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男性社員1年育休を取る:第一声を聞いたとき経営者として感じた不安は7つ

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「妻が第二子を妊娠したので、今度は自分が1年育休を取ろうと思います」
あれは、2009年の3月頃だったか?
アークコミュニケーションズの翻訳事業部にいる4人のプロジェクトマネージャーのうちのAさんからそう切り出された。

多様な社員を受け入れ、個々に自立していただき、チームとしての生産性もあげる
これが私がアークコミュニケーションズにおいて実現したいことだ
。社員40人ほどの小さな会社ながら、ワーママもいれば外国国籍の方もいればアスリートもいる。にもかかわらず、当時は、「女性社員ではなく男性社員がうちの育休取得第一号なんだ!」とびっくりした。自分が思っているより、自分自身に男女役割に関する固定概念が強いのがわかって、正直ちょっとショック。女性が社長であるアークコミュニケーションズに勤めている男性社員のほうが、よっぽどリベラルということだ。

つまり、私にとって、ワーパパが育休を長期にとることは正直、青天の霹靂だったのだ。
そこで、今後小さい組織で多様な社員を受け入れていく経営者の方に参考になるよう、出来るだけ本音を書いてみたい。もう5年以上前の話だから、少々美化された記憶もあるとは思うが。

育休を取りたいと言った当時32才のAさんに対してまず思ったのは、「凄いな、私には絶対出来ないや」だった。
ちょうど1年前に出産した私は産休明けで復帰した。「経営者だと大変だね?育休もとれないなんて」と勘違いしてくださった方々もいたのだが、24時間子供とべったりの生活をそろそろ卒業したかったのである。子供はもちろんかわいいが、このままでは続かないと正直思った。私にとって適度な距離感は、働いている間には子供のことをいとおしく思い、子供といるときには、明日また働くぞ!である。

育児休暇は社員の権利であることはもちろんだし(会社は拒むことは出来ませんので経営者の皆さま、念のため)、子育てに男性が積極的に参加するのは大賛成だ。
だから、彼の決断は称賛以外の何物でもない。

しかし、私には経営者として様々な不安があった。

1. 1年も休んで、Aさんは経済的に大丈夫なのか?
2. 望んで24時間子育てに向き合ったあげく・・・・精神的に参っちゃわないか?
3. 彼の代替要員はどうしよう?契約社員を雇う?派遣サービスを使う?
4. 頭数合わせたってパフォーマンスは下がるぞ。どうするんだ?
5. 他の社員はどう思うんだろう?負荷がかかるのは間違いない。どう受け入れてもらおうか。
6. Aさんの育休明けのキャリアパスは大丈夫なんだろうか?1年のブランクがどうなるのか見当がつかない。
7. そもそも、うちの会社が1年後どうなっているかわからないぞ?今年はあまり業績がよろしくない。まさか、彼が戻ってきた時にさらに業績が悪くて、仕事がない・・・なんてことにはならないよな?

1や2は彼個人の価値観にも結び付く話で、全く余計なお世話ではあるのだが、彼の考えが時代を先取りしているが故に、1年後戻ってきた時に「やっぱり育休とらなきゃよかったです」と彼が後悔することが死ぬほど嫌だったのだ。
だから、1年育休を取ることを前提に、リスクがこれだけあるぞと彼に認識してもらい、慎重に検討してもらいたかった。

と、ここまで振り返って、経営者の皆さんへの最初のメッセージは、リベラルと思っていた私でもびっくりしてしまったのだから、「男性社員にいきなり育休を切り出されて、例えうろたえてしまっても、そんなものだ」だろうか。そしてたぶん私と同じような不安がだだだ~っと頭を駆け巡ると思うが、だからと言って慌てて何か具体的な話をしようとしたりせずに、とりあえず男性社員の希望をよく聞くことだ。

せっかく素晴らしい試みを社員がするのだから、経営者として、出来る限りの応援をしたいではないか!だから不安を(こっそり)書きだして、何が気になっているのか、何を解決しなければいけなのかをリストアップすることをお勧めする。そうしたら、解は見つかったようなものだ。(いわゆる通常の問題解決と同じである)

それから半年かけて、上記の7つに対してAさんや他のスタッフとひとつひとつ確認しながら、会社としてどう対応するのか考えていった。


続く
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