。東芝には技術担当役員(通常は専務)がいますが、それとは別に純粋な技術職のトップとして首席技監がおり、一部は役員待遇になります。シニアフェローに相当する役職と言えるでしょう。その下に技監という役職(いわゆるフェロー)があり、実際の事業部で部下を束ねる開発のトップは技師長でひじょうに高い信頼と尊敬を受けます。
東芝の技師長と世間話をしていたりすると「本田さん、技師長とお知り合いなんですか?」と、(僕の方はあまり意識して話している訳じゃないのだけど)うらやましそうに東芝の方から尋ねられることがあるぐらい、技術畑で成功した人たちは特別な人間であると見られます。
ですから、東芝の山田さんが尊敬され、その意見が重視されたのは当然のことで、その点で(技術者に自由と実績に見合う地位が与えられている)東芝を責めることはできません。また真剣に技術を検討していた山田さんも責めたいとは思いません。
経営の視点で見た場合、問題点は別のところにあるのではないでしょうか。東芝はカンパニー制を取り始めたとき、それまで各事業部の監視を独立して行っていた経営企画室の機能が弱まってしまいました。カンパニーの独立性は高まり、東芝本社の事業体への監視機能は縮小されているように見えます。それが、今回の問題の遠因としてあるのではないか?と、個人的には考えています。
なお、第2回目は今週土曜日に定期購読者向け配達、来週月曜日に店頭にならぶ東洋経済に掲載されます。ここでは主にソニーと松下が、どのようにしてフォーマット戦争を始めることになったのか。そしてハリウッドとのビジネス上の関係などについて書いています。
多くの人は驚くでしょうが、実は2001年の段階(BD発表前)の段階では、0.1ミリカバー層構造がベストであると、全メーカーが合意していました。つまり、本来ならフォーマット戦争なんて起きなかったハズなのです。ではなぜフォーマット戦争になったのか。その"そもそも"話から、コラムをスタートさせています。主に経営層に向けてのケーススタディのつもりで書いていますが、それ以外にも次世代DVDの顛末に興味のある方は、(そんなに高い雑誌でもないですから)是非、読んでみてください。
それは誤解です
あと、最後にひとつだけ付け加えさせてください。
友人からメールをもらい、上記の連載について2ちゃんねるで「元MSKK CTOの古川さんが辞めた原因はリーバーファーブのせい」と話題になっているけど本当なのか?と言われました。確かに該当のスレッドでは、そういう話になっているようですね。
私は古川さんのブログにこの情報が掲載されているのを知らなかったのですが、古川さんが以前、マイクロソフトを辞めた5つぐらいの理由のひとつについて「次世代光ディスク関係で引っかき回した、傍若無人な振る舞いをするコンサルタント」だったと、ブログに書いていたそうです。そのことと今回の東洋経済の記事を組み合わせて、上記のように考えた人がいるようです。確かにワーレン(リーバーファーブ)さんは、北米での映像コンテンツビジネスに関するコンサルティングサービスをマイクロソフトに提供していましたから、誤解が生じてもおかしくはありません。
しかし、古川さんが辞める原因となった人物は別にいます。ブログでの記述とは別に、僕は古川さんから直接メールでいただいていたのですが、その人物は日本市場の動向調査やロビー活動を担当していました。雇い主はMSKKではなく、マイクロソフト本社(MSHQ)です。このあたりについては、いずれ連載の中で出てくることになるでしょう。
(日本語としておかしなところがあったので修正しました。文章の趣旨は変更していません)