【書評】20億人の未来銀行 - 合田真
この本の著者の名前は知らないけれど、いくつかのテレビ番組で「アフリカの電気が無い村で充電済のLED電灯のレンタルをやっている地域に貢献している日本人」みたいな取り上げ方をしているのを何度か見たことがあるだろう。その人、合田真の本であり、テレビで取り上げられたLED電灯のレンタル屋は本業でもないし、まったく儲かってないし、本懐は別にあるという本だ。最近、いろんな起業家が取り上げている本なので読んでみた。面白い本だった。まねできないし、マネしたくない起業の本。
ピポットのスケールでかすぎて、わけがわからん
合田さんのピポットの経緯がすごい。もう、元の事業がなんだったのか本当によくわからない。スケールでかい。おもしろすぎる。
(1)5000万円借金してバイオ燃料の会社を買う
(2)パーム油の販売をする
(3)パーム油では上流を抑えられないのでヤトロファという植物に切り替える
(4)フィリピンでヤトロファの品種改良をする
(5)ツテがあるモザンビークでヤトロファのバイオ燃料事業を立ち上げ
(6)モザンビークで栽培はできるがバイオ燃料を卸す先がない
(7)自分でヤトロファで発電して充電済のLED電灯をレンタルをはじめる
(8)店舗がないので自社でコンビニ(キオスク)を立ち上げて店舗展開
(9)ヤトロファが高いので太陽電池で発電に切り替え
(10)自社キオスク店舗でLED電灯をレンタルするが店員に売上ちょろまかされる
(11)現金だとチョロまかされるので自社キオスクにNFCの独自電子マネーを導入
(12)電子マネーに貯金する人が出てきた
(13)モザンビークの銀行のライセンス申請中
うん。ピポットがすごすぎて、わけがわからん。もう、燃料電池ではなくコンビニがメインの事業なんじゃないかという気がしてくる。
[第1章のおカネの話はためになる]
有名な合田さんの本なので、アフリカの起業の苦労の話が始まるかと思いきや、お金の成立ちや、仕組みや哲学についての話から始まるので面食らう。ただ、うなずくことは多い。「金利や複利でお金が増えているのに、資源が減っているので、現代の金融システムはいつか破綻する」ことを訴える。たしかにそりゃそうだ。さらに、途上国がすでに追いつけない不条理な状況をなんとかしたいということをポリシーとしているようだ。
また、個人的には宗教と金利や複利について、ちょっと触れられているのがうれしかった。金利や複利を禁止するイスラム教と、複利で財を成したユダヤ教の違いについては知っておくべきだと思う。超個人的にはイスラム金融と最近の動きについて書いてくれるとうれしかったが、そこまで書くと別の本になるだろう。
[2章以降は期待通り]
2章以降はみなさんの期待通り、海外での起業の苦労がいろいろ書いてあり、フィリピン、モザンビークでの起業の話が書いてあり、なぜそこまでハードモードの事業をするのか、考えさせられるが、昨今の「アプリをつくってバズらせて、投資家からお金集めて、ユーザー集めて、イグジットだー」というモデルと全く違うので、生々しくて面白い。途上国で企業をすると、人もインフラも信頼性が低いので、話としては面白すぎる。
そんなわけで、たぶん、読んでもマネできないし、マネしたくもないけど、面白い本でした。