SCE久夛良木さんがSCE役員を退任
そろそろ各地で報道が始まっているハズですが、Father of Playstationと紹介時に必ずアナウンスされていたソニーコンピュータエンターテイメント代表取締役会長兼グループCEOの久夛良木健さんが、6月19日の任期満了をもって退任し、名誉会長となることが発表されました。
もともと、SCEアメリカの社長だった平井さんが代表取締役社長になった頃から、退任するのではないかと言われていましたから、今回の人事に驚く人は少ないかもしれません。いろいろと書きたいことはあるのですが、ひとつだけエピソードを書いておきたいと思います。
通常の記事では、取材対象に対してバイアスをかけたように思われないため、個人的に感じていることを書いたりはしません。取材対象の印象によって内容が変化しているなんてことは許されませんし、変な誤解を受けないためです。
ただ、もう退任されるということなので、少しぐらいは自分の印象を書いてもいいでしょう。
僕の久夛良木さんに対する印象は、報道などで言われているものとは全く違います。この方は、初対面の人にはある意味、とても横柄で、訳の分からない事を言う人という印象を持たせます。そのあたりが、誤解を受けやすかった理由でしょう。
しかし、実際にはものすごくシャイで嘘を言わない人でした。言えないことは、ものすごく苦しそうに言わないですし、言いたくないことは言いません。ただ、自分の頭で考えている結論に至る過程を上手に、丁寧に説明するのは不得意でした。
僕が最初に会った時も、なんだか質問には答えず、はぐらかされたような印象を持ったものでした。しかし、その答えが実際には本質を伝えようとしたことに、数年後、気付かされるのです。
そんなわけで、取材する側としてもパズルを解くように、注意深く話を聞くわけですが、うまくコンセンサスが合わない時には、とっても悩んだりするわけです。担当替えの多い大手新聞社の記者などは苦労したことでしょう。
そんな久夛良木さん、最近は「家庭の中でのエンターテイメントを作ろうとして、一生懸命にハードウェア、ソフトウェア、サービスなどを産みだそうとしているのに、取材される内容は全然楽しくない話題ばかり。なにかというと、権力争いやビジネスモデル、お金の話ばかりで、”楽しみを生み出す産業”を育てようという意図が全く見られないのが残念」と周囲に話していたようです。
昨年、PS3の発売前ぐらいから、ほとんどマスコミとの接触を断ったのも、そんな理由からでしょう。ゲーム産業は十分に大きくなり、その後、久夛良木さん本人が考えるゲーム産業とは別のものになってしまったのではないかな。やりたいことをやろうにも、なんでもビジネス的な野心として片付けられてしまう。
新しいエンターテイメントを見つけようと話しているところに、ゼロサムゲームを伝えるように競合相手を叩く話ばかり訊かれるんじゃ、そりゃイヤにもなるでしょう。本来、どれだけ楽しいかを競って、そこでの勝ち負けなのに、プラットフォームを出す前から、勝ち負けの話ばっかりですから。
今後、久夛良木さんが何をやるのかはわかりませんが、本当にやりたいことにゆっくりと取り組んで欲しいですね。