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デンマークでエンゲージメントを学ぶ 第3回 再生エネルギー先進国デンマーク

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前回は中学校での教育状況をお伝えしましたが、今回は再エネや自然エネルギーへの取り組みをご紹介します。

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今回訪れたロラン島はコペンハーゲンから車で3時間弱の、沖縄と同じくらいの面積に約6万人が住む平地が中心の島です。もともとは造船業で賑わっていたところですが、1970年代後半には造船業が斜陽化、そして1980年代には造船所が閉鎖し、多くの住民が雇用を失う状況に直面しました。ここで当時の市長が目をつけたのが再生可能なエネルギーです。背景にはデンマークが直面していた原発問題があります。資源がないデンマークは早くから原発への取り組みを検討、推進をしており、ロラン島にも原発が立つ予定でした。しかし、それを危惧する国民や学者などがNGOを立ち上げ、原発に関して国民が公平な立場で判断できる材料の提供を行うなどして、推進に性急な政府の動きにストップをかけ、チェルノブイリ事故などもあり、最終的には85年の国民投票で原発を頼らないエネルギー政策を採択するに至りました。その後も政権が変わろうともブレることなく、持続可能な再生エネルギー政策は進化し、現在「2050年までに化石燃料の依存から脱却し、すべてを再生可能エネルギーに転換する」という目標を掲げ国を挙げて推進しています。そのような中ロラン島は、いち早くこの流れを汲み取り、島の再生をITなどではなく、再エネ推進で活性化することを選択し、風力発電企業の誘致や個人での風力発電装置設置に助成金をだしたり、またその他の再エネ(バイオマス発電、ゴミ発電、潮流発電など)にも積極的に取り組みました。当時のこの施策の推進者でもあったレオ・クリステンセン氏にも今回ロラン島にある気候変動センターで貴重なお話を聞く機会がありましたが、彼をはじめとする政治の強いリーダーシップがなければ実現できなかったと思います。現在島での電力自給率は600%で、島での必要電力以外はコペンハーゲンやドイツに輸出!している状況です。そうです、風が吹けば儲かる状態なのです。詳しくはロラン島在住のニールセン北村朋子さんの著書『ロラン島のエコチャレンジ デンマーク発、100%自然エネルギーの島』を是非お読みください。

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写真はレオ・クリステンセン氏と今回ロラン島をご案内いただいたニールセン北村氏。
ロラン島のVisual Climate Centerで環境問題やデンマーク、ロラン島のエネルギー政策についてお話をお伺いしました。

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上記写真は今回訪問したロラン島にあるゴミ発電所で、イギリスや欧州諸国からゴミを輸入し、これを電気と地域熱供給に活用し、冬の暖房はこれでまかなっている。供給地域もパイプなどの供給システムのイノベーションでどんどん広がってきている。

デンマークではそこかしこで風力発電機を見ることができるのですが、驚くべきことにその80%は個人所有です。(下記大阪環境局のレポートを参照)デンマークの再エネ政策の推進は政治の強いリーダーシップもあるのですが、市民参加(=エンゲージメント)のインフラだという側面も強固な姿勢として存在し、民主主義をエネルギー政策でもしっかりと展開していることが伺えます。

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ロラン島はこの後再エネの先進自治体として脚光を浴び、その後もバイオマス発電やゴミ発電などでも成果を上げ続け、各国からの視察が途絶えないとのこと。デンマークは先に述べたように再エネを積極的に推し進め、再エネ先進国としての地位も固め、また再エネに関する商品やサービスでのイノベーションも生み出し、マーケットでのシェアも非常に高く、2015年のCOP21での合意、福島の震災などもあり更に需要が高まっています。三菱重工もデンマークのVesta 社と合弁で洋上風力発電機メーカーMHI Vesta Offshore Windを設立しています。

デンマークはこのように再エネ先進国でもあり、また国民のエネルギー意識も高いため、通常であれば経済発展(GDP)はエネルギーの消費を増大させ、CO2の排出を増大させる比例関係なのですが、下記のように経済成長は増進しながらもエネルギー消費は微減、CO2の排出は大幅に減少するという素晴らしいパフォーマンスを上げています。

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Data sources: Statistics Denmark Table NAHL2 and Danish Energy Agency

よくある経済成長のための環境犠牲論はデンマークでは見事に成立していません。

社会課題(CO2)を解決しながらビジネスを持続可能なものにするお手本がここにあります。これはデンマーク国民が地球(自然)と共創(エンゲージメント)するという強い意識が背景にあるものと思われます。地球は今のままの消費生活を続ければ2030年には地球が2つ必要だとも言われています。(WWF 地球環境の今

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