デスマーチのリカバリはどこから手をつけるべきか
プロセスデザインエージェントの芝本秀徳です。
きょうは「デスマーチのリカバリ」についてです。
■ デスマーチとはなにか?
まず、ここでいう「デスマーチ」とは、どのような状態を指すのかを定義しておきましょう。
「デスマーチ」というワードをネットで検索してみると、「きょうは徹夜でデスマーチ」とか、「今週はデスマーチ」などといった使われ方をしていますが、終わりが見えているものは、ここでいう「デスマーチ」ではありません。
さらに、「毎日、深夜残業で終電で帰っている」とか、「デフォルトで休日は出勤」のように、長時間労働や、休みがないということも、デスマーチの現象ではありますが、それ自体がデスマーチというわけではないのです。
デスマーチとは、ただ単に長い時間働かなくてはならないことを指すのではなく、「先が見えない」「いつ終わるともわからない」「プロジェクトの状況がどうなっているのかがわからない」というように、「コントロールを失っていること」を指します。
長時間働かなくてはならなくても、休日に出勤しなくてはならなくても、それが「コントロールされている」のであれば、それはデスマーチではありません。そして、コントロールを失うことほど、恐ろしいはないのです。
■ なぜデスマーチになるのか?
デスマーチとは「コントロールを失っている状態」を指すといいました。では、なぜコントロールを失ってしまうのでしょうか。
それはコントロールに必要な「基準」がないからです。
コントロールとは何らかの「基準」をもとに、それと比較して、いまどのような状態なのかを把握し、基準に近づけていくことは指します。
たとえば、クルマでどこかに出かけるとしましょう。ふつう、カーナビに目的地を登録して、ルートを探索し、案内を開始してから、クルマを走らせますね。
このとき、目的地がわからなかったり、ルートが決められていなければ、どうなるでしょうか?いくらクルマを走らせても、そもそもも目的地がなければ、着きようがありません。目的地があってもルートがなければ、目的地に近づいているのかどうかわかりません。つまり、行程をコントロールするには、目的地とルートという基準が必要だということです。
プロジェクトにおけるこの目的地とルートにあたるものが「要件」と「プロセス・計画」です。
プロジェクトとして何を実現するのかという要件と、それをどのように実現するのかというプロセス・計画がプロジェクトの基準となります。この2つの基準がなかったり、曖昧だとコントロールを失ってしまうのです。
■ コントロールを取り戻すには
私がプロジェクトのコンサルティングに入るときには、まずこの2つを確認します。デスマーチに陥っているプロジェクトで、この2つがまともなレベルであることは、まずありません。
この2つの基準がないまま、コントロールを取り戻そうとしても、それは不可能です。いくら人員を追加しても、いくら納期を交渉しても、基準がなければ、デスマーチは終わらないのです。
プロジェクトをデスマーチから救いだすには、まずこの2つに注力することです。この2つの基準を確立するまでは、プロジェクトを止めてもいいくらいです。なぜなら、コントロールされない状態でプロジェクトを進めても、不具合の作り込み、品質の低下が進むだけだからです。
目的地とルートを確立する。プロジェクトのリカバリはまずそこからです。
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