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DaaSの使い途を考える(中編)[ソリューション・デザインの現場より]

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同じくオルタナ・ブロガーとなられた北瀬さんにDaaS王子と呼ばれ、小っ恥ずかしい今日この頃です...(笑)。とは言っても、記事を執筆するモチベーションになったので頑張ります。

さて前回はDaaS(Desktop as a Service)の特徴を確認しました。

改めて、このブログで取り上げるDaaSは、多くの企業に向けて、サービスメニューや価格が予め体系化されおり、その中からユーザー企業が自社に必要なものを選択できるサービスとして位置づけていることを前置きさせてください。

今回は、DaaSを企業が利用する際に、事前に考慮すべき事項を見ていきます。その中で市場に新しく登場したDaaSの特徴も見えてくると思います。

オンプレミスとは異なるコスト構造

クラウド型サービスとして提供されるDaaSは、初期投資額の大きいオンプレミス型のシステム構築と比較し、総コストが平準化される一方、利用期間の長さによってコストが増大する特徴があります。そこには、サービス・プロバイダーは、顧客に長く利用してもらうことで投資回収を行い、利益を追求するという背景があります。

コストメリットの観点でDaaSを検討する場合、短期間の利用であれば、オンプレミス型と比較し、メリットの出る場合もあるでしょう。しかしながら、以下に挙げるコストが短期間の利用に対応できるか確認することが重要です。

  • ネットワーク回線使用コスト(含 帯域選択変更作業)
  • SWライセンスコスト
  • DaaS環境への接続に用いる端末コスト
  • 管理作業コスト

2014年現在、仮想デスクトップとしてクライアントOSを用いる場合、そのSWライセンス費用をプロバイダーがDaaSの料金メニューに含んで提供することは基本的にできません。これは、プロバイダーが顧客にMicrosoft製品の使用権を提供するMicrosoft社Services Provider License Agreement (SPLA)にクライアントOSが含まれていないことを理由としています。つまり、短期間の利用に応じたコストの最小化には対応していません。

現行データセンターとのネットワーク接続

既存の端末におけるデスクトップ環境をDaaSへ移行する場合、自社と仮想デスクトップとの通信は、画面転送のデータに留まると思われがちです。しかしながら、次の点を確認しなければなりません。

  • 業務アプリケーション・サーバーはどこにあるのか
  • ファイルサーバーはどこにあるのか
  • プリンターはどこにあるか

現行で利用している全てのアプリケーションがSaaS型で、仮想デスクトップからのアクセス先がインターネット上のサービスであればあまり気になりませんが、そのような使い方をしているお客様には、私はこれまで会ったことがありません。既存のアプリケーションを導入した仮想デスクトップから、自社のデータセンターのアプリケーション・サーバーへデータ通信が発生する他、場合によってはファイルサーバーへのアクセスも必要になる場合があるでしょう。さらに、プリンター出力については、通常、DaaS環境から自社のプリンターへ印刷データの通信が発生します。 従って、これらのデータ通信を支えるネットワーク接続が必要となります。その通信のデータ量は前述のネットワーク回線使用コストに反映されることになります。

Windows 7ライクなサーバー仮想デスクトップの用途

最近登場したDaaSでは、Windows Server OSを仮想デスクトップとして各ユーザーに占有させて提供する形態が取られています。Windows Server OSをWindows 7のようなクライアントOSのようなインタフェースを適用して、ユーザーが使い慣れたデスクトップOSのようにしています。しかしながら、次の点が問題ないかを事前に確認しておく必要があります。

  • Windows Server OSに対応していないアプリケーションの稼働
  • Windows Server OSに対応していない周辺機器の稼働(ドライバー・ソフトが提供されていない場合がある)

なお、Server OSを利用している理由の一つには、前述のSPLAにクライアントOSが含まれていないことが挙げられます。

Microsoft社は、次のように述べています。

「SPLA では、クライアント OS 環境のホスティング利用はできません。ホスティングで提供可能な仮想デスクトップ環境の シナリオは以下の 2 つとなります。

1.Windows Server をデスクトップ用 OS として利用し、ターミナル サービスで仮想デスクトップ環境を提供

ライセンス プログラム:SPLA

必要となるライセンス:Windows Server SAL またはプロセッサ ライセンス+Remote Desktop Service SAL

2.エンド ユーザー所有の Windows VDA をハウジングする形で、専用ホスティング環境にて仮想デスクトップ環境を提供 サーバーは物理的にエンド ユーザー専用である必要があります。

ライセンス プログラム:ボリュームライセンス+SPLA

必要となるライセンス:Windows SA または Windows VDA(ボリュームライセンス)、Windows Server SAL またはプロセッサ ライセンス(SPLA)」

(Microsoft社「SPLA ライセンスガイドブック」より引用)

仮想デスクトップのマスター・イメージ管理は利用者自身

DaaSということで、運用管理はすべてプロバイダーに任せられると思われているお客様に時々お会いします。しかしながら、仮想デスクトップ上で何を利用させるか、どのようにアプリケーションを導入し、管理していくかは、お客様が基本的に責任を持つ内容と私は考えます。

プロバイダーは、イメージの配布機能を提供しますが、OSより上位のレイヤーの設計・管理については基本的に責任を持たないため、その点をきちんと認識しておく必要があります。

端末管理の負荷軽減にはシンクライアント導入が必要

DaaS環境へ接続するためには端末が必要です。既存の端末からDaaSを利用する場合、二重のデスクトップ運用に陥ることになり、また、端末管理の負荷は変わりありません。端末管理の負荷削減を目的にした場合、シンプルな構成となる、シンクライアント端末の利用を推奨致します。ただし、その分、初期導入コストが上がります。

以上、私の経験から、これまでDaaSを採用されなかったお客様の判断理由を踏まえて、DaaS利用時の考慮点を見ていきました。これらを認識しないでDaaSを利用することはお勧めしません。

次回は、DaaSが最適な利用形態、そして、今後のDaaSに求められる内容を明らかにしたいと思います。

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