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デンマークでエンゲージメントを学ぶ 第2回 中学校での教育

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衝撃的だった森の幼稚園に続き、ロラン島の義務教育現場の視察に行きました。デンマークでは6歳から16歳までの10年間(同じ学校)が義務教育でフォルケスコールと呼ばれています。フォルケスコーレ法令では下記が定められています。(wikipediaより)

  • 生徒が民主主義社会の一員としての役割を全う出来るよう、教育すること
  • フォルケスコーレは、生徒が高等教育へと進むための知識と技術を身に付けられるよう、また更なる教育を受ける意欲を掻き立てられるよう教えること。
  • フォルケスコーレは、生徒が自由で民主的な社会に参加し、責任を負い、権利と義務を理解出来るように教育すること。それゆえ、学校での日常的な活動は、知的自由、平等、民主主義の精神のもと行われること。
  • 生徒と彼らの親は、フォルケスコーレの目的が遂行されるよう、学校と協働すること。

今回は幸いにも実際に授業風景を見せていただいたり、先生のお話をお伺いすることができたのですが、上記の点は言葉の端々に表れていました。先生は教える人ではなく、生徒が社会でやりたいことを見つけ、その方向に進むことをサポートしたりファシリテーションする「パートナー」なのです。授業はアクティブラーニング形式で、生徒自らが発表し、生徒が意見を言い合う、とても自主性の高い学びの場でした。写真は中学一年のクラスの授業の様子ですが、好きな場所に好きな人と座って、中には帽子やフードを被っている生徒やPCを利用している生徒もいましたが、かといって騒然としている様子はなく、皆が授業に「参加」している感じが伝わりました。

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みんなに学校や勉強は好きか?と答えると全員が好きだと手を上げたのには驚きました。逆に日本はどうかと聞かれ、答えに窮してしまいました。日本のように先生が一方的に教科書の内容を教える座学形式でなく、みんなで考えて参加するような仕組みができているために前向きになるのだと思われました。小学校からこのように生徒が自主的に勉強に取り組むことにより、自主性が育まれているのだと痛感しました。先生は勉強を教えるのではなく、「学び」の面白さやそのやり方を教えている、ということでした。生徒にとっては先生がパートナーであり、相談相手であり、学びをファシリテーションしてくれる存在で、その関係に親近感が感じられました。ちなみにデンマークの教育指数は0.993で世界一の水準です。(日本は35位)

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教室の扉には民主主義を推進した偉人たち、キング牧師、ガンジー、JFKなどの写真が大きく表示されており、ここでは教室名にもなっていました。ここはキング牧師部屋です。生徒たちは管理されるのではなく先生のサポートを得て、自主的に学ぶことを学び、自分たちでルールを決めて、自分たちでクラスや学校を運営するという極めて民主主義的な活動を実践しており、その後会う様々なデンマーク人から共通して感じる民主主義に基づく発言や行動は幼少時から育まれていることを理解しました。

日本のような管理教育、詰め込みによる勉強などの手法は一定基準の学力を保つことはできても、何が起こるかわからない困難な時代に行きて行くタフでしなやかな人間を育てるには向かない気がしました。

デンマークでは職業による給与格差がそう大きくなく(と聞きました)、また、税金で7割もっていかれるため、自分のやりたいことを見つけてそのための職業専門学校に進むパターンも多く、日本のようにともかく一生懸命勉強していい学校に入り、いいところに就職して、いい生活をするという概念があまりありません。生活は保障されており、高齢になっても生活に窮することもないため、自分の好きな職業につくことが多く、故にプロフェッショナル意識が高く、生産性も高いという図式になっています。社会人も学べる仕組み(フォルケホイスコーレ)があり、一生を通じて学ぶということがポジティブに捉えられており、それを国も推進する(原則教育は無償)、このあたりも国民幸福度ランキング上位の理由でもあると思われます。

デンマークと日本は資源がなく、いく度の戦争で敗戦し、そこで「人間」という資産に投資する=教育に力を入れたわけですが、その教育の仕方に大きな違いがあり、これからの時代をたくましく生き抜いていくためには、日本の教育のあり方を考えないとまずいなと痛感した次第です。

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出会った小学生の笑顔がとても自然で、とても眩しかったです。

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