プロセス、戦略、人間学の視点からプロジェクトを眺めます。

プロセスって何それ?食べれるの?

»

プロセスデザインエージェントの芝本秀徳です。

きょうのエントリーのタイトルは、私がかつて上司に言われた言葉です。プロセスの改善、定義と言われたときの現場の気持ちをよく言い表しています。

■ 「プロセス」という言葉への拒否反応

プロセスを確立しようとすると、現場から必ずといってもいいほど出てくるのは、

・プロセスを決めたらクリエイティブな仕事なんてできない。
・プロセスを決めることで、能力が活かされない人が出てくる。
・プロセスを守れば、余計なコストがかかる。

などの意見です。この反応は当然のことですし、闇雲にプロセスを定義するだけでは、この懸念は現実となってしまいます。だから、「なぜ、プロセスをつくるのか」という根本的な問いに、答えなければならないのです。

「プロセスって何?食べれるの?」と上司に言われたころの私は、「なぜ、プロセスが必要なのか」を明確に説明する言葉を持っていなかったのです。

■ なぜプロセスが必要なのか

「プロセスを改善すれば、品質が上がります」「プロセスを改善すれば、生産性が上がります」などと、表面的なことをいっても、それは「期待」を言っているだけであって、「なぜ」には答えられていません。

「なぜプロセスが必要なのか」、つまり、プロセスを設計し、それを改善しつづける目的は、大きく3つあります。

①再現性を高める
②複雑性を減らす
③追跡可能性を高める

の3つです。

■ 再現性を高める

再現性を高めるとは、「もう一度、同じことができるようになる」こと、そして「特定の人に依存した部分を少なくする」ということです。

プロジェクトがうまくいったとしても、それが上手くいった「理由」がわからなければ、次に同じように成功することはできません。また表面的な理由ではなく、状況が変わっても同じ効果を発揮するレベルまで「抽象化」されていなければなりません。

また、成功の理由が「○○さんがいたから」では、これまた再現性はゼロです。「○○さんがいなければムリ」ということに他ならないからです。ここで勘違いしてほしくないのは、プロセスをデザインするのは「誰がやっても同じ成果を得られるようにするためでは”ない”」ということです。

人に依存する部分がゼロになることはありません。人の能力は活かすべきです。しかし、「○○さん」は一人しかいません。一人しかいなければ、組織としての発展は望めません。そこで、「○○さん」がいればうまくいく理由を知り、それを組織としてプロセス化することで、組織の能力を高めるのです。

■ 複雑性を減らす

現代の仕事は、一人で完結することのほうが少ないでしょう。役割が細分化されていて、自分の成果を、誰かに使ってもらって、はじめて意味を持つという仕組みになっています。お客様のところに商品やサービスを届けるまでには、何人もの人によって、何十、何百というプロセスを経なければなりません。

複雑性とは、この人やプロセスの多さによって生まれます。お客様に届くまでに関わっている人、プロセスが多ければ多いほど、複雑性は増していきます。複雑であればあるほど、ミス、勘違い、ムダが多くなります。

何度も似たようなことをしているのに「あれが足りない」「これがまだできていない」と、ヌケ、モレ、ミスがあるのは、この複雑性に対処できていないからなのです。

プロセスを確立しようとすると「創造性を阻害するのでは?」と思われるかもしれません。しかし、実は逆なのです。創造性を発揮するために、創造性を邪魔しないために、この複雑性に対処するのです。

■ 追跡可能性を高める

最近はスーパーでも「トレーサビリティ」という言葉を見かけるようになりました。たとえば、キャベツを買ったときに、その野菜をどの農家が生産して、どの流通業者を経て、どのスーパーでいつ売られたのかまでを追跡できるような仕組み、これを「トレーサビリティ」と言います。

トレーサビリティがあることによって、消費者は安心してものを買うことができますし、もし品物に問題があったときは、どこで売られているのかがすぐにわかるので、迅速に回収ができます。

プロジェクトにおけるトレーサビリティも同じです。プロセスが「見える化」されれば、「いまプロジェクトがどこにいるのか」という現在地が見えるようになります。問題が起きたときは、「どこで問題が発生したのか」を特定し、そこから原因をたどっていくことができるのです。

プロセスがない、「見える化」されていない状態では、問題が起きた時に「何が問題だったのか」を追いかけることもできません。そもそも検証ができないのです。

■ プロセスは創造性を高める

プロセスをデザインするのは、マニュアル人間をつくるわけでも、プロセスを制度化して人を従わせるためでもありません。

「再現性を高める」「複雑性を減らす」「追跡可能性を高める」ことによって、創造性を十分に発揮し、成功の可能性を高めるためのものだということを、多くの方に知っていただきたいと思います。



Comment(0)

コメント

コメントを投稿する