IT技術についてのトレンドや、ベンダーの戦略についての考察などを書いていきます。

ソフトバンクの100億円キャンペーン、見据えるのはAmazon

»

ソフトバンクが、QRコード決済のPayPayを一気に普及させようとする驚きのキャンペーンを発表しました。

PayPay利用で20%還元する「100億円あげちゃうキャンペーン」発表--40回に1回は全額還元に

世界中で様々な会社が少額決済サービスのデファクトを狙っていますが、「実弾」をばらまくという、ある意味分かり易すぎるキャンペーンは他に例が無いでしょう。LINE Payの手数料0%が霞んでしまいますね。

money_ic_card_cashless.png世界ではQRコード式が主流

PayPayは、今や世界では主流になりつつある、QRコードを使った決済です。日本ではFelicaを使ったNFCによる決済が先行しており、ほとんどのコンビニなどで使えることから、一手間余計にかかるQRコード決済は普及しづらいのでは無いかと言われており、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんもそのようなことを書かれています。

「100億あげちゃう」PayPayがモバイル決済市場で苦戦するワケ

ただ、最初の記事の中でPayPayの中山CEOが「日本は取引の80%が現金」と言っているように、(80%というのは高すぎる気もしますが、それは別として)キャッシュレス決済の歴史が長いわりに、海外に比べて普及が進んでいない(というか、海外の普及速度が日本を追い抜いた)ことも事実です。それに、Felicaは海外展開に失敗しており、ほぼ日本でしか通用しないガラパゴス規格になってしまっています。今後海外への展開を考えると、Felicaよりも可能性が高いと考えられます。

Felica(や他の無線型決済方式)がなかなか普及しないのは、決済端末が高価であることも関係しているのではないでしょうか。中国やインドなどで急速に普及しているQRコードを使った決済は、店舗側の設備投資が不要か低価格なのが特徴(いくつか方式はあるようですが、PayPayではレジ横にQRコードを掲示しておくだけで良い方式が用意されているようです)です。

ソフトバンクとヤフーのPayPay、ついにサービス概要が語られる。QRコード決済の大本命となるか:モバイル決済最前線

つまり、店舗側の参入障壁は限りなく低く抑えることができる方式であることから、20%還元で顧客が増えれば、対応店舗を一気に増やすことができるわけです。現在Felicaが浸透していない(恐らくFelica対応POSなんか導入する気も無かったような)町の八百屋さんみたいな店舗が登録してくれれば、キャッシュレスの普及が急速に進むということでしょう。

PayPayのキャンペーンはAmazon対抗?

PayPayが「現金バラマキ」とも言えるキャンペーンに走ったのは、LINEやAmazonが先行する中で急速な追い上げが必要だったからでしょう。

Amazon Pay登場で主要プレイヤーが出揃ったQRコード決済の将来を占う:モバイル決済最前線

「本命」と言われるLINEやAmazonの強みは、なんと言っても最初からユーザーを囲い込んでいることです。特にAmazonでアカウントを持っているということは、クレジットカードも登録済みなわけですから、利用開始のハードルは非常に低いと考えられます。PayPayとしては、なんとしてもこのギャップを短期間で埋めなければなりません。そのための100億円ということなのでしょう。

最終目標は顧客の購買行動データ

Amazonは、膨大な顧客行動データを収集し、それをマーケティングに活用しています。Amazonアカウントは今や様々なサイトのログインにも使われており、様々なデバイスに搭載されたAlexaなどからもデータが収集されます。これらのデータを集め、解析し、AIに学習させることで、顧客の購買行動を把握し、適切なタイミングでキャンペーンを行ったり、リコメンドをしたりすることができるのです。

Amazonは、ありとあらゆるデータを収集しようとしています。Amazonが今年開店させたレジ無しコンビニのAmazon Goは、「生身の顧客」の行動データを集めることが目的、という見方をする人は多いのです。

アマゾン・ゴーの 「表の本質」 と 「裏の本質」 。レジ無し店舗は何を意味するのか

ソフトバンクも、同じ事をしたいのではないでしょうか。先月、こんな記事を書いたのですが、

Arm Pelion が IoT 企業の DX を後押しする

ソフトバンクの子会社となったArmが、CDPプラットフォームのトレジャーデータを買収しました。CDPとはデジタルマーケティングのためのツールで、ネット上/ネット外での顧客行動を繋ぎ合わせて集約し、顧客の購買行動を把握しようとするものです。Armチップを採用したIoTデバイスからのデータをCDPこれに流し込むことで、IoTと消費者行動データを一元的に解析できるようになります。トレジャーデータの責任者は、これによってArmの顧客が「デジタル破壊者に勝つ」ためのソリューションを利用できる、とコメントしています。名指しこそしていませんが、AmazonやGAFAのことを指していると思われます。そしてこの仕組みに、PayPayのデータを統合させるとすれば、いろいろ面白いことができそうです。

アメリカ外し?

また、今回の発表で面白いのは、基本的な技術(Paytm)はインドの会社のものを使うということです。Armはイギリス、トレジャーデータは登記はアメリカですが創業者は日本人、ということで、基礎技術から注意深くアメリカを外しているような気もします。考えすぎでしょうか? (笑)

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する