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外資系金融機関を担当する経営コンサルタントの活動記録 ~ プライスウォーターハウスクーパースの高橋正敏です。

書評 「食がわかれば世界経済がわかる」

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サン・マイクロシステムズの買収報道もひとつの花を添えると思われる、Oracle Open World Tokyo 2009。明日から3日間の開催でして、私も非常に楽しみにしています。既にいくつかのセッションに登録させていただいており、IT技術を含めた最先端のソリューションを学ぶ予定であります。

そのなかで4221830分からは、榊原英資氏の講演に登録させていただいており、これもまた楽しみにしております。そこでいくつか読んだ氏の著作のなかで面白かったものを紹介します。(書評というほどのことでもないですが)

食がわかれば世界経済がわかるという本でして、標題どおり、世界経済を食の切り口から論じたものです。世界史などは、政治や権力者の動きを中心に学生のころから勉強してきました。文化面も、文学・美術・建築などの面が中心でしょう。そして、ビジネスパーソンになってからも、世界経済を把握する際には、為替や株価、企業業績などを切り口とするのが普通です。

しかし、本書では、食文化を中心としています。おおまかには、食を「資源」と捉える地域(英国・アメリカ・カナダ等)、と「文化」と捉える地域(中国・韓国・日本・フランス・イタリア等)に分類されて考察されています。前者では食事自体にこだわりが少なく、それがファストフードを生み出しているとされていて、後者は、逆にスローフードの歴史がある、そのため、食事の内容に奥行きがある、としています。

ファストフードのように食の工業的な動きは大量消費社会にマッチしていて、それがあっという間に世界に広がりました。その動きは、イギリス・アメリカが世界の中心として活躍していた時期と重なります。そして、それに翳りが見えるのと同時に、欧州の料理、アジア系の健康にも留意した料理が世界に認められてきています。特に日本料理の評価の高さは外国でこそおおきい、と著者は示しています。言われてみれば、メタボなどを気にしだす現代より遥か何千年も前に、医食同源を織り込んだ料理を開発した中国人は偉大ですね。そのため、著者は、「リ・オリエント」、再び文化の中心がアジアへ向かう、と考察しています。

昨日も南インド料理をインド人と楽しみましたが、単純に料理を通じた仲間うちの「お国自慢」を楽しむのもいいし、食から世の中の趨勢を考えるのも趣深いと思いました。

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