原口ビジョンⅡ(3)~「ICT維新ビジョン2.0」推進と「光の道」100%の実現に向けて
原口ビジョンⅡについて、第1回では全体ビジョン、第2回では具体的施策の位置づけ(案)について整理をしました。今回は、5月6日に公表された「原口ビジョンⅡ(詳細版) 」について自分なりに整理してみたいと思います。
原口ビジョンⅡで柱となるのが、「ICT維新ビジョン2.0」で達成目標として掲げているのは以下の3つです。
ICT関連投資額の大幅増加を目指し、倍増させることにより、2020年以降、毎年3%の持続的成長が実現可能としています。また、ICT利活用の促進などにより、2020年には、愛大で90年比12.3%のICTによるCO2排出量削減効果が期待されるとしています。
「ICT維新ビジョン2.0」の骨格は以下の図のとおりです。ロードマップとして、2015年、2020年に向けた目標設定を掲げています。目標設定の項目の中心となっているのが、「日本×ICT」戦略による3%成長の実現となります。
主な目標設定について少し解説していきたいと思います。
■ 「光の道100%の実現
● 2015年頃を目途に、すべての世帯(4,900万世帯)でブロードバンドサービスの利用を実現
- 「光の道」の整備(アクセス網整備の方法)、国民の「光の道」へのアクセス権の保障(ユニバーサルサービスの見直し)、ICT利活用促進による「豊かな社会」の実現(ICT利活用促進一括法案)について5月中旬までを目途に基本的方向性を明確化し、“「光の道」関連3法案”を早急に検討
- 2010年度より、「光の道」整備促進に向け、地方公共団体における汎用SaaSである「ブロードバンド・オープンモデル」等の利活用を含む政
策支援を展開
「光の道」構想は、グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォースの「過去の競争政策のレビュー部会」で中心に議論されています。4月27日の第10回の会合では、「光の道」の論点整理(案)が公開されています。
「光の道」構想で焦点となるのは、
- NTTの再々編を含むアクセス網整備の方法
- ユニバーサルサービスの見直し
- 規制の見直しを含む、ICT利活用を促進する法案の整備
の3点です。
「 「光の道」実現に向けNTTと競合が対立」の記事にもあるように、「光アクセスは1400円で提供可能、NTTは構造分離すべき」と主張するソフトバンクの孫社長と、「普及にはサービスの充実と使いやすい端末が重要」と主張するNTT三浦社長と、議論は平行線をたどっています。5月中旬に一定の方向性が示される予定となっており、NTT経営形態を含めてどのような方針が示されるのか、動向が注目されます。
「光の道」構想については、様々な議論などがなされています。
慶應義塾大学SFC研究所は、4月7日に「国家ブロードバンド戦略-"光の道"への道」のシンポジウムを開催しました。私も出席してきました。ソフトバンク社長室長の嶋聡氏は、インフラの整備主体については、政府と民間が共同で出資する公共会社が担当すべきと主張しています。嶋氏の主張に対して、パネリストや参加者から賛否両論の活発な議論が交わされました(関連記事)。
ツイッターでもハッシュタグ「 #hikari_road 」にて活発な議論がなされています。
また、ソフトバンクの孫社長は、一般社団法人ブロードバンド推進協議会が、4月23日に開催した「三木谷浩史・孫正義が語る『国民の、ITによる、日本復活』~ブロードバンドアクセス100%がもたらす国民生活の変貌とポテンシャル~」というシンポジウムにて、「光の道」に関する考え方について発言をされています(関連記事)。
そして、有識者の方をはじめとして、ブログなどで様々な意見を発信しています。ツイッターなどで話題になっている代表的なものをご紹介しましょう。
町田徹 「ニュースの深層」
- 孫社長が仕掛ける「NTTの構造分離」への疑問 (2010.4.27)
池田信夫 「サイバーリバタリアン」
- 必要なのは「オール光化」ではなく「オールIP化」だ (2010.4.28)
佐々木俊尚氏 「ジャーナリストの視点」
- ソフトバンクの「光の道」論に全面反論する(上) (2010.4.29)
- ソフトバンクの「光の道」論に全面反論する(下) (2010.4.29)
クロサカタツヤ氏 「クロサカタツヤの情報通信インサイト」
- 悲しみのweb (2010.5.4)
など、有識者の方からは、ソフトバンク側の主張に対しての反対意見を多く目にします。
これからの流れを受け、5月13日には、「光の道」構想については、以下のとおり、ソフトバンク孫正義社長とITジャーナリスト佐々木俊尚氏の対談が予定されています。本対談の経緯は、佐々木俊尚氏が「ソフトバンクの「光の道」論に全面反論する(上)」というブログを投稿され、ソフトバンクの孫社長から議論の提案があたっためです。孫社長からは、コストに対する根拠資料は、具体的な構想などについても発表することを明らかにしており、対談の内容が注目されています。
開催概要は以下のとおりです。
【開催概要】
・開催場所:Ustreamスタジオ汐留
・開催日:5月13日 (木)
・開催時間:20時から討論が終了するまで
・主催/撮影:株式会社ソラノート(協力:JUNS株式会社)
・Ustream 配信:TVバンク株式会社
【討論概要】
・出演者:ソフトバンク 孫正義社長、ITジャーナリスト 佐々木俊尚氏
・ タイムスケジュール
- 孫正義氏によるプレゼン:約15分
- 佐々木俊尚氏によるプレゼン約15分
- 孫正義氏、佐々木俊尚氏による討論:時間無制限
そして、翌日の14日には、「光の道」構想に関する何らかの指針が示されることになります。読売新聞(2010.5.9)の記事「NTT持ち株会社再編も、光回線の競争促す」によると、
グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォースの作業部会にて、「光の道」構想に関する基本方針を5月14日にも公表する予定で、持ち株会社を含めたNTTグループ全体の組織見直しにも言及し、NTT東西の光回線事業については「分社化」案や「機能分離」案を盛り込むとのことです。さらに、新たにNTTも参加する新たな検討組織を設けて、年末までにNTTの組織再編案をとりまとめ、来年の通常国会でNTT法の改正を目指す方向と見られるようです。
「光の道」の構想は光ブロードバンド100%達成だけなく、通信業界の在り方全体論まで巻き込んだ重要な検討となります。年末までにどのような方針が示されるのか、注目されるところです。
関連サイト
- 原口ビジョンⅡ(1)~全体ビジョン (2010.5.6)
- 原口ビジョンⅡ(2)~具体的施策の位置づけ(案)について (2010.5.7)
- 原口ビジョンⅡ(3)~「ICT維新ビジョン2.0」推進と「光の道」100%の実現に向けて (2010.5.10)
- 原口ビジョンⅡ(4)~ICTによる協働型教育改革の実現とフューチャースクールの全国展開 (2010.5.11)