【75.6%】「やったことがないから、試してみる」人と、「やったことがないから、決められない」人
今日はオープンキャンパス。7月からはじまったイベントも、9月に入って最終回を迎えました。8月にくらべれば幾分涼しくなったとはいえ、まだ外は暑く、生温かい空気がキャンパスを包んでいます。
会場で、長野県からはるばるやってきた、あるお父さんお母さんと出会いました。息子さんは工業高校に進学したけど、大学は文系を希望しているとのこと。両親は、自分がやりたいことじゃないと続かないからと、息子さんの意思を尊重したいと話してくださいました。
「本当は果樹園を継いで欲しいんやね。でも、息子は絶対にいイヤだと。でも反対する気持ちもわかる。田舎で隣家が100メートル先みたいなとこやから、街に出て行きたいんやろう。今の時代、どうするにせよ、大学くらい出ておかんと。だから、金はないけど、行かせてやりたい」
親が子を思う気持ちというのは、どうしてこんなにせつないのでしょうか。お父さん、お母さんの短い一言一言が心に響いて、思わずこみ上げるものがありました。
「息子は、これといってやりたいことがないらしい。パソコンとか携帯とかが好きで、毎日ゲームばっかりやっとる。わたしらにはまったくわかりません」とお父さんは笑います。「ここは田舎で仕事がないんじゃから、都会に出るのは仕方ないやろうね、でも、何かできることを身につけんと、就職厳しい時代やから。なんでもいい」
わたしは頷きながら、いろんなことを思い出していました。高校の進学先選びといえば、「まずは自分が学びたいことで進路を決めましょう」ってのが指導の正論。リクルート進学センサスによれば、志望校検討時の重視項目の第一位は「学びたい学部・学科・コースがあること」で、【75.6%】とダントツ(進学センサス2011より)。それはわかる。でも、何が学びたいから、何がやりたいからこの大学って、決められる高校生って、実際どれくらいいるんでしょうか。
そして数年後、彼らは大学で、「やりたいことで会社を、仕事を探しましょう」なんて言われるわけで。やっぱりここでも、「社会経験がない学生に、何がやりたいのか、どんな仕事が向いているかなんて、わかるわけがない」というのがホントのところだと思うわけです。
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じゃ、わからないから仕方ないか、といえば、それじゃ何もできません。結局、どこかで踏ん切りつけて、「まずはやってみよう」と前に進める人がうまくいく、ということではないかと。「やったことないから、試してみよう」と考えるのか、「やったことないから、決められない」と留まるのか。そうした選択の繰り返しが人生だと思うのです。進学先を決めるのも、就職先を決めるのも、そうした選択のひとつでしかないと思うのです。ちょっと大袈裟ですけどね。
「挑戦する」と口にするのは簡単ですが、やるのは楽じゃない。そうですよ、その通り。でも、楽な方へ、簡単な方へ「避ける」「逃げる」選択を繰り返す人と、そうでない人の差は、気がついたら、結構大きなものになっているような気がするわけです。
お父さん、お母さん、今日は遠くまでお出かけいただき、本当にありがとうございました。ここまで足を運んでいただいたことで、きっと何かが変わると思うんです。その一歩を踏み出せるなら、息子さん、きっと上手くいきますよ。今の気持ちを、勢いを大切にして、いろんな大学をご覧になることをオススメします。そしてもし、このキャンパスでまたお会いできることがあれば、心から歓迎したいと思います。