方法論を統合する必要性
土曜日にフロリダから帰ってきました。
現地の様子のレポートは、
公式ブログにアップしましたので、ぜひご覧ください。
レポート第1弾『東京からフロリダへの旅路と国際大会前日』
レポート第2弾『テクニカルプログラム(論文発表)』
レポート第3弾『フロリダで得たものと、これからの目標』
今回参加したのは、米国VE協会(SAVE)の国際大会でした。
VE(Value Engineering)は、VA(Value Analysis)とも言われます。VEという用語は、工業デザインや建設業界でつかわれることが多く、VAは企画、設計プロセスで使われることが多いようです。この二つに本質的な違いはなく、同じものです。現在では、これらを総称して、Value Methodology と呼ばれることが多いようです。以下、VMと表記します。
VMは、
A systematic process used by a multidisciplinary team to improve the value of projects through the analysis of functions.
と定義されています(SAVE VM Standard)。
つまり、さまざまな専門性をもった人たちがチームを組み、ファンクションの分析という活動を通じて、プロジェクトの価値を高める取り組みのことを言います。VMは系統だったプロセスとともに、多くの分析技術を提供します。
今回の国際大会で私が発表した論文は、VMをソフトウェアプロジェクト、なかでもソフトウェア要件定義に適用することで、その課題に対処することができるということ、そしてその具体的なアプローチについて述べたものでした。
論文のアブストラクトを載せておきます。
Value Engineering (VE) is not well‐known in the software industry. Considering the powerful potential and benefits of its use, this failure is a big loss. The major challenge for software developers is how to correctly understand the users’ needs and how to incorporate their ever‐changing needs properly into software systems. Value Engineering is a very effective method to resolve this problem. This paper discusses a VE technique to apply specifically in the software requirements development process and software requirements management process.
VMは、日本では建設、製造業、公共事業などで、大きな成果を上げており、その有効性は広く認知されています。しかし、ソフトウェア開発や、プロジェクトマネジメントの世界では、ほとんど知られていないのが現状です。
ソフトウェア開発は、これまでソフトウェアエンジニアリングや、プロジェクトマネジメント、他にもたくさんの方法論が、流行っては消え、流行っては消えとしています。まだ歴史に耐えた方法論はないのです。
また、それぞれの方法論が解決できるのは、問題の一側面に過ぎません。
たとえば、プロジェクトマネジメントは、プロジェクトの「有期性」と「独自性」、つまり不確実性に対処するものですが、逆にいえば、不確実性にしか対処できないということです。
また、ソフトウェアエンジニアリングは、極端に言えば、「決められたものを、いかに作るか」という方法論を提示してくれますが、それがもたらす「価値」を高めるにはどうすればいいのかという問いには答えてくれません。
つまり、何か一つの方法論を取り入れれば、すべての問題が解決するわけではなく、それらの方法論を、凝集的(Cohesive)に統合するアプローチが必要とされています。
こららの方法論を統合し、プロセスが生み出す価値を高め、安定して顧客に価値を届けるには、「ファンクション=機能」という共通言語を利用することが有効です。
今後、折に触れ、その具体的なアプローチについても、書いていきたいと思います。