HRD(人材の育成、教育研修)の現場から、気づいたこと、アイデアを発信します。初めて人材育成や教育担当になった方でも、わかりやすく、取り組みやすい情報提供を目指します。特に、20代~30代を元気にしたいご担当者様、是非このブログにご参加ください。

「変革」が進まない、ちょっとした理由

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 多くの組織が取り組む「組織変革」。そのテーマは新商品・サービス開発や業務改善プロジェクト、組織構造改革など多岐にわたります。取り組みの背景には、「このままではいけない」、「次の世代につなぐために」と、さまざまな問題意識があるようです。
 さて、そうした「組織変革」ですが、経営者や取り組みを主導する方にお聞きすると「なかなか思うようにはいかないですね」といった声をお聞きすることがほとんど。理由は「トップの意向がなかなか浸透しなくて」、「今までの習慣をなかなか変えるのが難しい」などなど、難しげな答えが返ってきます。
 しかし、もし、見方を変えることで、変革のスピードが上がるとしたら?

 今回は、どのようなことについて見方を変えるか、私が経験し気づいたことをお伝えします。

「プロジェクトが進まない・・・」
 以前のこと、「チームビルディング」研修ができないかというご相談をいただきました。そこで、対応できるコンサルタントとともにお話を伺うことに。

 研修は、既にスタートしているプロジェクト(以下PJ)のメンバーを対象に行いたいとのこと。PJの責任者によると、そのPJは「大型事業所」のPJであること。PJには、施工主である「お客様」、設計にあたる「設計事務所」、建設を請け負う「自社」の3社がかかわっており、その連携がうまく取れず進行が遅れ、その状況を打破するために研修を実施したいとのお話です。

 しかし、進行が遅れている背景には「設計事務所」の設計担当者の個性が強く、話が前に進まないことや、また、「お客様」内のPJメンバーに当事者意識が感じられないなど、なかなか複雑な様子。

 複雑な状況ではあるものの「今回は大型事業所になるので、社長も非常に力を入れているPJなんです。何とか前に進めていかないと。期待に応えて差し上げたいんです」というPJ責任者の気持ちをお聞きし、コンサルタントは、「なかなかセンシティブな案件ですが、やれるだけのことはやってみましょう」と、本件をお引き受けすることになりました。

 といっても、忙しいPJメンバーを集め、研修を実施できるのは最大で2日。お客様先を含む取り組みとなるため配慮すべきことも多く、かなり細かな点まで準備し備えました。

 そして、研修当日。

 さすがに、社長が力を入れているPJということで、「お客様先」のメンバー、「設計事務所」チーム、「自社」メンバー、どの方も見るからに優秀な雰囲気を漂わせています。個人的には、「この人たちでできないことは、ないだろうな・・・」と感じるほど。一方で、PJが遅れていることもまた事実。

 研修後、PJが計画に乗って進んでいくよう、この場の成功を祈りながら立ち会っていました。

 そんな状況の中でスタートした研修。研修は順調に進んでいきました。

優秀な人が抱えているもの
 しかし、1日目の夕食の頃になっても、いま一つメンバーの熱意や一体感のようなものが感じられません。食事中の会話も、コミュニケーションが表面的(他愛もない話)に感じられます。このタイミングでは、もっと今後に向けた熱意のようなものが感じられてもいい頃。

 私は、冷めた雰囲気の理由をつかまないと・・・と、思い、「お客様先」のメンバーの一人(仮称Zさん)と話をしてみることにしました。
私:「新しい事業所、いいですね。Zさんは、どんな職場にしたいですか?」
Z:「・・・」
私:「あれ、どうされました?」
Z:「いや、実は私は事業所の移転が、ちょっと・・・」
私:「・・・というと・・・」
Z:「地域で色々な取り組みをしておりまして、そのリーダーを任されているんですよ。事業所が移転すると、通勤圏外になるので地域の活動ができない状況になりまして。自分が旗振り役となっているものですから、少々気が重くて」
私:「そんなご事情があるとは」
Z:「ありがとうございます。それと、新しい事業所の設計内容が、私たちの意見が考慮されていなくって。社長がその設計事務所を気に入っているものですから、なかなか言い出しにくくて・・・」
私:「そういうことも、あるんですね。それは、言い出しにくいですね」
Z:「社長が楽しみにされている件なので、その気持ちを思うと、複雑で・・・」
私:「確かに・・・」
Z:「私以外のメンバーの中にも、事情は異なりますが、いろいろと感じているようで・・・」

 といった話を夜のセッションの前にお聞きし、「こういうこともあるんだ・・・」と感じたのでした。

 そのことをコンサルタントに伝えると、「それは、大事なことだ」と言い、その後、お互いの事情が伝えやすい雰囲気になるよう、より工夫しながら運営を進めました。

 その結果、2日目の研修の最後の頃には今後の方向性と、「やっていこう」という気持ちをお持ちいただけたようで、ご相談いただいた責任者には、とても喜んでいただくことができました。また、その後PJは無事に進行し、素晴らしい事業所ができたと言うお話も伺いました。

気遣いと本音
 この経験をきっかけに、組織で働く人たちの多くは、周囲への気遣いやその後の影響を考えるため、自分の気持ちを想像以上に言わないものであること。一方で、本音は、誰かに自分の気持ちをわかってほしいと思っていること。その本音をうまく引き出す工夫が必要であることを理解しました。

 そこで、休憩時間や食事のときなどに、何気ない話をきっかけに話を聞いてみると、意外とみなさん、社外の人間には本音を言うものですね。「不安」、「不都合」、「負担」など、いろいろなものを抱えています。一方で、それぞれが言葉にする内容は、個々の事情により異なり、また、そのレベルも違います。組織から見れば「ちょっとしたこと」と思えます。しかし、そのちょっとしたことを積み重ねていくと、大きな重石になり物事は停滞します。

本音を言える関係を、リーダーとしていかに築くか?
 それでは、社内の人が、本音を知りたいと思ったとき、どのようにアプローチすればよいでしょうか?

 そのヒントとして、先日開催されたヒューマンキャピタル2015で紹介された、新幹線の清掃会社「JR東日本テクノハートTESSEI」のケースをご紹介します。

 「TESSEI」は、現在、ハーバード経営大学院でもケーススタディとして取り上げられ、次期(2015年9月以降)は、必修科目になるほど注目されているそうです。

 今では多くの注目を集める「TESSEI」ですが、10年前は、社員が「働いていることを人に言えない」と言い、上からの指示と、お客様からのクレームに押しつぶされながら働いていたそうです。

 その組織を変えることに貢献したのが、同社で、前おもてなし創造部長として活躍した矢部輝夫氏。

 矢部氏の講演に感銘を受けた私は、講演で紹介のあった『リーダーは夢を語りなさい 新幹線清掃会社「TESSEIの奇跡」が起きるまで』(PHP刊)をすぐに買いに行きました。そして、書籍で、矢部氏がスタッフの「つぶやき」を大事にされていた事例をみつけ、そこに大きく共感しました。その部分をご紹介します。

「矢部さんね、派手な人って目につきやすいでしょ?でもね、派手なことは言わないけど、地道にコツコツやっている人がうちにはいっぱいいるのよ。そういう人をちゃんと見てね」
別のスタッフはこうつぶやきます。
「矢部さんね、私たち忙しいでしょ?お年寄りのお客様が困っておられて、ご案内するけど、そのあとどうなったか心配なの。なんとかしてあげたいんだけど、時間がないからそれも無理。そういうのをうまくできないかしら?」(引用了 P110)

 矢部氏は、このような言動から、スタッフの細やかな気配りや、お互いを思いやる関係性などを汲み取り、「TESSEI」の可能性を感じ、方向性を決め、組織を変えるきっかけを作っていったそうです。

 ここで大事なことは、このような「つぶやき」から可能性を感じること。そして、それをどう生かすか?と考え行動する、リーダーとしての姿勢ではないでしょうか?

 ちょっとした話にしっかり耳を傾け、組織運営に生かそうとするか、
 ちょっとした話を聞いても「なぜ、上の指示を優先して取り組まないのか」と考えるか、

 私たちの職場は、「やらなければならないこと」に溢れ、一人ひとりの「ちょっとしたこと」を気にかける余裕がないのも現実です。しかし、本当にやらなければならないのは、組織のビジョンを達成していくこと。

 そのビジョン達成の過程で、犠牲者が増えるのか、あるいは、同志が増えるのか。そう考えると、ちょっと怖いですね。

 ご紹介した『リーダーは夢を語りなさい』は、矢部氏のJR時代の体験談なども多く紹介されているので、取り組みポイントがよくわかり、リーダーの方にとてもお勧めです!夏休みに読む図書に加えてはいかがでしょうか。

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コメント

有給消化

ある人にはプラスの意味を持った変革かもしれないけど、別の人に言わせると面倒なだけでプラス部分に価値を見出せないってこと。
関わるみんながプラスに捉えられることななら誰も反対なんかしない。
一歩間違えると、新たな取り組みをすることが目的となってしまっている。
そんなこと言っていては何も改善されない!?
そもそも改善が必要なの?改善のためにかける人的、時間的、物的コストを改善で回収できるの?
これに対する回答は現場が出すものではなく、経営層が出すものです。

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