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男性社員1年育休を取る2:本人も会社も経済的に大丈夫なの?

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経営者って、自分の会社のビジネスのことは知っていても、意外と労務の知識は少ないものだ。
翻訳事業部の男性社員が1年育休を取るという話を色々な経営者の方々にした時、いくつか面白い反応があった。

「えっ、男の人が産休とってどうするの?」
=>産休と育休は違います。男の人は赤ちゃんは産まないので、産休はとれません。

「えっ、男の人にも育休ってあるの?」
=>はい、あります。育休は男女平等の権利です

「へぇ~、儲かっているねぇ。働かない人に給与も払えるんだ。うちは無理」
=>会社は社員が育児休暇を取得中に、給与を保証する義務はありません。
   社会保険料も育児休暇中は免除されます。
   雇用保険から育児休業給付金が出るので本人は無収入ではありません。

育休を取ろうと思って、色々調べている社員の方からすると、一部の経営者の「無知さ」ぶりに腰を抜かすだろうが、子育てから遠い人々の認識は「そんなもの」なのである。
だから、社長のファーストリアクションがとてもがっかりなものだったとしても、「正しい知識がないせいで、こんな反応をするのかも?」と思って、あきらめないでほしい。

特に小さい会社を経営していると、「コスト」に対して過剰反応をすることがある(私もそういう時があります、すみません。)「育休はコストがかかる!」と無条件反射のように思われた経営者の方もいたのだが、「代替要員をジュニアな人にすれば、むしろコストは下がりますよ」と言うと、「な~んだ。育休も悪くないなぁ」なんて反応になったりするのである。ちなみに弊社でかかった費用は、育児休暇の給付金申請に関わる事務手数料として、アウトソース先から請求された3,000円×9回の27,000円のみある。

給与の考え方については私は明快なポリシーがある。

企業によっては住宅手当や扶養手当が出るところもあるだろう。
しかし、ライフスタイルによって給与が変わるのはおかしい、と新入社員の頃から思っていた。(どちらの手当てももらえなかった僻みでもある)

アークコミュニケーションズにはワーママ・ワーパパもいれば独身者もいる。日本国籍でない人もいれば、アスリートもいる。
これらの人々の報酬を、成果と労働時間をベースに同じように扱うことが、私はフェアーだと思っている。

その観点から言うと、働いていないにもかかわらず、育休中に何かしら払うというのは、私のポリシーに反するのだ。(子育てを含めた社会活動を応援する考えの元、給与を支給する会社を否定するものではない。あくまで私のこだわりだ)

自分自身が産休をとっただけで育休を取っていなかったので、育児休業給付金のことはあまりよく知らなかった。
人事・労務担当に調べてもらって、「雇用保険から月収の50%保証されます」と聞いた時は少しほっとした。
しかし、賞与については対象外だ。インセンティブや決算賞与も対象外だ。長期に休むと、今までもらっていた収入が激減することには間違いない。

Aさんに「会社としては悪いけど給与は払えないよ。それでも1年育休とって大丈夫?」と聞いたら、「そんなのわかっています。予定日が11月なので妻の産休と交代する形で、来年の1月から僕が育休をとります。子供が1つになるまでの10か月間を育児休業給付金と妻の給与で何とか乗り切ります」と応えた。
あっぱれな覚悟と私よりはるかに高い知識に感嘆した。


さて、この話には実は、後日談がある。

復帰直前の秋ごろ、Aさんから、「すみません、保育園、入れませんでした!」と電話がかかってきたのだ。

Aさんが復帰すると思って楽しみにしていた翻訳事業部のメンバーもがっかりしたが、Aさんの落胆はさらに大きかった。
「毎月毎月、状況見ながらいつ復帰するか決めて良いですか?」
3か月後には
「今月もダメでした。4月だと入園しやすくなると思うので、4月まで伸ばして下さい。それでも入れる保証はないんですよね・・・そんなこと想像したくありません!」
「4月まで休むとなると・・・育休が16か月。そんなに育休ってとれるんでしたっけ?お金も厳しいです・・・・・」

育児介護休業法の規定によると、保育園に入れなかった場合、通常1年間(こどもが一歳になる前日)の育児休業が、子どもが1歳6ヶ月になるまで延長できる
1年間の支給が標準の育児休業給付金も、特殊事情が勘案されたので、16か月出たのにはほっとした。

そして、4月に無事保育園に入れることになったと聞いて、本当に、本当に、ほっとした。(結局10か月のはずが16か月とったのだ)

保育園待機児童問題は、あれから5年たった今、状況がもっとひどくなっているのには困ったものだ。

ちなみに2014年の4月から育児休業給付金の月収カバー率が67%まで上がっている。男性社員の育休取得率が低いことに対する措置だそうなので、上手に活用されたし。

日経デュアル
Q.育児休業中は、収入はゼロになる?
Q.給付率がUPした育児休業給付金 お得な取り方は?

育児休暇取得そのものにおいて「会社にはコストがかからない」ということを経営者の方も、育休を取得する方も、是非知っておいてくださいませ。
まずは、男性社員から育休取ると聞いて不安に思った7つのうちの、第一関門をなんとかクリア。

続く(ただし、不定期連載)。

<関連エントリー>

男性社員1年育休を取る:第一声を聞いたとき経営者として感じた不安は7つ

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