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プロセス、戦略、人間学の視点からプロジェクトを眺めます。

プロセスを設計することの効用とは何か?

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プロセスデザインエージェントの芝本秀徳です。

きょうは、あらためて「プロセスとは何か?」という話、そしてプロセス設計はどんなメリットがあるのかという話です。

■ プロセスとは何か?
プロセスとは「過程」「工程」などと訳されます。「どんなプロセスで進めるの?」「プロセスを大事にしろ」などとも言われます。とても日常的な言葉です。

私がここでいうところの「プロセス」とは、これまでも何度か書いたことがありますが、料理で言うところの「レシピ」のようなものです。

レシピがないと材料があっても美味しい料理をつくることはできません。それと同じように知識や技術、優秀な人材など、材料だけでは成果を生み出すことはできないのです。

■ プロセス設計とは何か?
このレシピをつくるのが「プロセスを設計する」ということなのです。「設計する」というと何やらむずかしいことのように思われるかも知れません。しかし、誰でも日ごろからやっていることなのです。

たとえば、行ったことがないところへ出かけるとき、クルマならカーナビで目的地を検索してルートを探索します。電車なら乗換案内などで、どんな乗り継ぎをすればいいのかを探しますね。これがプロセス設計なのです。

どこかへ出かけるときに目的地を決めなかったり、とりあえず南の方向へ進もう、などとする人はいないでしょう。しかし、仕事においては、とにかく早く結果を出すために「とりあえず、出かけよう」としてしまうのです。

ルートを決めずに出かけても、目的地に着くことができないか、出来たとしてもムダな時間とコストがかかってしまうように、プロセスを設計せずに仕事をしても、成果を生み出せないばかりか、いたずらに時間とコストを消費してしまうだけなのです。

■ なぜ「設計」なのか?

カーナビや乗換案内があれば便利ですが、仕事ではそのような便利なものはありません。自分で目的地までのルートを探索しなければなりません。このルート探索の方法論がプロセスデザインなわけです。

プロセスというと「手順を守る」ことを思い浮かべる人もいるかも知れません。実際、プロセスを「定義」して、それを「守る」ことで、製品やサービスの質を保つというやり方もあります。

しかし、顧客の要望は多種多様になり、要求の変化が激しくなっているいま、決められたプロセスで実現できることは少なくなっています。プロジェクトとして仕事を進めている人ならおわかりだと思いますが、プロジェクトに課せられる要求は、毎回異なります。同じプロセスで対応できるものではないのです。

要求が異なれば、それを実現するためのプロセスも異なります。要求が異なるのに、同じプロセスで進めるのは、注文住宅を求められているのに、建売りの物件をお客様に押し付けるようなものなのです。

■ プロセスを設計することで何が得られるのか?

では、プロセスを設計することで、具体的に私たちの仕事にどのようなメリットがあるのか。プロセス設計の効用は、ひと言でいうと「見える」ことにあります。

①何を、どうすべきかが「見える」
プロセスを設計することで、仕事が「見える」ようになります。
プロセスが見えれば、体系的に仕事を進めることができます。つまり、仕事のコントロール度が高まるのです。想定外の出来事、割り込み、突然の変更などに、振り回される度合いを最小化することができます。自分が何を、どうすべきかが「見える」のです。

②先行きが「見える」

プロセスを設計することで、シミュレーションができるようになります。
知らないところへ出かけたとき、行きよりも帰りのほうが距離が近い感じがしますね。どれぐらいかかるか行くときには見えません。一度行った帰りなら、それが見えます。この「見える」かどうかで、遠く感じたり、近く感じたりするのです。
プロセスを設計するということは、一度「行く」のと同じことなのです。「見える」から不安が少なくなります。だから「近く」感じるのです。

③リスクが「見える」

仕事上で不安を感じるのは、そこに見えないものがあるからです。「見える」なら、何も不安に感じることはないのです。

シミュレーションができれば、ゴールまでの道のりのなかで、どこで何が起こる可能性があるのか、リスクが「見える」ようになります。さらに、リスクが現実になってしまったときに、どのように対処すればいいのか、対策もプロセス設計に盛り込むことができるのです。

④打ち手が「見える」
カーナビで設定したルートで、途中で事故などがあると、ルートを再探索してくれますね。
再探索したルートで、どちらの方向に進めばいいのか、どれぐらいの時間がかかるか、ぜんぶわかります。

トラブルを検知できるのは、ルートがわかっているからです。ルートがわかっていなければ、そこにトラブルがあるかどうかもわからないのです。さらにルートを再探索することで、トラブルの影響を最小化しつつ、無事、ゴールまでたどり着くことができるのです。

プロジェクトでも同じです。管理ができるのは結果ではなく、プロセスです。プロセスが「見える」ことで、現在地とのズレがわかります。ズレたり、トラブルが起きれば、ルートを再探索(プロセスを再設計)すればいいのです。プロセスを設計できれば、いま何をすべきなのか、打ち手が「見える」ようになるのです。

⑤暗黙知が「見える」

できる組織、できる人は、できるプロセスを持っています。いわば、暗黙知です。暗黙知ですから見えないのです。この暗黙知をどう継承していくかが、組織の能力を大きく左右します。暗黙知をプロセスとして表現し形式知化することで、暗黙知が「見える」ようになるのです。

また、プロセスを設計させることは、人材を育てるのにいちばんよい方法です。プロセスが「見える」なら、そのプロセスをどのように改善すればいいのか、成果を生むプロセスと、そうでないプロセスとは何がちがうのかが「見える」ようになるのです。


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